金曜日

三角形を貼る

先生の話

今週は, 硬い面と柔らかい面の 2 つ面が主題でした. 微分幾何学が対象とする面は,基本的には硬い面の方です。しかしそれにつ いては少しコメントがいるでしょ5.微分幾何学で対象とする曲面 では第 1 基本形式が基本となります。あるいはそれをはるかに抽象化したリーマンの立場にしても,“無限小の長さ”を測る計量 d s 2 = d s 2 = ds^(2)=d s^{2}=ds2= g i j d x i d x j g i j d x i d x j sumg_(ij)dx^(i)dx^(j)\sum g_{i j} d x^{i} d x^{j}gijdxidxj が最初に設定され, そこからスタートします. この計量を通して記述されるものが,非ユークリッド幾何学の曲面も含む よらな微分幾何学の主要な対象となるのです。したがってたとえば 曲面が鋼鉄の薄い板でできているならばそれをたわめても長さは変 わりませんから,微分幾何学の対象としては同じ曲面と見てもよい ことになります。もちろん第 2 基本形式が関係するような量では, もっと曲面の形そのものがかかわってきますが,一般的な立場から みれば,それは少し特殊なテーマといらことになります。その意味 では微分幾何学で取り扱う曲面は, 陶器や磁器でつくった曲面ほど は硬くないといえます。
しかしそれでも, 粘土で曲面の形をつくるように曲面が自由に変形でさるよらにすると,長さは伸び縮みして変わりますから,これ らの曲面から共通な微分幾何学的な量を取り出すことは基本的には できなくなってしまいます。したがってこのよらな変形を許す曲面 の中から,何か共通の性質を見出そうと曲面をじっと見つめる視点 は微分幾何学的なものとは違ってきます. 法截面も切り口の曲線も どんどん変わっていくのです. この微分幾何学と異なる見方で見る 視点を,わかりやすく硬い面と対照する形で柔らかな面といったの です.
もら少し数学的にいえば, 硬い面を見る視点は微分的視点なので す. 曲面上の各点のまわりの形の微小な変化を追求し,そこから各点での曲がり方を示す微分的量を求めていくと, 各点で得られたそ の量は曲面全体で見れば,曲面上の 1 つの関数を生むでしょう.そ
の関数のもつ解析的な性質が,曲面の形を表わす数学の定式化であ ると考之るのです。曲面は解析の世界の中でその形を見出すことに なります。ここには抽象化へ向けての 1 つの足がかりがあります. そしてリーマンが曲面概念を高次元へと向けて拡張しよらとした 1 つの接点もまたここにあったと考えてよいでしょら。
それに対して柔らかな面を見る視点は連続的視点であるといって よいのです. 実際, 子供が粘土をこねて 1 つの形をつくっていくと き,私たちの眼は粘土が連続的に形を変えながら示していく全体像 を追っています。しかしこの変化する全体像の中にも,ある共通し た性質はあるのです。たと之ば子供が象を粘土でつくろらとすると き,その手許を見ているお母さんは,粘土のかたまりから鼻が伸ば され,太い4本の足が伸ばされてきても黙っているでしょらが,胴体となるところに大きな穴があけられればとれは違らといらでしょ 5 .
2 つの曲面 S S SSS S S S^(')S^{\prime}S に対して, S S SSS から S S S^(')S^{\prime}S のへの 1 対 1 の連続写像があるとき, S S SSS S S S^(')S^{\prime}S は同相であるといいます. 球面と浮輪とは 同相ではありません,ゴム風船を変形して象のよらな形をつくるこ とはできますが,球面を変形して浮輪をつくることはできないので す.
このような同相な曲面の中から,何かある共通な性質を数学的に 定式化して捉兄よらとする研究の方向は, 現在数学の中でトポロジ 一とよばれている研究分野への方向を指し示すことになります。ト ポロジーで用いる方法は,微分幾何の方法とはまったく異なります。
いま曲面を,伸縮可能なゴム膜でつくった三角形の小片で,重な ることなく貼っていき,曲面全体をお扐ったとします。曲面を連続的に変形していったとき,そ机応じて曲面上に貼られた 1 つ 1 つ の三角形も伸び縮みして形を変えるでしょら。しかし隣接している 三角形どらしの関係は変わりません. 三角形に A , B , C , A , B , C , A,B,C,cdotsA, B, C, \cdotsA,B,C, のよう に符号をつけておけば, A A AAA B B BBB が貼られ,B C C CCC が貼られている といら関係は,伸び縮みでは変わりません。しかしたとえば球面の 場合を考えてみても,赤道に沿って三角形を順に隣接する辺どらし
を(糊しろをつけて)貼り合わせていけば, 1 周し終ったところで最初の三角形の辺とまた貼り合わすことになり女す.ここに貼り合わ せに対して 1 つの関係が生じてきます。(幼稚園で子供たちが 1 列 に手をつないで輪をつくろらとするとき, 最後の子供が最初の子供 と手を結んだとき, 1つの関係が生じ,その関係が輪の形となって 現われるよらなものです.)このよらな関係は赤道だけではなくて,球面のいたるところでおきていますが,この関係は球面の連続的な 変形では変わりません。したがって,この関係をもっとはっきりし た形で取り出すことに成功すれば,それは柔らかい面としての球面 の性質を特性づけるものとなるでしょら。この考方方はトポロジー 的な考え方です.
このよらな視点から曲面を捉えようとした最初の数学者はやはり オイラーでした. 今日はそのオイラーの考えから話をしていくこと にしましょう。

正多面体

合同な正多角形を貼り合わせて得られる多面体を正多面体という。正多面体は 5 種類しかないといらことは古代ギリシャの昔から知ら れていた。それらは正 4 面体, 正 6 面体, 正 8 面体, 正 12 面体,正 20 面体であって, それぞれ正 3 角形, 正 4 角形, 正 3 角形, 正 5 角形, 正 3 角形を貼り合わせてできている. 面と面の交わりとし て得られる線分を稜という. 正多面体の, 頂点と稜と面の個数は次 のよらになっている.
頂点の数 稜の数 面の数
正 4 面体 4 6 4
正 6 面体 8 12 6
正 8 面体 6 12 8
正 12 面体 20 30 12
正 20 面体 12 30 20
頂点の数 稜の数 面の数 正 4 面体 4 6 4 正 6 面体 8 12 6 正 8 面体 6 12 8 正 12 面体 20 30 12 正 20 面体 12 30 20| | 頂点の数 | 稜の数 | 面の数 | | :---: | :---: | :---: | :---: | | 正 4 面体 | 4 | 6 | 4 | | 正 6 面体 | 8 | 12 | 6 | | 正 8 面体 | 6 | 12 | 8 | | 正 12 面体 | 20 | 30 | 12 | | 正 20 面体 | 12 | 30 | 20 |
これを眺めていただけではすぐに気がつく関係ではないかもしれ ないが,ここに
正 4 面体
正 12 面体
正 6 面体
正 8 面体
正 20 面体
(1) ( 頂点の数 ) ( 稜の数 ) + ( 面の数 ) = 2 (1) (  頂点の数  ) (  稜の数  ) + (  面の数  ) = 2 {:(1)(" 頂点の数 ")-(" 稜の数 ")+(" 面の数 ")=2:}\begin{equation*} (\text { 頂点の数 })-(\text { 稜の数 })+(\text { 面の数 })=2 \tag{1} \end{equation*}(1)( 頂点の数 )( 稜の数 )+( 面の数 )=2
という関係が成り立っている。たとえば正 6 面体と正 12 面体の場合に確かめてみると
正 6 面体 : 8 12 + 6 = 2 8 12 + 6 = 2 8-12+6=28-12+6=2812+6=2
正 12 面体: 20 30 + 12 = 2 20 30 + 12 = 2 20-30+12=220-30+12=22030+12=2
(1)が成り立つことは,このように上の表を見ながら5つの正多面体について確かめてみれば,それでわかったことになるのだが,
(1)は実は正多面体だけに限らず,もっと一般の場合にも成り立っ ている特徴的な関係である。これからそのようなところへ話を進め るために,まずもっとも簡単な正 6 面体と正 8 面体の場合に(1)が なぜ成り立つかの理由を,図を使って明らかにしておこう.問題は なぜ右辺に 2 が現われるかといらことにある。
説明のため p p ppp を頂点の数, q q qqq を稜の数, r r rrr を面の数とする。(1は このとき
(2) p q + r = 2 (2) p q + r = 2 {:(2)p-q+r=2:}\begin{equation*} p-q+r=2 \tag{2} \end{equation*}(2)pq+r=2
と表わされる.
図(I)は,左に正 6 面体,右に正 8 面体を描いている。これらを 上から見た一種の展開図が (II )となっている。ただし 1 つの面は底面となっていて,それはこの図では外周の裏側に隠れており,そこ にもら1つの面があると考えておく.(正 8 面体の方はいくつかの
稜が曲線で書かれている.)だから正 6 面体の面の数 r = 6 r = 6 r=6r=6r=6 は,
(II)で区画された部分の数を数えるときには 1 つ減って, r 1 = 5 r 1 = 5 r-1=5r-1=5r1=5 となっている.正 8 面体の方は, r = 8 r = 8 r=8r=8r=8 が,(II )の区画数でいうと r r rrr
( I )
sqrtdarr\sqrt{\downarrow}
( II )
( III)
(IV)
b b sqrtb\sqrt{b}b
(V)
\Downarrow
(VI)
(VII)

1 = 7 1 = 7 -1=7-1=71=7 になっている. 図 (III)では, カゲをつけた部分に水を入れ て, 次に順次, 隣接する区画の境界線((I )では稜に対応している) を取り払って,この水がすべての区画に(裏側にある区画にも)行き 渡るよらにする様子を矢印を用いて描いている。このとき取り払っ た境界線の数は
r 1 r 1 r-1r-1r1
である。図(V )ではこのよらにして得られた, 残った境界線だけか らなるグラフを描いている。このグラフを形成する線分の数は
(3) q ( r 1 ) (3) q ( r 1 ) {:(3)q-(r-1):}\begin{equation*} q-(r-1) \tag{3} \end{equation*}(3)q(r1)
である。また図を見れば明らかだし,また説明することも簡単だが, このグラフは連結したグラフになっている. このグラフの頂点(線分の端点)の個数は p p ppp である.
このグラフで,枝の先の方から 1 つずつ線分を取り除いていく.
このとき枝先の点も同時に取り除く. その様子を図 ( V ), ( V )で書 いてある。このよらにしていくと p p ppp 個の頂点のらち p 1 p 1 p-1p-1p1 個が取り 除かれて, 図(VII)で示してあるように, 最後に 1 点だけが残る.
線分を取り除くと同時に, 点を 1 つずつ取り除いたのだから,こ のことは(3)の値が p 1 p 1 p-1p-1p1 に等しいことを示している. すなわち
q ( r 1 ) = p 1 q ( r 1 ) = p 1 q-(r-1)=p-1q-(r-1)=p-1q(r1)=p1
である.この式を整理すると
p q + r = 2 p q + r = 2 p-q+r=2p-q+r=2pq+r=2
となり,(2)が,したがってまた(1)が正 6 面体と正 8 面体の場合に 示されたことになる。同様の考えで,すべての正多面体について (1)が確かめられる.

オイラーの公式

ところがいまの証明をよくみると,ここで用いた事実は,頂点と 稜と面とが互いに“貼り合わされている” 相互関係だけであって, したがって次の図で示した多面体に対しても,(1)の関係はやはり 成り立つのである。
(a)
(b)
(c)
この図の(a),(b)はとくに問題はないだろらが,(c)には少し説明がいるかもしれない。(c)は球面を,多角形でおおった図を書い ている。隣接した多角形は 1 辺だけを共有している。サッカーボー ルの表面に皮が貼られている様子を想像されるとよいかもしれない。 このとき多角形は球面上に貼られているので,いわば “曲多角形” となっている、しかし, このような場合にも関係式(1)が成り立つ ことは,上に述べたように,(1)を成り立たせるものは形そのもの ではなく, 頂点と棱(いまの場合は多角形の辺)と面との相互関係だ からである.
この(c)の方を中心にしてみれば,正多面体にしても図の(a), (b)にしても,適当に風船の上らに思ってふくらましていけば, (c)の形になっている,形を無視すれば,多面体の辺,稜,面の相互関係を示す 1 つの標準的な表示は(c)によって与えられていると 考之てよい。
そのよらな観点に立てば,関係式(1)を次のよらにいいかえてお く万が,もっと一般的なことになる。
球面を多角形で重なり合わないように分割する.隣接する多角形は 1 つの辺を共有しているとする。この分割に現われた頂点と辺と(多角形の)面の個数をそれぞれ p , q , r p , q , r p,q,rp, q, rp,q,r とすると
p q + r = 2 p q + r = 2 p-q+r=2p-q+r=2pq+r=2
が成り立つ.
私たちはこれをオイラーの公式とよぶことにしよう,多面体のと きは q q qqq を稜の数といったが,それをここでは辺の数といいかえてお
いた。
隣接する多角形は 1 つの辺を共有しているといら条件をおいたが, それは多面体では 2 の面は 1 つ稜を共有しているということに 対応している条件である。この条件をおくことが絶対に必要という わけではないが,あとの三角形の分割との関連もあって,この条件 をおいたのである.

球面の三角形分割

球面を,隣接する多角形は 1 辺だけを共有するよらにして多角形 に分割すると,いつでもオイラーの公式は成り立つが,実際はその ことを示すためには, 球面を三角形で分割した場合だけを考えれば 十分なのである.
なぜなら図のよらに, 多角形 ABCDEF ABCDEF ABCDEF\mathrm{ABCDEF}ABCDEF を点線で示したよらに三角形に分割してみる。このときたとえば点線 ACを最初に引いてみ ると, これによって辺の個数が 1 つ増えるが, 同時に多角形 ABCDEF ABCDEF ABCDEF\mathrm{ABCDEF}ABCDEF が 2 つに分解されて, 多角形の個数も 1 つ増える. すな わちこの操作で p q + r p q + r p-q+rp-q+rpq+r の個数は変わらない. したがって多角形を すべてこのよらに三角形に分割してから, p q + r = 2 p q + r = 2 p-q+r=2p-q+r=2pq+r=2 を示せば,実は最初の多角形の分割に対しても, 同じ関係式が成り立つことを 示したことになる.ここでオイラーの公式で,+(プラス)と-(マ イナス)が交互に現われるといら定式化が巧みに働いていることを 注意されるとよいだろら。
このようにして,私たちはオイラーの公式の彼方にしだいに球面
の三角形分割という像が浮かび上がってくるのを察知することがで きるのである. 球面の三角形分割とは, 球面を三角形のタイル(と いっても“曲三角形”であり,三角形のゴム膜といった方がよいか もしれない)で重なり合わないよらにおおらことで,ここで条件
(A) 2 三三角形 , , /_\,/_\^(')\triangle, \triangle^{\prime}, とったとき = = /_\nn/_\^(')=O/quad\triangle \cap \triangle^{\prime}=\varnothing \quad= ( は空集合を表わす)
か,
/_\nn/_\^(')\triangle \cap \triangle^{\prime} は 1 頂点または 1 辺を共有する
をみたしているものである。したがって図(d)のような三角形の貼 り万は分割とは考えない。
(a)
(b)
(c)
(d) 分割と考えない
オイラーの公式は,結局球面をどのように三角形分割しても,つ ねに p q + r = 2 p q + r = 2 p-q+r=2p-q+r=2pq+r=2 といら関係が成り立つことを示している。してみ ると,この公式はそれぞれの三角形分割の性質というより, 球面の もつ1つの性質が三角形分割を通して浮かび上がってきたものであ るとみることができるものである.

ドーナツ面に対するオイラーの公式

それでは,球面ではなくてドーナッ面を三角形分割したときには, オイラーの公式はどんな形をとるのだろらか。ドーナッ面とは,実際ドーナツをつくるときにそらするよらに,球から穴を 1 つ抜きと って得られる図形の表面のことである.
いま球面(地球表面を思い浮かべてほしい)を三角形分割し,北極 の近くをお打ら三角形を /_\\triangle ,南極の近くをおおら三角形を /_\^(')\triangle^{\prime} とし, = = /_\nn/_\^(')=O/\triangle \cap \triangle^{\prime}=\varnothing= とる. 球面から /_\\triangle /_\^(')\triangle^{\prime} の内部を抜いて, /_\\triangle から
メ'へと1つトンネルを球に貫通させる。そうしてできた穴は, 底面が /_\^(')\triangle^{\prime}, 上面が /_\\triangle の三角形にくり抜いたトンネル状になってい る。トンネル内部を形づくる三角柱の表面をさらに三角形に分割し ても,しなくても,オイラーの公式を確かめるときには同じ結果に なる。だから,球面の三角形分割とこの三角柱の表面とでドーナッ 面の “三角形分割” ができたと考えて, このときの頂点の数 p p p^(')p^{\prime}p, 辺 の数 q q q^(')q^{\prime}q, 面の数 r r r^(')r^{\prime}r を数えてみよう.
そのため, 最初の球面の三角形分割に現われた頂点の数を p p ppp, 辺 の数を q q qqq, 面の数を r r rrr とすると,明らかに
p = p q = q + 3 (3は三角柱の側面の稜の数 ) r = ( r 2 ) + 3 ( 3 は三角柱の側面の面の数 ) p = p q = q + 3  (3は三角柱の側面の稜の数  ) r = ( r 2 ) + 3 ( 3  は三角柱の側面の面の数  ) {:[p^(')=p,],[q^(')=q+3," (3は三角柱の側面の稜の数 ")],[r^(')=(r-2)+3,(3" は三角柱の側面の面の数 ")]:}\begin{array}{ll} p^{\prime}=p & \\ q^{\prime}=q+3 & \text { (3は三角柱の側面の稜の数 }) \\ r^{\prime}=(r-2)+3 & (3 \text { は三角柱の側面の面の数 }) \end{array}p=pq=q+3 (3は三角柱の側面の稜の数 )r=(r2)+3(3 は三角柱の側面の面の数 )
が成り立つ. p q + r = 2 p q + r = 2 p-q+r=2p-q+r=2pq+r=2 だから,
p q + r = p ( q + 3 ) + ( r 2 ) + 3 = p q + r 2 = 0 p q + r = p ( q + 3 ) + ( r 2 ) + 3 = p q + r 2 = 0 {:[p^(')-q^(')+r^(')=p-(q+3)+(r-2)+3],[=p-q+r-2=0]:}\begin{aligned} p^{\prime}-q^{\prime}+r^{\prime} & =p-(q+3)+(r-2)+3 \\ & =p-q+r-2=0 \end{aligned}pq+r=p(q+3)+(r2)+3=pq+r2=0
となる.
いまの場合,ドーナッ面の特別な三角形分割を用いて計算したが,実はこの結果はドーナッ面の任意の三角形分割に対して成り立つ. すなわち
ドーナッ面の三角形分割に対して, 頂点の数を p p p^(')p^{\prime}p, 辺の数 を q q q^(')q^{\prime}q, 面の数を r r r^(')r^{\prime}r とると
p q + r = 0 p q + r = 0 p^(')-q^(')+r^(')=0p^{\prime}-q^{\prime}+r^{\prime}=0pq+r=0
が成り立つ.
球面のときのオイラーの公式の右辺に現われた 2 は, ドーナツ面 では 0 へと変わったのである!

いくつかの穴のあいた曲面

それでは,球に 2 つ穴をあけて得られる図形の表面一 2 つ穴の 浮輪—の三角形分割に対してはオイラーの公式はどのよらな形を とるのだろらか。このときもドーナッ面と同じよらに考之て,2つ の穴を 2 つの角柱で貫通させることによってつくり,そこで頂点 の数 p p p^('')p^{\prime \prime}p, 辺の数 q q q^('')q^{\prime \prime}q, 面の数 r r r^('')r^{\prime \prime}r を求めてみることにしょう.
そのため帰納的な考えを用いることにし,ドーナッ面(頂点の数 p p p^(')p^{\prime}p, 辺の数 q q q^(')q^{\prime}q, 面の数 r ) r {:r^('))\left.r^{\prime}\right)r) にも 1 つの三角柱の穴をあけたと考之 ることにする。 そうすると前と同様の関係
p = p q = q + 3 r = ( r 2 ) + 3 p = p q = q + 3 r = r 2 + 3 {:[p^('')=p^(')],[q^('')=q^(')+3],[r^('')=(r^(')-2)+3]:}\begin{aligned} p^{\prime \prime} & =p^{\prime} \\ q^{\prime \prime} & =q^{\prime}+3 \\ r^{\prime \prime} & =\left(r^{\prime}-2\right)+3 \end{aligned}p=pq=q+3r=(r2)+3
が成り立つ. したがって p q + r = 0 p q + r = 0 p^(')-q^(')+r^(')=0p^{\prime}-q^{\prime}+r^{\prime}=0pq+r=0 亿注意して
p q + r = p ( q + 3 ) + ( r 2 ) + 3 = p q + r 2 = 2 p q + r = p q + 3 + r 2 + 3 = p q + r 2 = 2 {:[p^('')-q^('')+r^('')=p^(')-(q^(')+3)+(r^(')-2)+3],[=p^(')-q^(')+r^(')-2=-2]:}\begin{aligned} p^{\prime \prime}-q^{\prime \prime}+r^{\prime \prime} & =p^{\prime}-\left(q^{\prime}+3\right)+\left(r^{\prime}-2\right)+3 \\ & =p^{\prime}-q^{\prime}+r^{\prime}-2=-2 \end{aligned}pq+r=p(q+3)+(r2)+3=pq+r2=2
となる。
このことから読者は一般に g g ggg 個の穴のあいた浮輪の表面を三角形分割したとき,次の形をとることが推測されるだろう。
g g ggg 個の穴のあいた浮輪の表面を三角形分割し, 頂点の数を p ~ p ~ tilde(p)\tilde{p}p~,辺の数を q ~ q ~ tilde(q)\tilde{q}q~, 面の数を r ~ r ~ tilde(r)\tilde{r}r~ とする.このとき
(4) p ~ q ~ + r ~ = 2 2 g (4) p ~ q ~ + r ~ = 2 2 g {:(4) tilde(p)- tilde(q)+ tilde(r)=2-2g:}\begin{equation*} \tilde{p}-\tilde{q}+\tilde{r}=2-2 g \tag{4} \end{equation*}(4)p~q~+r~=22g
が成り立つ。
この結果を,球から g g ggg 個の三角柱を除いた場合に示すことは容易 である。しかし g g ggg 個の穴のあいた浮輪の, “どんな三角形分割に対 しても”この結果が成り立つことを示すにはもら少し細かい議論が 必要となってくるだろら.私たちは(4)もまたオイラーの公式とし て引用することにしょう。

三角形を貼り合わせる一一閉曲面

ところでこのように進んでくると,多面体とか,穴がいくつもあ いた浮輪などという具体的な形より,曲面は三角形を貼り合わせて 生まれてくるといら見方が自然かもしれないと思われてくる。三角形といってもこれは伸縮自在の三角形である。柔らかな曲面をつく っている素材は,この伸縮自在の三角形であるといってもよいだろ ら. まったく勝手に三角形を曲面に貼り合わせていったとしても,柔らかな曲面の固有な性質としての穴の数 g g ggg が,そこから浮かび上 がってくることをオイラーの公式は示している.
そこでこの立場に立って,曲面を三角形を貼り合わせたものとし て定義することを考えてみよう,すなわち,有限個の三角形
(5) 1 , 2 , , s (5) 1 , 2 , , s {:(5)/_\_(1)","/_\_(2)","cdots","/_\_(s):}\begin{equation*} \triangle_{1}, \triangle_{2}, \cdots, \triangle_{s} \tag{5} \end{equation*}(5)1,2,,s
をとって,これらを貼り合わせることにより得られたもの,
S = 1 2 s S = 1 2 s S=/_\_(1)uu/_\_(2)uu cdots uu/_\_(s)S=\triangle_{1} \cup \triangle_{2} \cup \cdots \cup \triangle_{s}S=12s
を曲面としてここでの対象としてみたいのである。もちろんここで,貼り合わせの条件がいる。
まず前に述べた ( A ) ( A ) (A)(\mathrm{A})(A) を条件としておく: i j i j i!=ji \neq jij のとき, i j = i j = /_\_(i)nn/_\_(j)=O/\triangle_{i} \cap \triangle_{j}=\varnothingij= か, i i /_\_(i)\triangle_{i}i j j /_\_(j)\triangle_{j}j は 1 頂点または 1 辺だけを共有する.この条件は図 で示してあるような三角形の貼り合わせ方は,曲面をつくるときに は採用しないといっているのである.
辺を共有していない
重なっている
2 頂点だけを共有
このような貼り合わせ も三角形分割として認 めない
私たちはここで曲面といらときには,各点の近くでは 1 枚のゴム 膜を引き伸ばしたよらなものであると考えている。そらなると図に 示してあるような 3 つ以上の三角形が 1 つの辺を共有するよらな貼 り方も採用できなくなる。それを条件として明記する。
(B)(5)に現われた三角形の辺は,隣接するただ 2 つの三角形の共有辺となっている.
なお,私たちは曲面には境界がない——赤道を境界とする半球面 のよらなものは考光ない——しら条件もつけ加えておくことにし よう.
(C)(5)に現われた三角形のどの辺も,必ずほかのある三角形と辺を共有している。
すなわち,たとえば 1 1 /_\_(1)\triangle_{1}1 の 3 辺は必ずほかの三角形の辺と貼り合 わされているのである。あるいはどの三角形をとっても,その各辺 には“糊しろ”がつけられているといった方がわかりやすいかもし れない,条件 ( C ) ( C ) (C)(\mathrm{C})(C) をくことを,考えている曲面は閉じている,あ るいは閉曲面であるといい表わすことがある。
このように三角形を貼り合わせたものとして曲面を定義してみる と,こんどは 2 つ曲面 S S SSS T T TTT は,どんなときに同じものと考之 られるのだろらかといらことが問題となってくる.私たちは三角形 を伸縮して貼ったものも,あるいは直観的にいえば,でき上がった ものを歪めたり,大きく引き伸ばしてあちこちに凹凸をつけてみて も,これらはすべて同じもの一柔らかな曲面—を表わしている という立場に立とうとしているのである。そのことは次のような定
義を打いて,2つの曲面 S S SSS T T TTT を“同一視する” 視点を定めること になる。
定義 S S SSS から T T TTT の上への 1 対 1 の写像 Φ Φ Phi\PhiΦ があって, Φ Φ Phi\PhiΦ が連続のとき, S S SSS T T TTT は同相な曲面という.私たちのいまの立場 では,同相な 2 の曲面は同じものと考える。
Φ Φ Phi\PhiΦ の連続性についてひとこと述べておくと,いま S S SSS の点 P P P\mathrm{P}P Φ Φ Phi\PhiΦ によって T T TTT の点 Q Q Q\mathrm{Q}Q に移ったとする: Φ ( P ) = Q Φ ( P ) = Q Phi(P)=Q\Phi(\mathrm{P})=\mathrm{Q}Φ(P)=Q. このとき P P P\mathrm{P}P のまわ りはいくつかの三角形でおおわれており,それは(ゴム膜を伸ばし たと思えば)平面の一部分と考えてよい。このように考えたとき Φ Φ Phi\PhiΦ は各点のまわりで平面の一部分から一部分への写像として連続とな っているというのである。なお, S S SSS T T TTT が同相のときには,(いま は閉曲面としているので)逆写像 Φ 1 Φ 1 Phi^(-1)\Phi^{-1}Φ1 もた連続となる。

ドーナツ面, クラインの壼, 射影平面

さて, (A), (B), (C)の指示にしたがって, 三角形を貼り合わせ て曲面 S S SSS をつろらとするとき,私たちがふつら行なっているこ とは,三角形を平面上に次々と貼り合わせていって,最後に得られ た多角形の辺を,適当に対として取り出しそれを貼って S S SSS をつく る作業を完成させるということである。たとえば正 6 面体をつくる とき,図に示したよらに展開図(これは三角形を貼って得られたも のとみることができる)を書いて,それを適当な辺どうしで貼り合
(a)
(b)
(a)の展開図を貼り合わせ,正 6 面体をつくり 球に内接させて, 球の中心から球面へ射影す ると, 球面の三角形分割が得られる。
わせてつくる. でき上がった正 6 面体は三角形分割されているが, この正 6 面体を球に内接させて球の中心から球面上へ射影すれば, この三角形分割は同時に, 球面の三角形分割を与えていることにな る.
このような立場では, ドーナッ面は図で示したよらに長方形をま ず対辺 AB AB AB\mathrm{AB}AB CD CD CD\mathrm{CD}CD を矢印の向きに貼り合わせ,次にこの段階で円周 となった対辺 AC , BD AC , BD AC,BD\mathrm{AC}, \mathrm{BD}AC,BD を矢印の向きに貼り合わせて得られる.
このとき長方形 ABDC ABDC ABDC\mathrm{ABDC}ABDC を図のように三角形分割しておくと,こ れはドーナツ面の三角形分割を与えたことになっている。
p = 9 , q = 27 , r = 18 p = 9 , q = 27 , r = 18 p^(')=9,quadq^(')=27,quadr^(')=18p^{\prime}=9, \quad q^{\prime}=27, \quad r^{\prime}=18p=9,q=27,r=18
ドーナッ面上で異なる
頂点となるものに○を つけてある。
念のためこのときの三角形の頂点の数 p p p^(')p^{\prime}p, 辺の数 q q q^(')q^{\prime}q, 三角形の総数 r r r^(')r^{\prime}r 数えてみると
p = 9 , q = 27 , r = 18 p = 9 , q = 27 , r = 18 p^(')=9,quadq^(')=27,quadr^(')=18p^{\prime}=9, \quad q^{\prime}=27, \quad r^{\prime}=18p=9,q=27,r=18
となっており,この場合にもドーナッ面に対するオイラーの公式
(6) p q + r = 0 (6) p q + r = 0 {:(6)p^(')-q^(')+r^(')=0:}\begin{equation*} p^{\prime}-q^{\prime}+r^{\prime}=0 \tag{6} \end{equation*}(6)pq+r=0
が成り立つことが確かめられる.
しかし, ドーナッ面をこのよらに長方形 ABDC の貼り合わせで つくってみると, こんどは誰でも対辺 AC AC AC\mathrm{AC}AC BD BD BD\mathrm{BD}BD の向きを変えて貼 り合わせたらどらなるだろらかと考えてみたくなる。実際このよう に貼ってみても,三角形を貼るときに課した条件 ( A ) , ( B ) , ( C ) ( A ) , ( B ) , ( C ) (A),(B),(C)(\mathrm{A}),(\mathrm{B}),(\mathrm{C})(A),(B),(C) は みたされているから,1つの曲面が得られるはずである。 p , q , r p , q , r p^('),q^('),r^(')p^{\prime}, q^{\prime}, r^{\prime}p,q,r
はドーナッ面のときと同じである。したがってこのようにしてつく った曲面に対しては,(6)と同じ形でオイラーの公式が成り立って いる。しかしこの曲面は,も 53 次元の空間の中ではふつらの曲面 としては実現できない。 3 次元の空間の中でこの貼り合わせを行な おらとすると,どらしても交わってしまらのである。この曲面をク ラインの壹といら。これについては月曜日 “お茶の時間”で述べて あるが,三角形分割の図とあわせて,もら一度ここに図示しておこ 5 .
長方形 ABDC ABDC ABDC\mathrm{ABDC}ABDC で,対辺 AC AC AC\mathrm{AC}AC BD BD BD\mathrm{BD}BD を向きを変えて貼るだけでな く,もら一方の対辺 AB AB AB\mathrm{AB}AB CD CD CD\mathrm{CD}CD の向きも変えて貼ると射影平面とよ ばれる曲面が得られる。
なおこの図で,長方形をふくらまして円に変形してみると,次の ことがわかる. 射影平面とは,1つの円において,円周上で中心に 関して点対称の 2 点を,すべて同一視して得られる曲面であると考 えられるのである(134 頁参照).
この曲面は 3 次元の空間の中でどのよらに具象化して考えてよい のかわからない。その意味ではクラインの當よりもはるかに想像し にくい曲面である。なお射影平面の 1 つの三角形分割を示しておい た.この三角形分割の頂点, 辺, 面の数 p , q , r p , q , r p^(''),q^(''),r^('')p^{\prime \prime}, q^{\prime \prime}, r^{\prime \prime}p,q,r はそれぞれ p p p^('')p^{\prime \prime}p = 6 , q = 15 , r = 10 = 6 , q = 15 , r = 10 =6,q^('')=15,r^('')=10=6, q^{\prime \prime}=15, r^{\prime \prime}=10=6,q=15,r=10 となっている. このとき
(7) p q + r = 1 (7) p q + r = 1 {:(7)p^('')-q^('')+r^('')=1:}\begin{equation*} p^{\prime \prime}-q^{\prime \prime}+r^{\prime \prime}=1 \tag{7} \end{equation*}(7)pq+r=1
となる.
射影平面の三角形分割

向きづけ可能と向きづけ不可能

(4)と(7)を見くらべてみると,(4)の右辺はいりも偶数となって いるのに,(7)の右辺は奇数である。このことは, 射影平面は決し て球面に穴をあけて得られる曲面とは同相にならないことを示して いる。実際は,クラインの壹も,球に穴をあけた曲面とは同相にな らない.
曲面には, 球に穴をあけたよらな曲面と, クラインの壼や射影平面とを区別する,大きな区別の仕方がある。それは“向きづけ可能”と,“向きづけ可能でない”といら区別の仕方である. このこと を説明してみよう。
まず三角形 ABC ABC ABC\mathrm{ABC}ABC に向きを与えるとは, 辺を 1 周する 2 つ向き ( A B C ( A B C (ArarrBrarrC(\mathrm{A} \rightarrow \mathrm{B} \rightarrow \mathrm{C}(ABC と回るか, A C B A C B ArarrCrarrB\mathrm{A} \rightarrow \mathrm{C} \rightarrow \mathrm{B}ACB と回るか ) ) ))) のいずれか 1 つの向きを 正,残りの向きを負と決めることである.ふつらは三角形の向きは 時計の針と反対方向に回る向きを正の向きとするが,この三角形を 書いた紙の裏からみれば,この回り方は時計の針と同じ向きになっ ている。表から見るのと裏から見るのとで,向きが逆になるという
ことは,向きのつけ方に絶対的な決め万などないということである.
向きづけ可能な曲面とは次のような曲面である。三角形分割した とき,その中の 1 つの三角形に正の向きにまわる回り方を決め,次 に隣接した三角形にはこの向きに合わせるよらに正の向きを与えて いく(図参照).
この操作を次々と三角形に行なって正の向きを決めたとき,どの 三角形にもただ 1 通りに正の向きが決まるとき,向きづけ可能とい らのである。向きづけ可能な曲面に対しては, 三角形の周に沿って 1 周するとき, 正の向きに 1 周するか, 負の向きに 1 周するかが決 まることになる.球面やドーナツ面などは向きづけ可能である。
しかしクラインの壼や射影平面は向きづ可能でない。そのこと は,上の図で示してあるそれぞれの三角形分割に向きを与えよらと しても,対辺を逆向きに貼ったために向きが一定しないことから確 かめられる。
なお,1つの曲面が向きづけ可能か,向きづけ可能でないかは,三角形分割のとり方によらないで曲面の性質として決まった性質で ある.

連結和

日常見なれている球や浮輪のようなものだけではなくて, クライ ンの壼や,射影平面などが曲面の中に登場してくると,何かもっと 不思議な魔法の营のようなものも曲面として登場してくるのではな いかと想像されてくる,そのため,同相といら視点に立ったとき, どんな曲面があるのかをはっきりさせて扎いた方がよい。それを曲
面の分類問題というのだが,その結果を述べる前に連結和といら概念を導入しておいた方がよいよらである。まずそのことから説明す ることにしょう。
ドーナッ面を 2 とり,それを T 1 , T 2 T 1 , T 2 T_(1),T_(2)T_{1}, T_{2}T1,T2 とする。私たちは T 1 T 1 T_(1)T_{1}T1 T 2 T 2 T_(2)T_{2}T2 の連結和 T 1 # T 2 T 1 # T 2 T_(1)#T_(2)T_{1} \# T_{2}T1#T2 を定義したい。そのため T 1 , T 2 T 1 , T 2 T_(1),T_(2)T_{1}, T_{2}T1,T2 からそれぞれ 適当な円板 D 1 , D 2 D 1 , D 2 D_(1),D_(2)D_{1}, D_{2}D1,D2 をとり, 次に T 1 , T 2 T 1 , T 2 T_(1),T_(2)T_{1}, T_{2}T1,T2 からこれらの円板の内部 D 1 , D 2 D 1 , D 2 D^(@)_(1),D^(@)_(2)\stackrel{\circ}{D}_{1}, \stackrel{\circ}{D}_{2}D1,D2 を取り除く. したがってドーナッ面 T 1 , T 2 T 1 , T 2 T_(1),T_(2)T_{1}, T_{2}T1,T2 に 2 の風穴が あいたようになる。次に D 1 , D 2 D 1 , D 2 D_(1),D_(2)D_{1}, D_{2}D1,D2 の境界となっている円周 C 1 , C 2 C 1 , C 2 C_(1),C_(2)C_{1}, C_{2}C1,C2 の 向きを逆にとって(一方が時計の針の進む向きなら,他方は逆の向 きにとって),連続的に 1 対 1 に対応するような対応を決め,この 対応にしたがって C 1 C 1 C_(1)C_{1}C1 C 2 C 2 C_(2)C_{2}C2 を貼りつける。このようにして得られ た曲面を, T 1 T 1 T_(1)T_{1}T1 T 2 T 2 T_(2)T_{2}T2 の連結和といい, T 1 # T 2 T 1 # T 2 T_(1)#T_(2)T_{1} \# T_{2}T1#T2 と表わす.
T 1 T 1 T_(1)T_{1}T1
T 2 T 2 T_(2)T_{2}T2
T 1 # T 2 T 1 # T 2 T_(1)#T_(2)T_{1} \# T_{2}T1#T2
要するに,2つのドーナッ面 T 1 , T 2 T 1 , T 2 T_(1),T_(2)T_{1}, T_{2}T1,T2 に風穴をあけて,その風穴 に沿って貼り合わせて T 1 T 1 T_(1)T_{1}T1 T 2 T 2 T_(2)T_{2}T2 をつないで, 同時に風穴を閉じて しまらといらことをしたのである。でき上がったものは図を見ても わかるよ5に 2 つ穴の浮輪である。もちろんこのよらな図を自由に 描いている背景には,私たちが考えているのは硬い曲面ではなく,柔らかい曲面を同相の立場で見ているといらことがある.
この連結和の操作を, “展開図”を用いて表わそうとすると次頁 に示した図のよらになる。
この図で(i)から (ii)へ移るところは円周 C 1 , C 2 C 1 , C 2 C_(1),C_(2)C_{1}, C_{2}C1,C2 を切り開いて線分としているが,これはあくまで “展開図”であって,最終的には (ii) の線分 C 1 , C 2 C 1 , C 2 C_(1),C_(2)C_{1}, C_{2}C1,C2 の端点は貼り合わされる. (i)と (ii)はそのよらに 見れば同相な図形を表わしていることは納得してもらえるだろら。
(ii)は展開図といっても,対辺の長さが違らから,貼り合わすとい
(i)
)
(iii)
っても現実にはそんな上手に貼れないので,1つのモデルと考兄た 方がよい. (ii)から(iii)への移行で, C 1 C 1 C_(1)C_{1}C1 C 2 C 2 C_(2)C_{2}C2 は貼り合わされ, 8 角形が得られたが,同じ記号で表わされた辺を矢印の向きに同一視し, さらに線分 C C CCC の端点を同一視すると,この 8 つの頂点はすべて 1 点に集められることになる。この(iii)が三角形を貼るといら立場と,同相といら立場に立ったときの, 連結和 T 1 # T 2 T 1 # T 2 T_(1)#T_(2)T_{1} \# T_{2}T1#T2 を表わす一種の展開図と考之られる。

閉曲面の分類定理

g g ggg 個のドーナツ面 T 1 , T 2 , , T g T 1 , T 2 , , T g T_(1),T_(2),cdots,T_(g)T_{1}, T_{2}, \cdots, T_{g}T1,T2,,Tg があったとき, 次々と連結和を とっていくことにより, 曲面
( I ) T 1 # T 2 # # T g T 1 # T 2 # # T g T_(1)#T_(2)#cdots#T_(g)T_{1} \# T_{2} \# \cdots \# T_{g}T1#T2##Tg
を考えることができる.この曲面は g g ggg 個の穴のあいた浮輪として実現されている曲面である.実は向きづけ可能な曲面はすべてこのよ らにして得られることが知られている。 すなわち次の定理が成り立 つ.
定理 向きづけ可能な曲面は, 球面かまたは(I)の形で表わ される曲面に同相である。
このとき g g ggg を曲面の種数といら. 球面の種数は 0 と定義しておく のである。Kをクラインの壼, P P PPP を射影平面とする。これらに (I)のよらに表わされた曲面を,連結和によってつなげていくこと ができる.要するに円板を抜き取って円周に沿って貼り合わすので ある。このよらにして実は向きづけできない曲面がすべて得られる のである。すなわち次の定理が成り立つ.
定理 向きづけ不可能な曲面は, 次の(II)または(III)のいず れか 1 つの曲面と同相になる:
( II ) K # T 1 # T 2 # # T g ( g 0 ) K # T 1 # T 2 # # T g ( g 0 ) K#T_(1)#T_(2)#cdots#T_(g)quad(g >= 0)K \# T_{1} \# T_{2} \# \cdots \# T_{g} \quad(g \geqq 0)K#T1#T2##Tg(g0)
( III ) P # T 1 # T 2 # # T g ( g 0 ) P # T 1 # T 2 # # T g ( g 0 ) P#T_(1)#T_(2)#cdots#T_(g)quad(g >= 0)P \# T_{1} \# T_{2} \# \cdots \# T_{g} \quad(g \geqq 0)P#T1#T2##Tg(g0)
したがってこの 2 の定理によって, 曲面は同相の立場に立って みる限り, 図で示したようなものしかないのである.
(I)

(II)
(III)

歴史の潮騒

ごく大ざっぱにいえば, 1 対 1 の連続写像で変わらない性質を調 べる数学の分野をトポロジーといら.
トポロジーは 20 世紀になって急速に発展した数学の研究分野で あって, 19 世紀まではこの研究分野を育てる学問の根はなお浅く 細かったのである. 1679 年にライプニッツは『Characterstica Geometrica』といら本を出版したが,その中で(現代流にいえば)
形の中にひそんでいる距離に関する性質より,むしろトポロジー的 な性質を調べることを試みようとした。ライプニッツはその中で “私たちは位置(situs)を定義するような純粋に幾何学的な何らかの 解析を必要としている,その解析は,代数がちょうど量を定義する よらなものである”といっているそらである。これは私の勝手な推測にすぎないのだが,ライプニッツは形の中から何か記号化できる ものを取り出し,その記号を通して形相に関する普遍的な性質を求 めようとしていたのかもしれない. ライプニッッはこの研究の方向 にホイヘンスの興味を誘おうとしたのだが,それは不成功に終った。
18 世紀になって,オイラーが多面体に対して p q + r = 2 p q + r = 2 p-q+r=2p-q+r=2pq+r=2 といら 公式を見出した。これはトポロジーの最初の定理として引用される ことが多い,ところでオイラーはもら1つトポロジー的な考察を必要とするような問題に出くわした。ケーニヒスブルクの町には図の よらに川が流れ,ここに7つの橋が架かっていた。
ケーニヒスブルクの橋の問題を
調べるには,右のグラフが一筆
書きできるかどうかをみるとよい
この橋をただ 1 回きりしか渡らないで,すべての橋を渡ることが できるかといらことは, 古来“ケーニヒスブルクの橋の問題”とし て有名であった。どの橋も通行料金をとっていたから,この問題は 町の人たちにも関心が深かったのである.オイラーはこれが不可能 であることを示し,さらに一般に,連結なグラフが一筆書きできる ための必要十分条件を 1735 年に見出した。その条件は,グラフの 交点に集まる道の数は,どの交点でもいつも偶数個になっているか, そらでないときには,2つの交点にだけ奇数個の道が集り,残りは すべて偶数個の道が集っている,といい表わされる。
昨日,リーマンのことを述べた際触れたよらに,トポロジーとい ら言葉は 1848 年のリスティングの本の題名としてはじめて現われ た.トポロジーは“形相の学”を表わすためにギリシャ語のトポス (場所)とロゴス(学問)を合わせた造語といわれている。しかし 19 世紀を通してこのトポロジーといら言葉は, 数学の中に定着するこ とはなかった. Analysis situs といら言葉が広く用いられていたの である。
トポロジーとよばれる研究分野が 1 つ学問として育っていくた めの基本的な方法を見出したのは, 1895 年にポカンカレによって 発表された長編の論文『Analysis situs』によってである. ポアン カレは, トポロジー的な方法を微分方程式や力学系の問題, とくに 三体問題に適用しょらと考えていた。ポアンカレは一般に N N NNN 次元 ユークリッド空間 R N R N R^(N)\boldsymbol{R}^{N}RN の中にある,滑らかな高次元の曲面(現在で C 1 C 1 C^(1)C^{1}C1-部分多様体とよばれる)の位相的な性質を取り扱らことを試み, そこにホモロジーという概念を導入した。その概念を通して代数的演算を導入する緒口をつかんだのである。やがて 20 世紀になって,抽象代数学の機運が高まってくると,ポアンカレの見出した代数的方法はトポロジーを展開する際のもっとも主要な方法となり, 代数的トポロジーとよばれる 1 つの分野を形成した。それは高次元の幾何学的対象から多くの位相不変量を取り出すことに著しい成功をお さめ, 20 世紀数学が達した 1 つの頂点を示すほどにもなったので ある。

先生との対話

山田君がノートに書きらつした図を見ながらしばらく考えていた が,それから先生に質問した。
「2つ穴の浮輪の展開図—といっても糊しろをつけて貼り合わ すわけにはいかないよらだけど——が, 128 頁の図のよらに書けた とすると, 3 つ穴の浮輪は a 1 , b 1 , a 2 , b 2 , a 3 , b 3 a 1 , b 1 , a 2 , b 2 , a 3 , b 3 a_(1),b_(1),a_(2),b_(2),a_(3),b_(3)a_{1}, b_{1}, a_{2}, b_{2}, a_{3}, b_{3}a1,b1,a2,b2,a3,b3 という記号と矢印で, こんなふらに表わすことになるのでしょらか.」
そらいって山田君は前に出てきて, 黒板に次のような図を書いた。
「そうです。ただしこれをそのまま貼り合わすわけにはいかない でしょ5. 内部の 12 角形が三角形分割されているとし, それらは 伸縮自在なゴム膜からできていると思ったとき,ふちの部分をどの よらに貼り合わせるかを示している図と見て下さい。この図を記号 で a 1 b 1 a 1 1 b 1 1 a 2 b 2 a 2 1 b 2 1 a 3 b 3 a 3 1 b 3 1 a 1 b 1 a 1 1 b 1 1 a 2 b 2 a 2 1 b 2 1 a 3 b 3 a 3 1 b 3 1 a_(1)b_(1)a_(1)^(-1)b_(1)^(-1)a_(2)b_(2)a_(2)^(-1)b_(2)^(-1)a_(3)b_(3)a_(3)^(-1)b_(3)^(-1)a_{1} b_{1} a_{1}^{-1} b_{1}{ }^{-1} a_{2} b_{2} a_{2}^{-1} b_{2}{ }^{-1} a_{3} b_{3} a_{3}^{-1} b_{3}^{-1}a1b1a11b11a2b2a21b21a3b3a31b31 と表わします. 肩に -1 をつけたのは矢印の向きが逆のことを示しているのですね. 向きづ け可能な種数 g g ggg の曲面は, 2 g 2 g 2g2 g2g 個の記号 a 1 , b 1 , a 2 , b 2 , , a g , b g a 1 , b 1 , a 2 , b 2 , , a g , b g a_(1),b_(1),a_(2),b_(2),cdots,a_(g),b_(g)a_{1}, b_{1}, a_{2}, b_{2}, \cdots, a_{g}, b_{g}a1,b1,a2,b2,,ag,bg を用意 しておくと,同じような記号列 a 1 b 1 a 1 1 b 1 1 a g b g a g 1 b g 1 a 1 b 1 a 1 1 b 1 1 a g b g a g 1 b g 1 a_(1)b_(1)a_(1)^(-1)b_(1)^(-1)cdotsa_(g)b_(g)a_(g)^(-1)b_(g)^(-1)a_{1} b_{1} a_{1}{ }^{-1} b_{1}{ }^{-1} \cdots a_{g} b_{g} a_{g}{ }^{-1} b_{g}{ }^{-1}a1b1a11b11agbgag1bg1 として 表わすことができます.」
明子さんが
「向きづけができない曲面に対しても,似たよらな表わし方はあ るのですか.」
と聞いた。
「向きづけができない曲面は,もともと 3 次元の中で実現できな いものですから,こうした記号化も概念化してしまって,直観では 捉えにくいものになります。たとえば明子さんは, a a a a aaa aaa は射影平面, a a b b a a b b aabba a b baabb はクラインの壹を表わしていることがわかりますか.」 と先生が逆に明子さんに質問された。明子さんはノートに図を書い て考えていたが
「aaが射影平面を表わしていることは図のようにしてわかります が, クラインの壼はこの表わし方では a b a 1 b a b a 1 b aba^(-1)ba b a^{-1} baba1b となるのではないで しょらか.」
と不審そらな顔で聞いた。
「そうですね.ふつらのクラインの冡の貼り方は a b a 1 b a b a 1 b aba^(-1)ba b a^{-1} baba1b と表わ されるのですが, a a b b a a b b aabba a b baabb と表わすこともできるのです.ここでは a a b b a a b b aabba a b baabb から a b a 1 b a b a 1 b a^(')b^(')a^('-1)b^(')a^{\prime} b^{\prime} a^{\prime-1} b^{\prime}aba1b と変形する切り貼りの仕方を書いてみまし ょう.」
そらいって先生はていねいに図を書かれたが,明子さんはこのとき 先生が黒板の上で手品をしているような錯覚に一瞬襲われた。
a a b b a a b b aabba a b baabb
b b b^(')b^{\prime}b
a b a 1 b a b a 1 b a^(')b^(')a^('-1)b^(')a^{\prime} b^{\prime} a^{\prime-1} b^{\prime}aba1b
先生が言葉をついで
「向きづけ不可能な曲面の標準形は
(8) a 1 a 1 a 2 a 2 a q a q (8) a 1 a 1 a 2 a 2 a q a q {:(8)a_(1)a_(1)a_(2)a_(2)cdotsa_(q)a_(q):}\begin{equation*} a_{1} a_{1} a_{2} a_{2} \cdots a_{q} a_{q} \tag{8} \end{equation*}(8)a1a1a2a2aqaq
となります. 130 頁の定理との対応でいいますと, K # T 1 # # T g K # T 1 # # T g K#T_(1)#cdots#T_(g)K \# T_{1} \# \cdots \# T_{g}K#T1##Tg と表わされるのは q = 2 g + 2 q = 2 g + 2 q=2g+2q=2 g+2q=2g+2 のときで, P # T 1 # # T g P # T 1 # # T g P#T_(1)#cdots#T_(g)P \# T_{1} \# \cdots \# T_{g}P#T1##Tg と表わされる のは q = 2 g + 1 q = 2 g + 1 q=2g+1q=2 g+1q=2g+1 のときです. なお, P # K P # K P#KP \# KP#K P # T 1 P # T 1 P#T_(1)P \# T_{1}P#T1 と同相になるこ とが知られていますが,これについてはたとえば加藤十吉『位相幾何学』(裳華房)を参照してみて下さい.」
といわれた。小林君がノートを見ながら
「向きづけ可能な曲面のときには,オイラーの公式の一般の形が どんなものかはわかりましたが, 向きづけ不可能な曲面に対しても 似たよらな公式はあるのでしょらか.」 と質問した。
「向きづけ不可能な曲面は, 標準形(8)で表わされることがわかる と,ここに現われている q q qqq を使って,この場合の“オイラーの公式”は
p q + r = 2 q p q + r = 2 q p-q+r=2-qp-q+r=2-qpq+r=2q
となります. クラインの壹のときは q q qqq は 2 で右辺は 0 となり, 射影平面のときは q q qqq は 1 で右辺は 1 となります。これは前に三角形分割 を使って計算した値と一致していますね.」
皆は, クラインの冡の三角形の貼り方を手品のように変えた図が, まだ消されずに黒板に残っているのを見ているだけに,どんな三角形分割をとっても, p q + r p q + r p-q+rp-q+rpq+r が一定だといらことに, 改めて不思議 な感じを味わっていた。
默って皆の話を聞いていたかず子さんが,ふと思い出したよらに 質問した。
「ポアンカレが代数的な方法を導入して, それ以来トポロジーと いら研究分野が大きく発展するよらになったといらことですが, 代数的な方法とはどんなものなのですか.」
先生は少し小首を傾けるよらにして考えて打られたが,それから 次のように話された。
「図形の中から代数的なものを取り出すのはポアンカレによって 試みられたのですが,そこには単に幾何学的な直観だけではなくて,何か数学といら学問のもつ直視力とでもいらべきものが働いたよう です。この直視力のよって立つ場所はそれほど明らかなものではあ りませんから, トポロジー, とくに代数的トポロジーを最初に学ぶ ときには,いまでも戸惑らことが多いょうです.
向きづけ可能な曲面 S S SSS に対して,このポアンカレの考えの大体 を説明してみましょう,Sを三角形分割して
{ a 1 , a 2 , , a p } : 頂点の全体 { λ 1 , λ 2 , , λ q } : 辺の全体 { 1 , 2 , , r } : 三角形の全体 a 1 , a 2 , , a p :  頂点の全体  λ 1 , λ 2 , , λ q :  辺の全体  1 , 2 , , r :  三角形の全体  {:[{a_(1),a_(2),cdots,a_(p)},:" 頂点の全体 "],[{lambda_(1),lambda_(2),cdots,lambda_(q)},:" 辺の全体 "],[{/_\_(1),/_\_(2),cdots,/_\_(r)}:" 三角形の全体 "]:}\begin{array}{ll} \left\{a_{1}, a_{2}, \cdots, a_{p}\right\} & : \text { 頂点の全体 } \\ \left\{\lambda_{1}, \lambda_{2}, \cdots, \lambda_{q}\right\} & : \text { 辺の全体 } \\ \left\{\triangle_{1}, \triangle_{2}, \cdots, \triangle_{r}\right\}: \text { 三角形の全体 } \end{array}{a1,a2,,ap}: 頂点の全体 {λ1,λ2,,λq}: 辺の全体 {1,2,,r}: 三角形の全体 
とします. 1 , 2 , , r 1 , 2 , , r /_\_(1),/_\_(2),cdots,/_\_(r)\triangle_{1}, \triangle_{2}, \cdots, \triangle_{r}1,2,,r には互いに整合している 1 つ向きを決 めておきます。このとき,各辺にも自然に向きが決まります。この 素材から,ポアンカレは大胆に次の 3 つの群をつくりました。
C 0 ( ) = { a 1 , a 2 , , a p } から生成された加群 C 1 ( ) = { λ 1 , λ 2 , , λ q } から生成された加群 C 0 ( ) = a 1 , a 2 , , a p  から生成された加群  C 1 ( ) = λ 1 , λ 2 , , λ q  から生成された加群  {:[C^(0)(/_\)={a_(1),a_(2),cdots,a_(p)}" から生成された加群 "],[C^(1)(/_\)={lambda_(1),lambda_(2),cdots,lambda_(q)}" から生成された加群 "]:}\begin{aligned} & C^{0}(\triangle)=\left\{a_{1}, a_{2}, \cdots, a_{p}\right\} \text { から生成された加群 } \\ & C^{1}(\triangle)=\left\{\lambda_{1}, \lambda_{2}, \cdots, \lambda_{q}\right\} \text { から生成された加群 } \end{aligned}C0()={a1,a2,,ap} から生成された加群 C1()={λ1,λ2,,λq} から生成された加群 
C 2 ( ) = { 1 , 2 , , r } から生成された加群 C 2 ( ) = 1 , 2 , , r  から生成された加群  C^(2)(/_\)={/_\_(1),/_\_(2),cdots,/_\_(r)}" から生成された加群 "C^{2}(\triangle)=\left\{\triangle_{1}, \triangle_{2}, \cdots, \triangle_{r}\right\} \text { から生成された加群 }C2()={1,2,,r} から生成された加群 
ここで加群と書いたのは, たとえば C 2 ( ) C 2 ( ) C^(2)(/_\)C^{2}(\triangle)C2() の元は 1 通りに
α = m 1 1 + m 2 2 + + m r r ( m i は整数 ) α = m 1 1 + m 2 2 + + m r r m i  は整数  alpha=m_(1)/_\_(1)+m_(2)/_\_(2)+cdots+m_(r)/_\_(r)quad(m_(i)" は整数 ")\alpha=m_{1} \triangle_{1}+m_{2} \triangle_{2}+\cdots+m_{r} \triangle_{r} \quad\left(m_{i} \text { は整数 }\right)α=m11+m22++mrr(mi は整数 )
と表わされるもので, α α alpha\alphaα β = n 1 1 + + n r r β = n 1 1 + + n r r beta=n_(1)/_\_(1)+cdots+n_(r)/_\_(r)\beta=n_{1} \triangle_{1}+\cdots+n_{r} \triangle_{r}β=n11++nrr の加法は
α + β = ( m 1 + n 1 ) 1 + ( m 2 + n 2 ) 2 + + ( m r + n r ) r α + β = m 1 + n 1 1 + m 2 + n 2 2 + + m r + n r r alpha+beta=(m_(1)+n_(1))/_\_(1)+(m_(2)+n_(2))/_\_(2)+cdots+(m_(r)+n_(r))/_\_(r)\alpha+\beta=\left(m_{1}+n_{1}\right) \triangle_{1}+\left(m_{2}+n_{2}\right) \triangle_{2}+\cdots+\left(m_{r}+n_{r}\right) \triangle_{r}α+β=(m1+n1)1+(m2+n2)2++(mr+nr)r
と定義されているものです。(なお i i -/_\_(i)-\triangle_{i}i i i /_\_(i)\triangle_{i}i の向きを負にした ものと考えることにします。)
次に境界作用素 : C 2 ( ) C 1 ( ) , : C 1 ( ) C 0 ( ) : C 2 ( ) C 1 ( ) , : C 1 ( ) C 0 ( ) del:C^(2)(/_\)rarrC^(1)(/_\),del:C^(1)(/_\)rarrC^(0)(/_\)\partial: C^{2}(\triangle) \rightarrow C^{1}(\triangle), \partial: C^{1}(\triangle) \rightarrow C^{0}(\triangle):C2()C1(),:C1()C0() を, た と之ば図の三角形に対して
a 1 a 2 = a 2 a 1 a 1 a 2 = a 2 a 1 {:del(:a_(1)quada_(2):)=a_(2)-a_(1):}\begin{aligned} & \partial\left\langle a_{1} \quad a_{2}\right\rangle=a_{2}-a_{1} \end{aligned}a1a2=a2a1
のように定義します. 1 点 a a aaa に対しては a = 0 a = 0 del(:a:)=0\partial\langle a\rangle=0a=0 とおきます.
そらした上で, 1 次元(辺)の場合でい光ば, C 1 ( ) C 1 ( ) C^(1)(/_\)C^{1}(\triangle)C1() の中で
( m 1 λ 1 + + m q λ q ) = 0 m 1 λ 1 + + m q λ q = 0 del(m_(1)lambda_(1)+cdots+m_(q)lambda_(q))=0\partial\left(m_{1} \lambda_{1}+\cdots+m_{q} \lambda_{q}\right)=0(m1λ1++mqλq)=0
をみたすものをサイクルといって,その全体 Z 1 ( ) Z 1 ( ) Z^(1)(/_\)Z^{1}(\triangle)Z1() 飞注目するの です. Z 1 ( ) Z 1 ( ) Z^(1)(/_\)Z^{1}(\triangle)Z1() もまた加群になります. しかし Z 1 ( ) Z 1 ( ) Z^(1)(/_\)Z^{1}(\triangle)Z1() の元が直接,図形の同相の考兄と結びつくわけではありません. さらに α , β α , β alpha,beta in\alpha, \beta \inα,β Z 1 ( ) Z 1 ( ) Z^(1)(/_\)Z^{1}(\triangle)Z1() のとき
α β = ( l 1 1 + + l q q ) α β = l 1 1 + + l q q alpha-beta=del(l_(1)/_\_(1)+cdots+l_(q)/_\_(q))\alpha-\beta=\partial\left(l_{1} \triangle_{1}+\cdots+l_{q} \triangle_{q}\right)αβ=(l11++lqq)
と表わされるとき, α α alpha\alphaα β β beta\betaβ はじホモロジー類を定義するといって, このホモロジー類によって曲面の中にある “位相不変量”を取り出 そらとしたのです。
かず子さんの質問に答えるために,少し詳しく話してしまいまし たが,それでもこれだけの話では何のことかよくわからないでしょ 5.ここではどんな素材を使って代数的なトポロジーが構成されて いくかといら感じだけでも知ってもらえばよいのです. も5少し勉強してみたい人は,たと觉ば田村一郎『トポロジー』(岩波書店)を 見てみられるとょいでしょら.」
問 題
[1] 長方形 ABA B ABA B ABA^(')B^(')\mathrm{ABA}^{\prime} \mathrm{B}^{\prime}ABAB で対辺 AB AB AB\mathrm{AB}AB B A B A B^(')A^(')\mathrm{B}^{\prime} \mathrm{A}^{\prime}BA の向きを逆にして貼り合わせ て得られる帯をメービウスの帯といら.下の図を参考にして,クラインの 壹 K K KKK はメービウスの帯を 2 貼り合わせて得られることを示しなさい。
2]下の図を参考にして,射影平面 P P PPP はメービウスの帯のふちに沿っ て円板を貼ることにより得られることを示しなさい。
円板
対辺の同一視で 射影平面となる
[3] P # P = K P # P = K P#P=KP \# P=KP#P=K を示しなさい.

お茶の時間

質問 クラインの冡は 3 次元の空間の中で無理につくろらとする から交わってしまらので,4 次元の空間の中でつくればごく自然に
交わることなくつくれると聞いたことがありますが,これはどらい らことなのでしょらか.
答 4 次元の空間とい5のは, 数学的には 4 個の実数 ( x 1 , x 2 , x 3 x 1 , x 2 , x 3 (x_(1),x_(2),x_(3):}\left(x_{1}, x_{2}, x_{3}\right.(x1,x2,x3, x 4 x 4 x_(4)x_{4}x4 )を座標としてもつ点全体のつくる空間である. 4 次元の空間を ここで SF SF SF\mathrm{SF}SF 的に空想してもはじまらないので
3 次元 ( x 1 , x 2 , x 3 ) x 1 , x 2 , x 3 (x_(1),x_(2),x_(3))\left(x_{1}, x_{2}, x_{3}\right)(x1,x2,x3)
4 次元 ( x 1 , x 2 , x 3 , x 4 ) x 1 , x 2 , x 3 , x 4 (x_(1),x_(2),x_(3),x_(4))\left(x_{1}, x_{2}, x_{3}, x_{4}\right)(x1,x2,x3,x4)
と対応させて考えることにしょう.そして 3 次元の中の 1 次元とい らと曲線だから,それを 4 次元の中の 2 次元の曲面と対応させて考 えることにする。
3 次元の中の 2 本の曲線が,たまたま ( x 1 , x 2 , 0 ) x 1 , x 2 , 0 (x_(1),x_(2),0)\left(x_{1}, x_{2}, 0\right)(x1,x2,0) で表わされる平面 R 2 R 2 R^(2)\boldsymbol{R}^{2}R2 上にあって,ある点 P P P\mathrm{P}P で交わっているとする. 2 本の道路が 交わって,そこでいつも交通溙滞が起きる様子を想像してみること にしよう,交通渋滯をなくするには,一方の道路を高架にして,も ら一方の道路をまたがせてしまらとよい。曲線でい㫕ば, 一方の曲線を点 P P P\mathrm{P}P の近くで ( x 1 , x 2 , x 3 ) , x 3 > 0 x 1 , x 2 , x 3 , x 3 > 0 (x_(1),x_(2),x_(3)),x_(3) > 0\left(x_{1}, x_{2}, x_{3}\right), x_{3}>0(x1,x2,x3),x3>0 となるように少し “上の方へ” ずらせばよいのである.
クラインの壼でも同じように, 図のクラインの壼は R 4 R 4 R^(4)\boldsymbol{R}^{4}R4 の中でと くに ( x 1 , x 2 , x 3 , 0 ) x 1 , x 2 , x 3 , 0 (x_(1),x_(2),x_(3),0)\left(x_{1}, x_{2}, x_{3}, 0\right)(x1,x2,x3,0) で表わされる範囲で描かれていると考えるので ある.
このときカゲをつけた部分を “高架” ( x 1 , x 2 , x 3 , x 4 ) , x 4 > 0 x 1 , x 2 , x 3 , x 4 , x 4 > 0 (x_(1),x_(2),x_(3),x_(4)),x_(4) > 0\left(x_{1}, x_{2}, x_{3}, x_{4}\right), x_{4}>0(x1,x2,x3,x4),x4>0, として またがせれば,クラインの壹の交わりは外されてしまらだろら。
射影平面も 4 次元の中では交わりのない形で表わすことができる のだが,これはクラインの壼のときと違ってあまり簡単に説明する ことはできない.

土曜日

多様な姿を支える場

先生の話

今週は曲面の研究の流扎追って話をしてきました. その流れに は2つあって,1つはオイラー, モンジュ, ガウス, リーマンへと 移行しながら微分幾何学へとつながる道であり,もら1つはオイラ 一からポアンカレを経て, 20 世紀になって抽象代数学の方法を積極的に取り入れることによってトポロジーへと発展していく道です. この 2 つは同じ曲面といら源から発してきたとは思えないほど,そ の研究のテーマも, また方法も, まったく異なる万向へ向けて独自 な道を進むことになり,1930 年代までにはそれぞれが数学の中で 大きな専門分野をつくるにいたりました。この立脚点の違いは, リ 一マンが目指し, またポアンカレが最初から Analysis situs の研究対象とした高次元の空間へと理論が展開するにつれ, ある意味で はますます顕著なものになったといってもよかったのです.
しかし微分幾何学もトポロジーも, その源はともに曲面といら共通の基盤の上にありました。テーマや方法の違いはあったとしても,直観を支えているこの共通の基盤が変わるといらことはなかったの です. 理論が進めばそれぞれの専門分野内部の分化は進みますが, それと同時に必然的に総合的な視点も求められるようになってきま す.この総合的な視点は 2 次元の曲面を直観の拠り所としながら, すでに高次元の世界を数学の対象として取りこんでいました。それ はリーマンによって予言されていた道でした。やがて微分幾何学も トポロジーもともに包括するような総合的な場が数学の中で育って きました。それは多様体の誕生を意味します。
多様体とは, ひとことでいえば高次元の曲面なのです。多様体は 高次元のもつ抽象性を深く内蔵し, その抽象性が数学の自由な働き を助けます. 多様体は 20 世紀後半になって, 数学全体を支えてい るといってよいほど大きな広がりをもつ場となってきましたが,そ こでは幾何学的な直観が高度に抽象化された概念と結びついて, 豊饒な数学的世界を現出しているのです.
しかしこう話してみても,皆さんは何か霧の彼方にある山を指し 示されている上らで,はっきりしない感じをもたれるでしょら.多様体について本当に理解するためには, 現代数学そのものを理解す ることが必要になってきます。だが,それはこの物語の枓をはるか にこえたものになってしまいます。今日は 6 週間にわたる物語の終章として, 曲面概念の拡張といら視点から, 多様体についてその概念をごく簡単に述べてみることにしましょう,それが現代数学への 接点になればよいがと思っています。

曲面上の局所座標系

いままで話してきた曲面概念の中から,多様体の概念が生まれて くる過程を追らために, まず曲面の表示についての月曜日の話を思 い出すところからはじめよう。
3 次元空間 R 3 R 3 R^(3)\boldsymbol{R}^{3}R3 の中にある曲面 S S SSS を考兑ることにする. S S SSS は十分小さい範囲に限ってみれば,平面の一部分を切り取って曲げたよう なものだから,そのことを月曜日, 17 頁では局所座標の定義とし て採用したのである。それを再記すると次のようになる。
u v u v uvu vuv-座標平面の領域 D D DDD から, S S SSS のある範囲 V V VVV の上への 1 対 1 の 連続写像 φ φ varphi\varphiφ が与立られたとき, { ( u , v ) , φ } { ( u , v ) , φ } {(u,v),varphi}\{(u, v), \varphi\}{(u,v),φ} V V VVV 上の局所座標とい 5. V V VVV の点 P P PPP 亿対し, φ ( u , v ) = P φ ( u , v ) = P varphi(u,v)=P\varphi(u, v)=Pφ(u,v)=P となっているとき, ( u , v ) ( u , v ) (u,v)(u, v)(u,v) P P PPP の局所座標という.
このとき, R 3 R 3 R^(3)\boldsymbol{R}^{3}R3 の座標 ( x , y , z ) ( x , y , z ) (x,y,z)(x, y, z)(x,y,z) を用いて V V VVV の点を表わしておくと
x = x ( u , v ) , y = y ( u , v ) , z = z ( u , v ) x = x ( u , v ) , y = y ( u , v ) , z = z ( u , v ) x=x(u,v),quad y=y(u,v),quad z=z(u,v)x=x(u, v), \quad y=y(u, v), \quad z=z(u, v)x=x(u,v),y=y(u,v),z=z(u,v)
と表わされ, x , y , z x , y , z x,y,zx, y, zx,y,z u , v u , v u,vu, vu,v の連続関数となっている.
曲面 S S SSS の各点のまわりは,このように局所座標によって表わさ れているが,私たちは各点のまわりから,S 全体へと視線を移して, S S SSS がこのよらないくつかの局所座標で完全に“おおわわれている” 状況を把握しておきたい。
そのため説明のしやすさといらこともあって, 局所座標を次のよ らに選ぶことにして抽こう, u v u v uvu vuv-座標平面の単位円の内部を D D DDD, 原
点中心,半径 2 の円の内部を D ~ D ~ tilde(D)\tilde{D}D~ とする. すなわち
D = { ( u , v ) u 2 + v 2 < 1 } , D ~ = { ( u , v ) u 2 + v 2 < 4 } D = ( u , v ) u 2 + v 2 < 1 , D ~ = ( u , v ) u 2 + v 2 < 4 D={(u,v)∣u^(2)+v^(2) < 1},quad tilde(D)={(u,v)∣u^(2)+v^(2) < 4}D=\left\{(u, v) \mid u^{2}+v^{2}<1\right\}, \quad \tilde{D}=\left\{(u, v) \mid u^{2}+v^{2}<4\right\}D={(u,v)u2+v2<1},D~={(u,v)u2+v2<4}
とする、 D ~ D ~ tilde(D)\tilde{D}D~ から S S SSS の中への 1 対 1 連続写像 φ ~ φ ~ tilde(varphi)\tilde{\varphi}φ~ があったとき,私た ちはこの φ ~ φ ~ tilde(varphi)\tilde{\varphi}φ~ D の上だけで考えることにして, φ ( D ) = V φ ( D ) = V varphi(D)=V\varphi(D)=Vφ(D)=V とおき, この φ φ varphi\varphiφ を局所座標写像, V V VVV を局所)座標近傍という.(この上うに φ φ varphi\varphiφ を, D ~ D ~ tilde(D)\tilde{D}D~ 上で定義されている写像 φ ~ φ ~ tilde(varphi)で\tilde{\varphi} て ゙φ~ 包んでおいた方がよいのは, こらしておくと D D DDD の境界のあたりの対応に不安がないからであ る.)
曲面といらとクラインの营や射影平面のようなものもあるけれど, これからはわかりやすくするため曲面 S S SSS R 3 R 3 R^(3)\boldsymbol{R}^{3}R3 の中の有界な閉集合 となっているときを考光ることにする。(すなわち,Sの点はすべ τ R 3 τ R 3 tauR^(3)\tau \boldsymbol{R}^{3}τR3 の原点から一定の距離以内にあって, S S SSS の点列 { P n } P n {P_(n)}\left\{P_{n}\right\}{Pn} n n n rarrn \rightarrown oo\infty のとき 1 点 P P PPP に収束するならば, P S P S P in SP \in SPS となっている.) このと き S S SSS は,有限個の局所座標近傍によって
S = V 1 V 2 V 3 V λ S = V 1 V 2 V 3 V λ S=V_(1)uuV_(2)uuV_(3)uu cdots uuV_(lambda)S=V_{1} \cup V_{2} \cup V_{3} \cup \cdots \cup V_{\lambda}S=V1V2V3Vλ
とおおわれる。この右辺が与兄る局所座標の全体を S S SSS の局所座標系といら。
いまここで一般的な立場でよく用いられる次のような記法を導入 しておこう:
V α V α V_(alpha)V_{\alpha}Vα 上の局所座標を ( u , v ) ( u , v ) (u,v)(u, v)(u,v) と書くかわりに ( x α 1 , x α 2 ) x α 1 , x α 2 (x_(alpha)^(1),x_(alpha)^(2))\left(x_{\alpha}{ }^{1}, x_{\alpha}{ }^{2}\right)(xα1,xα2) と書く.
そうすると V α V α V_(alpha)V_{\alpha}Vα の点は座標 ( x α 1 , x α 2 ) x α 1 , x α 2 (x_(alpha)^(1),x_(alpha)^(2))\left(x_{\alpha}{ }^{1}, x_{\alpha}{ }^{2}\right)(xα1,xα2) によって, また V β V β V_(beta)V_{\beta}Vβ の点は座標 ( x β 1 , x β 2 ) x β 1 , x β 2 (x_(beta)^(1),x_(beta)^(2))\left(x_{\beta}{ }^{1}, x_{\beta}{ }^{2}\right)(xβ1,xβ2) によって記述されることになる。曲面 S S SSS V 1 , V 2 , , V λ V 1 , V 2 , , V λ V_(1),V_(2),cdots,V_(lambda)V_{1}, V_{2}, \cdots, V_{\lambda}V1,V2,,Vλ といら入個の日傘でおおわれているよらなものである。日傘は互い に重なり合っているが,1つの日傘 V α V α V_(alpha)V_{\alpha}Vα におおわれた部分には, 1 つの座標 ( x α 1 , x α 2 ) x α 1 , x α 2 (x_(alpha)^(1),x_(alpha)^(2))\left(x_{\alpha}{ }^{1}, x_{\alpha}{ }^{2}\right)(xα1,xα2) が導入されているのである.
局所座標近傍でおおわれている様子
いま 2 つ座標近傍 V α , V β V α , V β V_(alpha),V_(beta)V_{\alpha}, V_{\beta}Vα,Vβ が交わっているとする. このとき P P P inP \inP V α V β V α V β V_(alpha)nnV_(beta)V_{\alpha} \cap V_{\beta}VαVβ に対し, P P PPP V α V α V_(alpha)V_{\alpha}Vα の点と考えれば ( x α 1 , x α 2 ) x α 1 , x α 2 (x_(alpha)^(1),x_(alpha)^(2))\left(x_{\alpha}{ }^{1}, x_{\alpha}{ }^{2}\right)(xα1,xα2) と表わされ, V β V β V_(beta)V_{\beta}Vβ の点と考光はば ( x β 1 , x β 2 ) x β 1 , x β 2 (x_(beta)^(1),x_(beta)^(2))\left(x_{\beta}{ }^{1}, x_{\beta}{ }^{2}\right)(xβ1,xβ2) と表わされる. したがってここに局所座標の変換を表わす関係
(1) x β 1 = x β 1 ( x α 1 , x α 2 ) , x β 2 = x β 2 ( x α 1 , x α 2 ) (1) x β 1 = x β 1 x α 1 , x α 2 , x β 2 = x β 2 x α 1 , x α 2 {:(1)x_(beta)^(1)=x_(beta)^(1)(x_(alpha)^(1),x_(alpha)^(2))","quadx_(beta)^(2)=x_(beta)^(2)(x_(alpha)^(1),x_(alpha)^(2)):}\begin{equation*} x_{\beta}^{1}=x_{\beta}^{1}\left(x_{\alpha}{ }^{1}, x_{\alpha}{ }^{2}\right), \quad x_{\beta}{ }^{2}=x_{\beta}{ }^{2}\left(x_{\alpha}{ }^{1}, x_{\alpha}{ }^{2}\right) \tag{1} \end{equation*}(1)xβ1=xβ1(xα1,xα2),xβ2=xβ2(xα1,xα2)
が生じてくる.
中この式は V α V β V α V β V_(alpha)nnV_(beta)V_{\alpha} \cap V_{\beta}VαVβ 上で, x β 1 , x β 2 x β 1 , x β 2 x_(beta)^(1),x_(beta)^(2)x_{\beta}{ }^{1}, x_{\beta}{ }^{2}xβ1,xβ2 はそれぞれ x α 1 , x α 2 x α 1 , x α 2 x_(alpha)^(1),x_(alpha)^(2)x_{\alpha}{ }^{1}, x_{\alpha}{ }^{2}xα1,xα2 の関数として表わ されていることを書いたものであるが,記号になれないとわかりにくいか もしれない. 例で説明しておこう. 球面 x 2 + y 2 + z 2 = 1 x 2 + y 2 + z 2 = 1 x^(2)+y^(2)+z^(2)=1x^{2}+y^{2}+z^{2}=1x2+y2+z2=1 z > 0 z > 0 z > 0z>0z>0 の範囲(北半球)は局所座標として ( x , y ) ( x , y ) (x,y)(x, y)(x,y) をることができ, そこで球面は z = z = z=z=z= 1 x 2 y 2 1 x 2 y 2 sqrt(1-x^(2)-y^(2))\sqrt{1-x^{2}-y^{2}}1x2y2 と表わされる. 北半球を V α V α V_(alpha)V_{\alpha}Vα と書き x α 1 = x , x α 2 = y x α 1 = x , x α 2 = y x_(alpha)^(1)=x,x_(alpha)^(2)=yx_{\alpha}{ }^{1}=x, x_{\alpha}{ }^{2}=yxα1=x,xα2=y と書くとい まの記法にしたがったことになる。また東半球 y > 0 y > 0 y > 0y>0y>0 V β V β V_(beta)V_{\beta}Vβ とし,ここで 局所座標を x β 1 = x , x β 2 = z x β 1 = x , x β 2 = z x_(beta)^(1)=x,x_(beta)^(2)=zx_{\beta}{ }^{1}=x, x_{\beta}{ }^{2}=zxβ1=x,xβ2=z と書くと, ここで球面は y = 1 x 2 z 2 y = 1 x 2 z 2 y=sqrt(1-x^(2)-z^(2))y=\sqrt{1-x^{2}-z^{2}}y=1x2z2 と表わ される。 V α V β V α V β V_(alpha)nnV_(beta)V_{\alpha} \cap V_{\beta}VαVβ における局所座標 ( x α 1 , x α 2 ) x α 1 , x α 2 (x_(alpha)^(1),x_(alpha)^(2))\left(x_{\alpha}{ }^{1}, x_{\alpha}{ }^{2}\right)(xα1,xα2) から ( x β 1 , x β 2 ) x β 1 , x β 2 (x_(beta)^(1),x_(beta)^(2))\left(x_{\beta}{ }^{1}, x_{\beta}{ }^{2}\right)(xβ1,xβ2) への変換は
x β 1 = x α 1 x β 2 = 1 ( x α 1 ) 2 ( x α 2 ) 2 x β 1 = x α 1 x β 2 = 1 x α 1 2 x α 2 2 {:[x_(beta)^(1)=x_(alpha)^(1)],[x_(beta)^(2)=sqrt(1-(x_(alpha)^(1))^(2)-(x_(alpha)^(2))^(2))]:}\begin{aligned} & x_{\beta}{ }^{1}=x_{\alpha}{ }^{1} \\ & x_{\beta}{ }^{2}=\sqrt{1-\left(x_{\alpha}{ }^{1}\right)^{2}-\left(x_{\alpha}{ }^{2}\right)^{2}} \end{aligned}xβ1=xα1xβ2=1(xα1)2(xα2)2
と表わされる。
定義 (1)を, V α V β V α V β V_(alpha)nnV_(beta)V_{\alpha} \cap V_{\beta}VαVβ 上で定義された, ( x α 1 , x α 2 ) x α 1 , x α 2 (x_(alpha)^(1),x_(alpha)^(2))\left(x_{\alpha}{ }^{1}, x_{\alpha}{ }^{2}\right)(xα1,xα2) から ( x β 1 x β 1 (x_(beta)^(1):}\left(x_{\beta}{ }^{1}\right.(xβ1, x β 2 ) x β 2 {:x_(beta)^(2))\left.x_{\beta}^{2}\right)xβ2) への局所座標の変換則という.
(1)の右辺は x α 1 , x α 2 x α 1 , x α 2 x_(alpha)^(1),x_(alpha)^(2)x_{\alpha}{ }^{1}, x_{\alpha}{ }^{2}xα1,xα2 について連続な関数である. 同じょうに, V α V β V α V β V_(alpha)nnV_(beta)V_{\alpha} \cap V_{\beta}VαVβ 上で ( x β 1 , x β 2 ) x β 1 , x β 2 (x_(beta)^(1),x_(beta)^(2))\left(x_{\beta}{ }^{1}, x_{\beta}{ }^{2}\right)(xβ1,xβ2) から ( x α 1 , x α 2 ) x α 1 , x α 2 (x_(alpha)^(1),x_(alpha)^(2))\left(x_{\alpha}{ }^{1}, x_{\alpha}{ }^{2}\right)(xα1,xα2) への局所座標の変換則 x α 1 = x α 1 = x_(alpha)^(1)=x_{\alpha}{ }^{1}=xα1= x α 1 ( x β 1 , x β 2 ) , x α 2 = x α 2 ( x β 1 , x β 2 ) x α 1 x β 1 , x β 2 , x α 2 = x α 2 x β 1 , x β 2 x_(alpha)^(1)(x_(beta)^(1),x_(beta)^(2)),x_(alpha)^(2)=x_(alpha)^(2)(x_(beta)^(1),x_(beta)^(2))x_{\alpha}{ }^{1}\left(x_{\beta}{ }^{1}, x_{\beta}{ }^{2}\right), x_{\alpha}{ }^{2}=x_{\alpha}{ }^{2}\left(x_{\beta}{ }^{1}, x_{\beta}{ }^{2}\right)xα1(xβ1,xβ2),xα2=xα2(xβ1,xβ2) を考えることができる.
のすぐ上に述べた例では
x α 1 = x β 1 x α 2 = 1 ( x β 1 ) 2 ( x β 2 ) 2 x α 1 = x β 1 x α 2 = 1 x β 1 2 x β 2 2 {:[x_(alpha)^(1)=x_(beta)^(1)],[x_(alpha)^(2)=sqrt(1-(x_(beta)^(1))^(2)-(x_(beta)^(2))^(2))]:}\begin{aligned} x_{\alpha}{ }^{1} & =x_{\beta}{ }^{1} \\ x_{\alpha}{ }^{2} & =\sqrt{1-\left(x_{\beta}{ }^{1}\right)^{2}-\left(x_{\beta}{ }^{2}\right)^{2}} \end{aligned}xα1=xβ1xα2=1(xβ1)2(xβ2)2
となっている.

位相多様体

曲面をこのように局所座標近傍を,局所座標の変換則を用いて貼 り合わせたものとみると多少話が形式的な方向に向いてくるが,そ のかわり空間的イメージを求めるといらような感じがあまりなくな ってくる.ここで変数の個数を増やしさえすれば,高次元における 曲面の拡張が得られるに違いない. それがこれから述べようとする 位相多様体の定義の意味である。話はこの段階で抽象性を帯びてく る.
いま N N NNN 次元ユークリッド空間 R N R N R^(N)\boldsymbol{R}^{N}RN 考える. R N R N R^(N)\boldsymbol{R}^{N}RN ( x 1 , x 2 , x 1 , x 2 , (x_(1),x_(2),cdots:}\left(x_{1}, x_{2}, \cdots\right.(x1,x2, x N ) x N {:x_(N))\left.x_{N}\right)xN) といら N N NNN 個の実数の組全体のつくる集合 x = ( x 1 , x 2 , , x N ) x = x 1 , x 2 , , x N x=(x_(1),x_(2),cdots,x_(N))x=\left(x_{1}, x_{2}, \cdots, x_{N}\right)x=(x1,x2,,xN) y = ( y 1 , y 2 , , y N ) y = y 1 , y 2 , , y N y=(y_(1),y_(2),cdots,y_(N))y=\left(y_{1}, y_{2}, \cdots, y_{N}\right)y=(y1,y2,,yN) の距離を ( x 1 y 1 ) 2 + + ( x N y N ) 2 x 1 y 1 2 + + x N y N 2 sqrt((x_(1)-y_(1))^(2)+cdots+(x_(N)-y_(N))^(2))\sqrt{\left(x_{1}-y_{1}\right)^{2}+\cdots+\left(x_{N}-y_{N}\right)^{2}}(x1y1)2++(xNyN)2 で与えたも のである.
定義 M M MMM R N R N R^(N)\boldsymbol{R}^{N}RN の有界な閉集合とする。自然数 n ( < N ) n ( < N ) n( < N)n(<N)n(<N) を 適当にとると, M M MMM の各点のまわりに, R n R n R^(n)\boldsymbol{R}^{n}Rn の開集合と 1 対 1 に 連続に対応する範曲があるとき, M M MMM n n n\boldsymbol{n}n 次元の位相多様体と いう.
M M MMM n n nnn 次元の位相多様体とする. このとき M M MMM は各点のまわりで 局所座標近傍をもつが, M M MMM は有限個のこのような座標近傍でおお らことができる。それは M M MMM R N R N R^(N)\boldsymbol{R}^{N}RN の有界な閉集合と仮定していた からである。曲面のときと同じように,この座標近傍は次のように とっておいた方がつごらがよい。
いま R n R n R^(n)\boldsymbol{R}^{n}Rn の単位球の内部を D n D n D^(n)D^{n}Dn ,原点中心,半径 2 の球の内部を D ~ n D ~ n tilde(D)^(n)\tilde{D}^{n}D~n とする:
D n = { ( x 1 , x 2 , , x n ) x 1 2 + x 2 2 + + x n 2 < 1 } D ~ n = { ( x 1 , x 2 , , x n ) x 1 2 + x 2 2 + + x n 2 < 4 } D n = x 1 , x 2 , , x n x 1 2 + x 2 2 + + x n 2 < 1 D ~ n = x 1 , x 2 , , x n x 1 2 + x 2 2 + + x n 2 < 4 {:[D^(n)={(x_(1),x_(2),cdots,x_(n))∣x_(1)^(2)+x_(2)^(2)+cdots+x_(n)^(2) < 1}],[ tilde(D)^(n)={(x_(1),x_(2),cdots,x_(n))∣x_(1)^(2)+x_(2)^(2)+cdots+x_(n)^(2) < 4}]:}\begin{aligned} & D^{n}=\left\{\left(x_{1}, x_{2}, \cdots, x_{n}\right) \mid x_{1}{ }^{2}+x_{2}{ }^{2}+\cdots+x_{n}{ }^{2}<1\right\} \\ & \tilde{D}^{n}=\left\{\left(x_{1}, x_{2}, \cdots, x_{n}\right) \mid x_{1}{ }^{2}+x_{2}{ }^{2}+\cdots+x_{n}{ }^{2}<4\right\} \end{aligned}Dn={(x1,x2,,xn)x12+x22++xn2<1}D~n={(x1,x2,,xn)x12+x22++xn2<4}
このとき, D ~ n D ~ n tilde(D)^(n)\tilde{D}^{n}D~n から M M MMM の中への 1 対 1 連続写像 φ ~ , D n φ ~ , D n tilde(varphi)を,D^(n)\tilde{\varphi} を, D^{n}φ~,Dn 上に限っ て考えたものを φ φ varphi\varphiφ とする。このとき
φ ( D n ) = V φ D n = V varphi(D^(n))=V\varphi\left(D^{n}\right)=Vφ(Dn)=V
を, M M MMM の(局所)座標近傍という. P V P V P in VP \in VPV に対しては, D n D n D^(n)D^{n}Dn の点 ( x 1 x 1 (x_(1):}\left(x_{1}\right.(x1, x 2 , , x n ) x 2 , , x n {:x_(2),cdots,x_(n))\left.x_{2}, \cdots, x_{n}\right)x2,,xn)
φ ( x 1 , x 2 , , x n ) = P φ x 1 , x 2 , , x n = P varphi(x_(1),x_(2),cdots,x_(n))=P\varphi\left(x_{1}, x_{2}, \cdots, x_{n}\right)=Pφ(x1,x2,,xn)=P
をみたすものがただ 1 つ存在している。この ( x 1 , x 2 , , x n ) x 1 , x 2 , , x n (x_(1),x_(2),cdots,x_(n))\left(x_{1}, x_{2}, \cdots, x_{n}\right)(x1,x2,,xn) P P PPP を 表わす V V VVV 上の局所座標として採用するのだが,記号を区別するた めに添数 1 , 2 , , n 1 , 2 , , n 1,2,cdots,n1,2, \cdots, n1,2,,n を上につけて, このとき P P PPP の局所座標は ( x 1 x 1 (x^(1):}\left(x^{1}\right.(x1, x 2 , , x n ) x 2 , , x n {:x^(2),cdots,x^(n))\left.x^{2}, \cdots, x^{n}\right)x2,,xn) であるといらことにしょう.
M M MMM は有限個のこのような局所座標でおおらことができる:
(2) M = V 1 V 2 V λ (2) M = V 1 V 2 V λ {:(2)M=V_(1)uuV_(2)uu cdots uuV_(lambda):}\begin{equation*} M=V_{1} \cup V_{2} \cup \cdots \cup V_{\lambda} \tag{2} \end{equation*}(2)M=V1V2Vλ
V α V α V_(alpha)V_{\alpha}Vα 上の局所座標を,これも曲面のときと同じょうに α α alpha\alphaα を下添数 としてつけて
(3) ( x α 1 , x α 2 , , x α n ) (3) x α 1 , x α 2 , , x α n {:(3)(x_(alpha)^(1),x_(alpha)^(2),cdots,x_(alpha)^(n)):}\begin{equation*} \left(x_{\alpha}{ }^{1}, x_{\alpha}{ }^{2}, \cdots, x_{\alpha}{ }^{n}\right) \tag{3} \end{equation*}(3)(xα1,xα2,,xαn)
と表わし,どこで考えているかをはっきりさせることにしよう。
V α V β V α V β V_(alpha)nnV_(beta)!=O/V_{\alpha} \cap V_{\beta} \neq \varnothingVαVβ のときには, V α V β V α V β V_(alpha)nnV_(beta)V_{\alpha} \cap V_{\beta}VαVβ 上で α α alpha\alphaα 座標から β β beta\betaβ 座標への局所座標の変換則
x β 1 = x β 1 ( x α 1 , x α 2 , , x α n ) x β n = x β n ( x α 1 , x α 2 , , x α n ) x β 1 = x β 1 x α 1 , x α 2 , , x α n x β n = x β n x α 1 , x α 2 , , x α n {:[x_(beta)^(1)=x_(beta)^(1)(x_(alpha)^(1),x_(alpha)^(2),cdots,x_(alpha)^(n))],[cdots cdots cdots],[x_(beta)^(n)=x_(beta)^(n)(x_(alpha)^(1),x_(alpha)^(2),cdots,x_(alpha)^(n))]:}\begin{gathered} x_{\beta}{ }^{1}=x_{\beta}{ }^{1}\left(x_{\alpha}{ }^{1}, x_{\alpha}{ }^{2}, \cdots, x_{\alpha}{ }^{n}\right) \\ \cdots \cdots \cdots \\ x_{\beta}{ }^{n}=x_{\beta}{ }^{n}\left(x_{\alpha}{ }^{1}, x_{\alpha}{ }^{2}, \cdots, x_{\alpha}{ }^{n}\right) \end{gathered}xβ1=xβ1(xα1,xα2,,xαn)xβn=xβn(xα1,xα2,,xαn)
が成り立っている。これらは x α 1 , x α 2 , , x α n x α 1 , x α 2 , , x α n x_(alpha)^(1),x_(alpha)^(2),cdots,x_(alpha)^(n)x_{\alpha}{ }^{1}, x_{\alpha}{ }^{2}, \cdots, x_{\alpha}{ }^{n}xα1,xα2,,xαn の連続関数となってい る. おのおのの座標近傍 V α V α V_(alpha)V_{\alpha}Vα 上に局所座標 (3) が与えられていると き,(2)を M M MMM の局所座標系といら。

滑らかな多様体

位相多様体の定義は, 曲面の中から局所座標といら考之を抽出し てきて,眼を高次元へと向けるとごく自然に生まれてくるものだが, この概念の中にはたと光ば R 1000 R 1000 R^(1000)\boldsymbol{R}^{1000}R1000 の中の 382 次元の位相多様体など といらものも含まれてくるようになって, 何か范漠とした世界へと 誘われていくようなものがある。位相多様体の定義の形は具象的な ものを指し示しているようであるが,含まれている内容は抽象的な ものである。 さらに 1 対 1 の連続写像といら概念が捉兄どころがな い. 連続性の概念は, 積分のような総合的な視点へと移行していく ときにはごく自然なものとなってくるのだが(第 3 週参照), 各点の まわりの幾何学的な性質を調べようとするときには, 一般的には粗寸ぎるのである.1 次元の連続曲線でも尖点がでたり,鋭い波が繰 り返し無限に波打って 1 点に近づいていくような状況が扣きるが, このよらな状況は高次元では複合されてさらに複雑になっているに 違いない、それを確実に捉之,記述する手段はほとんどないといっ てよいのである.
そのため私たちは C C C^(oo)C^{\infty}C-級の正則な曲面の概念を一般化すること を考完てみよう,正則な曲面は私たちがふだん見なれている曲面で あるし,また水曜日,木曜日とみてきたよらに,そこにはいろいろ な解析的な方法を導入して調べていくことができる。したがってこ れは今の段階ではあくまで予想にすぎないけれど,正則な曲面の高
次元への一般化は解析を通して豊かな数学の宝庫となって, 位相多様体のもつ空漠とした感じを取り除いてくれるに違いない。
そのためまず n n nnn 次元の位相多様体 M M MMM を考え, M M MMM の局所座標系を
{ M = V 1 V 2 V λ 局所座標写像 φ α : D V α M = V 1 V 2 V λ  局所座標写像  φ α : D V α {[M=V_(1)uuV_(2)uu cdots uuV_(lambda)],[" 局所座標写像 "varphi_(alpha):D rarrV_(alpha)]:}\left\{\begin{array}{l} M=V_{1} \cup V_{2} \cup \cdots \cup V_{\lambda} \\ \text { 局所座標写像 } \varphi_{\alpha}: D \rightarrow V_{\alpha} \end{array}\right.{M=V1V2Vλ 局所座標写像 φα:DVα
とする.この V α V α V_(alpha)V_{\alpha}Vα 上の局所座標を与える写像を前のよらに
D ( x 1 , x 2 , , x n ) φ α ( x α 1 , x α 2 , , x α n ) V α D x 1 , x 2 , , x n φ α x α 1 , x α 2 , , x α n V α D∋(x_(1),x_(2),cdots,x_(n))rarr"varphi_(alpha)"(x_(alpha)^(1),x_(alpha)^(2),cdots,x_(alpha)^(n))inV_(alpha)D \ni\left(x_{1}, x_{2}, \cdots, x_{n}\right) \xrightarrow{\varphi_{\alpha}}\left(x_{\alpha}{ }^{1}, x_{\alpha}{ }^{2}, \cdots, x_{\alpha}{ }^{n}\right) \in V_{\alpha}D(x1,x2,,xn)φα(xα1,xα2,,xαn)Vα
と表わす. V α M V α M V_(alpha)sub MV_{\alpha} \subset MVαM R N R N R^(N)\boldsymbol{R}^{N}RN に含まれている集合なのだから, R N R N R^(N)\boldsymbol{R}^{N}RN の座標を区別するために大文字で
X 1 , X 2 , , X N X 1 , X 2 , , X N X_(1),X_(2),cdots,X_(N)X_{1}, X_{2}, \cdots, X_{N}X1,X2,,XN
と表わすことにすると, φ α φ α varphi_(alpha)\varphi_{\alpha}φα D D DDD から R N R N R^(N)\boldsymbol{R}^{N}RN の写像と考えて
X 1 ( x 1 , x 2 , , x n ) , X 2 ( x 1 , x 2 , , x n ) , , X N ( x 1 , x 2 , , x n ) X 1 x 1 , x 2 , , x n , X 2 x 1 , x 2 , , x n , , X N x 1 , x 2 , , x n X_(1)(x_(1),x_(2),cdots,x_(n)),X_(2)(x_(1),x_(2),cdots,x_(n)),cdots,X_(N)(x_(1),x_(2),cdots,x_(n))X_{1}\left(x_{1}, x_{2}, \cdots, x_{n}\right), X_{2}\left(x_{1}, x_{2}, \cdots, x_{n}\right), \cdots, X_{N}\left(x_{1}, x_{2}, \cdots, x_{n}\right)X1(x1,x2,,xn),X2(x1,x2,,xn),,XN(x1,x2,,xn)
と表わされる。この ( x 1 , x 2 , , x n ) x 1 , x 2 , , x n (x_(1),x_(2),cdots,x_(n))\left(x_{1}, x_{2}, \cdots, x_{n}\right)(x1,x2,,xn) に関する N N NNN 個の関数が C C C^(oo)C^{\infty}C-級 の関数のとき, φ α φ α varphi_(alpha)\varphi_{\alpha}φα を滑らかな局所座標写像といら.
』これから n n nnn 変数の関数のことを少し述べるが,これになれない読者 は 2 変数関数からの類似で大体の感じをつかんでいただきたい.
さて, 水曜日に与えた曲面の正則性の条件は, 局所座標を与える パラメータ u , v u , v u,vu, vu,v の走る u u uuu 曲線, v v vvv 曲線の接ベクトルが各点で 1 次独立であるといらことであった。対応する条件を述べよらとすると 次のようになるだろら。
いま V α V α V_(alpha)V_{\alpha}Vα 上の 1 点 P = ( a α 1 , a α 2 , , a α n ) P = a α 1 , a α 2 , , a α n P=(a_(alpha)^(1),a_(alpha)^(2),cdots,a_(alpha)^(n))P=\left(a_{\alpha}{ }^{1}, a_{\alpha}{ }^{2}, \cdots, a_{\alpha}{ }^{n}\right)P=(aα1,aα2,,aαn) を考える.このとき R N R N R^(N)\boldsymbol{R}^{N}RN の中の n n nnn 個のべクトル
e α 1 = ( X 1 x α 1 ( P ) , X 2 x α 1 ( P ) , , X N x α 1 ( P ) ) e α 2 = ( X 1 x α 2 ( P ) , X 2 x α 2 ( P ) , , X N x α 2 ( P ) ) e α n = ( X 1 x α n ( P ) , X 2 x α n ( P ) , , X N x α n ( P ) ) e α 1 = X 1 x α 1 ( P ) , X 2 x α 1 ( P ) , , X N x α 1 ( P ) e α 2 = X 1 x α 2 ( P ) , X 2 x α 2 ( P ) , , X N x α 2 ( P ) e α n = X 1 x α n ( P ) , X 2 x α n ( P ) , , X N x α n ( P ) {:[e_(alpha)^(1)=((delX_(1))/(delx_(alpha)^(1))(P),(delX_(2))/(delx_(alpha)^(1))(P),cdots,(delX_(N))/(delx_(alpha)^(1))(P))],[e_(alpha)^(2)=((delX_(1))/(delx_(alpha)^(2))(P),(delX_(2))/(delx_(alpha)^(2))(P),cdots,(delX_(N))/(delx_(alpha)^(2))(P))],[cdots cdots cdots],[e_(alpha)^(n)=((delX_(1))/(delx_(alpha)^(n))(P),(delX_(2))/(delx_(alpha)^(n))(P),cdots,(delX_(N))/(delx_(alpha)^(n))(P))]:}\begin{gathered} \boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{1}=\left(\frac{\partial X_{1}}{\partial x_{\alpha}{ }^{1}}(P), \frac{\partial X_{2}}{\partial x_{\alpha}{ }^{1}}(P), \cdots, \frac{\partial X_{N}}{\partial x_{\alpha}{ }^{1}}(P)\right) \\ \boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{2}=\left(\frac{\partial X_{1}}{\partial x_{\alpha}{ }^{2}}(P), \frac{\partial X_{2}}{\partial x_{\alpha}{ }^{2}}(P), \cdots, \frac{\partial X_{N}}{\partial x_{\alpha}{ }^{2}}(P)\right) \\ \cdots \cdots \cdots \\ \boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{n}=\left(\frac{\partial X_{1}}{\partial x_{\alpha}{ }^{n}}(P), \frac{\partial X_{2}}{\partial x_{\alpha}{ }^{n}}(P), \cdots, \frac{\partial X_{N}}{\partial x_{\alpha}{ }^{n}}(P)\right) \end{gathered}eα1=(X1xα1(P),X2xα1(P),,XNxα1(P))eα2=(X1xα2(P),X2xα2(P),,XNxα2(P))eαn=(X1xαn(P),X2xαn(P),,XNxαn(P))
は, それぞれ x α 1 x α 1 x_(alpha)^(1)x_{\alpha}{ }^{1}xα1-曲線, x α 2 x α 2 x_(alpha)^(2)x_{\alpha}{ }^{2}xα2-曲線, , , x α n , , x α n ,cdots,x_(alpha)^(n), \cdots, x_{\alpha}{ }^{n},,xαn-曲線の点 P P PPP におけ接 ベクトルとなっている。この e α 1 , e α 2 , , e α n e α 1 , e α 2 , , e α n e_(alpha)^(1),e_(alpha)^(2),cdots,e_(alpha)^(n)\boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{1}, \boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{2}, \cdots, \boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{n}eα1,eα2,,eαn が各点 P P PPP で 1 次独立 となっているといら条件が,曲面の正則性に対応する条件である。 そこで次の定義をおく。
定義 n n nnn 次元の位相多様体 M M MMM の局所座標写像が滑らかで,各 V α V α V_(alpha)V_{\alpha}Vα 上の各点で e α 1 , e α 2 , , e α n e α 1 , e α 2 , , e α n e_(alpha)^(1),e_(alpha)^(2),cdots,e_(alpha)^(n)\boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{1}, \boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{2}, \cdots, \boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{n}eα1,eα2,,eαn がつねに 1 次独立のとき, M M MMM を滑らかな多様体といら。
したがって n n nnn 次元の滑らかな多様体とは, R N R N R^(N)\boldsymbol{R}^{N}RN の “ n n nnn 次元曲面” で,各点で n n nnn 個の独立な接線方向に “方向指示”を与えるべクトル ( e α 1 , e α 2 , , e α n ) e α 1 , e α 2 , , e α n (e_(alpha)^(1),e_(alpha)^(2),cdots,e_(alpha)^(n))\left(\boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{1}, \boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{2}, \cdots, \boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{n}\right)(eα1,eα2,,eαn) が存在しているようなものである.

接ベクトル

n n nnn 次元の滑らかな多様体 M M MMM 上には, 各点 P P PPP で “方向指示” ( e α 1 e α 1 (e_(alpha)^(1):}\left(\boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{1}\right.(eα1, e α 2 , , e α n ) e α 2 , , e α n {:e_(alpha)^(2),cdots,e_(alpha)^(n))\left.\boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{2}, \cdots, \boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{n}\right)eα2,,eαn) があるといら状況は大体納得していただけると思うが,
P V α V β P V α V β P inV_(alpha)nnV_(beta)P \in V_{\alpha} \cap V_{\beta}PVαVβ
のとき, V β V β V_(beta)V_{\beta}Vβ 上の局所座標方向の接線が示す “方向指示” ( e β 1 , e β 2 e β 1 , e β 2 (e_(beta)^(1),e_(beta)^(2):}\left(\boldsymbol{e}_{\beta}{ }^{1}, \boldsymbol{e}_{\beta}{ }^{2}\right.(eβ1,eβ2, , e β n ) , e β n {: cdots,e_(beta)^(n))\left.\cdots, \boldsymbol{e}_{\beta}{ }^{n}\right),eβn) は, 当然 V α V α V_(alpha)V_{\alpha}Vα 上で考えた ( e α 1 , e α 2 , , e α n ) e α 1 , e α 2 , , e α n (e_(alpha)^(1),e_(alpha)^(2),cdots,e_(alpha)^(n))\left(\boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{1}, \boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{2}, \cdots, \boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{n}\right)(eα1,eα2,,eαn) と別の方向を指 し示しているだろう, 1 点 P P PPP に护けるこ 2 つの n n nnn 個のベクトル
(4) ( e α 1 , e α 2 , , e α n ) , ( e β 1 , e β 2 , , e β n ) (4) e α 1 , e α 2 , , e α n , e β 1 , e β 2 , , e β n {:(4)(e_(alpha)^(1),e_(alpha)^(2),cdots,e_(alpha)^(n))","quad(e_(beta)^(1),e_(beta)^(2),cdots,e_(beta)^(n)):}\begin{equation*} \left(\boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{1}, \boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{2}, \cdots, \boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{n}\right), \quad\left(\boldsymbol{e}_{\beta}{ }^{1}, \boldsymbol{e}_{\beta}{ }^{2}, \cdots, \boldsymbol{e}_{\beta}{ }^{n}\right) \tag{4} \end{equation*}(4)(eα1,eα2,,eαn),(eβ1,eβ2,,eβn)
の関係はどんな式で与えられているのだろらか.
一般の n n nnn 次元で表わすと記号が複雑になってわかりにくいかも しれないので, M M MMM R 3 R 3 R^(3)\boldsymbol{R}^{3}R3 の中の正則曲面(2次元!)の場合にこの記
号にしたがって表わして,2つのベクトルの組(4)の関係を調べて みよう。このときは
(5) e α 1 = ( X 1 x α 1 , X 2 x α 1 , X 3 x α 1 ) , e α 2 = ( X 1 x α 2 , X 2 x α 2 , X 3 x α 2 ) (5) e α 1 = X 1 x α 1 , X 2 x α 1 , X 3 x α 1 , e α 2 = X 1 x α 2 , X 2 x α 2 , X 3 x α 2 {:(5)e_(alpha)^(1)=((delX_(1))/(delx_(alpha)^(1)),(delX_(2))/(delx_(alpha)^(1)),(delX_(3))/(delx_(alpha)^(1)))","quade_(alpha)^(2)=((delX_(1))/(delx_(alpha)^(2)),(delX_(2))/(delx_(alpha)^(2)),(delX_(3))/(delx_(alpha)^(2))):}\begin{equation*} \boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{1}=\left(\frac{\partial X_{1}}{\partial x_{\alpha}{ }^{1}}, \frac{\partial X_{2}}{\partial x_{\alpha}{ }^{1}}, \frac{\partial X_{3}}{\partial x_{\alpha}{ }^{1}}\right), \quad \boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{2}=\left(\frac{\partial X_{1}}{\partial x_{\alpha}{ }^{2}}, \frac{\partial X_{2}}{\partial x_{\alpha}{ }^{2}}, \frac{\partial X_{3}}{\partial x_{\alpha}{ }^{2}}\right) \tag{5} \end{equation*}(5)eα1=(X1xα1,X2xα1,X3xα1),eα2=(X1xα2,X2xα2,X3xα2)
(5) e β 1 = ( X 1 x β 1 , X 2 x β 1 , X 3 x β 1 ) , e β 2 = ( X 1 x β 2 , X 2 x β 2 , X 3 x β 2 ) (5) e β 1 = X 1 x β 1 , X 2 x β 1 , X 3 x β 1 , e β 2 = X 1 x β 2 , X 2 x β 2 , X 3 x β 2 {:(5)e_(beta)^(1)=((delX_(1))/(delx_(beta)^(1)),(delX_(2))/(delx_(beta)^(1)),(delX_(3))/(delx_(beta)^(1)))","quade_(beta)^(2)=((delX_(1))/(delx_(beta)^(2)),(delX_(2))/(delx_(beta)^(2)),(delX_(3))/(delx_(beta)^(2))):}\begin{equation*} \boldsymbol{e}_{\beta}{ }^{1}=\left(\frac{\partial X_{1}}{\partial x_{\beta}{ }^{1}}, \frac{\partial X_{2}}{\partial x_{\beta}{ }^{1}}, \frac{\partial X_{3}}{\partial x_{\beta}{ }^{1}}\right), \quad \boldsymbol{e}_{\beta}{ }^{2}=\left(\frac{\partial X_{1}}{\partial x_{\beta}{ }^{2}}, \frac{\partial X_{2}}{\partial x_{\beta}{ }^{2}}, \frac{\partial X_{3}}{\partial x_{\beta}{ }^{2}}\right) \tag{5} \end{equation*}(5)eβ1=(X1xβ1,X2xβ1,X3xβ1),eβ2=(X1xβ2,X2xβ2,X3xβ2)
を考えることになる. x β i = x β i ( x α 1 , x α 2 ) ( i = 1 , 2 ) x β i = x β i x α 1 , x α 2 ( i = 1 , 2 ) x_(beta)^(i)=x_(beta)^(i)(x_(alpha)^(1),x_(alpha)^(2))(i=1,2)x_{\beta}{ }^{i}=x_{\beta}{ }^{i}\left(x_{\alpha}{ }^{1}, x_{\alpha}{ }^{2}\right)(i=1,2)xβi=xβi(xα1,xα2)(i=1,2) といら局所座標の 変換則を使ってみると,たとえば e β 1 e β 1 e_(beta)^(1)\boldsymbol{e}_{\beta}{ }^{1}eβ1 の第 1 成分
X 1 x β 1 X 1 x β 1 (delX_(1))/(delx_(beta)^(1))\frac{\partial X_{1}}{\partial x_{\beta}{ }^{1}}X1xβ1
は,
X 1 x β 1 = X 1 x α 1 x α 1 x β 1 + X 1 x α 2 x α 2 x β 1 = j = 1 2 X 1 x α j x α j x β 1 X 1 x β 1 = X 1 x α 1 x α 1 x β 1 + X 1 x α 2 x α 2 x β 1 = j = 1 2 X 1 x α j x α j x β 1 (delX_(1))/(delx_(beta)^(1))=(delX_(1))/(delx_(alpha)^(1))(delx_(alpha)^(1))/(delx_(beta)^(1))+(delX_(1))/(delx_(alpha)^(2))(delx_(alpha)^(2))/(delx_(beta)^(1))=sum_(j=1)^(2)(delX_(1))/(delx_(alpha)^(j))(delx_(alpha)^(j))/(delx_(beta)^(1))\frac{\partial X_{1}}{\partial x_{\beta}{ }^{1}}=\frac{\partial X_{1}}{\partial x_{\alpha}{ }^{1}} \frac{\partial x_{\alpha}{ }^{1}}{\partial x_{\beta}{ }^{1}}+\frac{\partial X_{1}}{\partial x_{\alpha}{ }^{2}} \frac{\partial x_{\alpha}{ }^{2}}{\partial x_{\beta}{ }^{1}}=\sum_{j=1}^{2} \frac{\partial X_{1}}{\partial x_{\alpha}{ }^{j}} \frac{\partial x_{\alpha}{ }^{j}}{\partial x_{\beta}{ }^{1}}X1xβ1=X1xα1xα1xβ1+X1xα2xα2xβ1=j=12X1xαjxαjxβ1
となる。これと同様の式が, X 2 , X 3 X 2 , X 3 X_(2),X_(3)X_{2}, X_{3}X2,X3 を微分した式で成り立つので, (5)と ( 5 ) ( 5 ) (5)^(')を(5)^{\prime} を(5) 使ってべクトル記号でまとめると
e β 1 = j = 1 2 x α j x β 1 e α j e β 1 = j = 1 2 x α j x β 1 e α j e_(beta)^(1)=sum_(j=1)^(2)(delx_(alpha)^(j))/(delx_(beta)^(1))e_(alpha)^(j)\boldsymbol{e}_{\beta}{ }^{1}=\sum_{j=1}^{2} \frac{\partial x_{\alpha}{ }^{j}}{\partial x_{\beta}{ }^{1}} \boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{j}eβ1=j=12xαjxβ1eαj
と表わされることがわかる. 同様に
e β 2 = j = 1 2 x α j x β 2 e α j e β 2 = j = 1 2 x α j x β 2 e α j e_(beta)^(2)=sum_(j=1)^(2)(delx_(alpha)^(j))/(delx_(beta)^(2))e_(alpha)^(j)\boldsymbol{e}_{\beta}^{2}=\sum_{j=1}^{2} \frac{\partial x_{\alpha}{ }^{j}}{\partial x_{\beta}{ }^{2}} \boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{j}eβ2=j=12xαjxβ2eαj
が成り立つ.
このことからの類推で,(4)の間に一般に座標変換によってひき 起こされる関係式
(6) e β i = j = 1 n x α j x β i e α j ( i = 1 , 2 , , n ) (6) e β i = j = 1 n x α j x β i e α j ( i = 1 , 2 , , n ) {:(6)e_(beta)^(i)=sum_(j=1)^(n)(delx_(alpha)^(j))/(delx_(beta)^(i))e_(alpha)^(j)quad(i=1","2","cdots","n):}\begin{equation*} \boldsymbol{e}_{\beta}{ }^{i}=\sum_{j=1}^{n} \frac{\partial x_{\alpha}{ }^{j}}{\partial x_{\beta}{ }^{i}} \boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{j} \quad(i=1,2, \cdots, n) \tag{6} \end{equation*}(6)eβi=j=1nxαjxβieαj(i=1,2,,n)
が成り立つことがわかるだろら。
↔これに似たような変換式が微分幾何学の本(とくにテンソルを書いた 部分)や多様体の本を見ると,たくさん出てきて辟易させるのである。こ の式は
J ( x β / x α ) = ( x β 1 x α 1 x β 1 x α n x β n x α 1 x β n x α n ) J x β / x α = x β 1 x α 1 x β 1 x α n x β n x α 1 x β n x α n J(x_(beta)//x_(alpha))=([(delx_(beta)^(1))/(delx_(alpha)^(1)),cdots,(delx_(beta)^(1))/(delx_(alpha)^(n))],[,cdots,],[(delx_(beta)^(n))/(delx_(alpha)^(1)),cdots,(delx_(beta)^(n))/(delx_(alpha)^(n))])J\left(x_{\beta} / x_{\alpha}\right)=\left(\begin{array}{ccc} \frac{\partial x_{\beta}{ }^{1}}{\partial x_{\alpha}{ }^{1}} & \cdots & \frac{\partial x_{\beta}{ }^{1}}{\partial x_{\alpha}{ }^{n}} \\ & \cdots & \\ \frac{\partial x_{\beta}{ }^{n}}{\partial x_{\alpha}{ }^{1}} & \cdots & \frac{\partial x_{\beta}{ }^{n}}{\partial x_{\alpha}{ }^{n}} \end{array}\right)J(xβ/xα)=(xβ1xα1xβ1xαnxβnxα1xβnxαn)
として n n nnn 次の行列(ヤコビ行列!)を導入しておくと,
J ( x β / x α ) 1 = J ( x α / x β ) J x β / x α 1 = J x α / x β J(x_(beta)//x_(alpha))^(-1)=J(x_(alpha)//x_(beta))J\left(x_{\beta} / x_{\alpha}\right)^{-1}=J\left(x_{\alpha} / x_{\beta}\right)J(xβ/xα)1=J(xα/xβ)
であって
( e β 1 , , e β n ) = ( e α 1 , , e α n ) J ( x β / x α ) 1 e β 1 , , e β n = e α 1 , , e α n J x β / x α 1 (e_(beta)^(1),cdots,e_(beta)^(n))=(e_(alpha)^(1),cdots,e_(alpha)^(n))J(x_(beta)//x_(alpha))^(-1)\left(\boldsymbol{e}_{\beta}{ }^{1}, \cdots, \boldsymbol{e}_{\beta}{ }^{n}\right)=\left(\boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{1}, \cdots, \boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{n}\right) J\left(x_{\beta} / x_{\alpha}\right)^{-1}(eβ1,,eβn)=(eα1,,eαn)J(xβ/xα)1
となってずいぶん見やすくなる. 線形代数の考え方が, 高次元では非常に 有効に使われてくるのである。
P V α P V α P inV_(alpha)P \in V_{\alpha}PVα において, n n nnn 個の 1 次独立なべクトル { e α 1 ( P ) , e α 2 ( P ) e α 1 ( P ) , e α 2 ( P ) {e_(alpha)^(1)(P),e_(alpha)^(2)(P):}\left\{\boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{1}(P), \boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{2}(P)\right.{eα1(P),eα2(P), , e α n ( P ) } , e α n ( P ) {: cdots,e_(alpha)^(n)(P)}\left.\cdots, \boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{n}(P)\right\},eαn(P)} によってただ 1 通りに表わされる R N R N R^(N)\boldsymbol{R}^{N}RN のベクトル
(7) ξ α 1 e α 1 ( P ) + ξ α 2 e α 2 ( P ) + + ξ α n e α n ( P ) (7) ξ α 1 e α 1 ( P ) + ξ α 2 e α 2 ( P ) + + ξ α n e α n ( P ) {:(7)xi_(alpha)^(1)e_(alpha)^(1)(P)+xi_(alpha)^(2)e_(alpha)^(2)(P)+cdots+xi_(alpha)^(n)e_(alpha)^(n)(P):}\begin{equation*} \xi_{\alpha}{ }^{1} \boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{1}(P)+\xi_{\alpha}{ }^{2} \boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{2}(P)+\cdots+\xi_{\alpha}{ }^{n} \boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{n}(P) \tag{7} \end{equation*}(7)ξα1eα1(P)+ξα2eα2(P)++ξαneαn(P)
を,点 P P PPP における接ベクトルということにする。
いま点 P P PPP が, V α V α V_(alpha)V_{\alpha}Vα V β V β V_(beta)V_{\beta}Vβ に共通に含まれているとき, P P PPP における V β V β V_(beta)V_{\beta}Vβ 上の接ベクトル—それは e β i ( i = 1 , 2 , , n ) e β i ( i = 1 , 2 , , n ) e_(beta)^(i)(i=1,2,cdots,n)\boldsymbol{e}_{\beta}{ }^{i}(i=1,2, \cdots, n)eβi(i=1,2,,n) の 1 次結合で表わ されている一は,(6)を見ると, e α j ( j = 1 , 2 , , n ) e α j ( j = 1 , 2 , , n ) e_(alpha)^(j)(j=1,2,cdots,n)\boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{j}(j=1,2, \cdots, n)eαj(j=1,2,,n) の 1 次結合と して(7)の形に表わされることがわかる。この関係をみてみるため, V β V β V_(beta)V_{\beta}Vβ 上の点 P P PPP における接ベクトル
a = ξ β 1 e β 1 + ξ β 2 e β 2 + + ξ β n e β n = i = 1 n ξ β i e β i a = ξ β 1 e β 1 + ξ β 2 e β 2 + + ξ β n e β n = i = 1 n ξ β i e β i a=xi_(beta)^(1)e_(beta)^(1)+xi_(beta)^(2)e_(beta)^(2)+cdots+xi_(beta^(n))e_(beta)^(n)=sum_(i=1)^(n)xi_(beta)^(i)e_(beta)^(i)\boldsymbol{a}=\xi_{\beta}{ }^{1} \boldsymbol{e}_{\beta}{ }^{1}+\xi_{\beta}{ }^{2} \boldsymbol{e}_{\beta}{ }^{2}+\cdots+\xi_{\beta^{n}} \boldsymbol{e}_{\beta}{ }^{n}=\sum_{i=1}^{n} \xi_{\beta}{ }^{i} \boldsymbol{e}_{\beta}{ }^{i}a=ξβ1eβ1+ξβ2eβ2++ξβneβn=i=1nξβieβi
に対し,(6)を用いると
a = i = 1 n ξ β i e β i = i = 1 n j = 1 n x α j x β i ξ β i e α j = j = 1 n ( i = 1 n x α i x β j ξ β j ) e α i a = i = 1 n ξ β i e β i = i = 1 n j = 1 n x α j x β i ξ β i e α j = j = 1 n i = 1 n x α i x β j ξ β j e α i a=sum_(i=1)^(n)xi_(beta)^(i)e_(beta)^(i)=sum_(i=1)^(n)sum_(j=1)^(n)(delx_(alpha)^(j))/(delx_(beta)^(i))xi_(beta)^(i)e_(alpha)^(j)=sum_(j=1)^(n)(sum_(i=1)^(n)(delx_(alpha)^(i))/(delx_(beta)^(j))xi_(beta^(j)))e_(alpha)^(i)\boldsymbol{a}=\sum_{i=1}^{n} \xi_{\beta}{ }^{i} \boldsymbol{e}_{\beta}{ }^{i}=\sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{n} \frac{\partial x_{\alpha}{ }^{j}}{\partial x_{\beta}{ }^{i}} \xi_{\beta}{ }^{i} \boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{j}=\sum_{j=1}^{n}\left(\sum_{i=1}^{n} \frac{\partial x_{\alpha}{ }^{i}}{\partial x_{\beta}{ }^{j}} \xi_{\beta^{j}}\right) \boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{i}a=i=1nξβieβi=i=1nj=1nxαjxβiξβieαj=j=1n(i=1nxαixβjξβj)eαi
と表わされることがわかる。この右辺は(7)に等しいのだから,し たがって接べクトルの成分は変換則
ξ α i = j = 1 n x α i x β j ξ β j ξ α i = j = 1 n x α i x β j ξ β j xi_(alpha)^(i)=sum_(j=1)^(n)(delx_(alpha)^(i))/(delx_(beta)^(j))xi_(beta)^(j)\xi_{\alpha}{ }^{i}=\sum_{j=1}^{n} \frac{\partial x_{\alpha}{ }^{i}}{\partial x_{\beta}{ }^{j}} \xi_{\beta}{ }^{j}ξαi=j=1nxαixβjξβj
をみたしている。

局所座標による偏微分

このよらにして滑らかな多様体の概念を導入したが,ガウスから リーマンへの道が示すよらに,できれば “外の空間” R N R N R^(N)\boldsymbol{R}^{N}RN から M M MMM を 独立に取り出して, M M MMM 自身のもつ内部構造だけに注目したいので ある. M M MMM R N R N R^(N)\boldsymbol{R}^{N}RN の中どこに,どのよらにおかれていても M M MMM のも つ性質が変わるわけではないといら見方をもっと鮮明なものにした いのである.
この方向に向かって進むために, M M MMM の性質を記述するのに M M MMM の 局所座標を用いるという立場をとることにしょう。そこでまず M M MMM上の実数値連続関数 f ( P ) f ( P ) f(P)f(P)f(P) C C C^(oo)\boldsymbol{C}^{\infty}C 級といらことを, 各 V α V α V_(alpha)V_{\alpha}Vα 上で次の ことが成り立つことであると定義しておこう:
P V α P V α P inV_(alpha)P \in V_{\alpha}PVα のとき, P P PPP を局所座標を用いて P = ( x α 1 , x α 2 , , x α n ) P = x α 1 , x α 2 , , x α n P=(x_(alpha)^(1),x_(alpha)^(2),cdots,x_(alpha)^(n))P=\left(x_{\alpha}{ }^{1}, x_{\alpha}{ }^{2}, \cdots, x_{\alpha}{ }^{n}\right)P=(xα1,xα2,,xαn) とす ると
f ( P ) = f ( x α 1 , x α 2 , , x α n ) f ( P ) = f x α 1 , x α 2 , , x α n f(P)=f(x_(alpha)^(1),x_(alpha)^(2),cdots,x_(alpha)^(n))f(P)=f\left(x_{\alpha}{ }^{1}, x_{\alpha}{ }^{2}, \cdots, x_{\alpha}{ }^{n}\right)f(P)=f(xα1,xα2,,xαn)
は, x α 1 , x α 2 , , x α n x α 1 , x α 2 , , x α n x_(alpha)^(1),x_(alpha)^(2),cdots,x_(alpha)^(n)x_{\alpha}{ }^{1}, x_{\alpha}{ }^{2}, \cdots, x_{\alpha}{ }^{n}xα1,xα2,,xαn の関数として C C C^(oo)C^{\infty}C-級である. すなわち, すべて の階数の偏導関数が存在して,それらがすべて連続である。
M M MMM 上の連続関数 f ( P ) f ( P ) f(P)f(P)f(P) C C C^(oo)-C^{\infty}-C 級ならば, 各 V α V α V_(alpha)V_{\alpha}Vα 上で局所座標 ( x α 1 , x α 2 , , x α n ) x α 1 , x α 2 , , x α n (x_(alpha)^(1),x_(alpha)^(2),cdots,x_(alpha)^(n))\left(x_{\alpha}{ }^{1}, x_{\alpha}{ }^{2}, \cdots, x_{\alpha}{ }^{n}\right)(xα1,xα2,,xαn) についての n n nnn 個の偏導関数
f x α 1 , f x α 2 , , f x α n f x α 1 , f x α 2 , , f x α n (del f)/(delx_(alpha)^(1)),(del f)/(delx_(alpha)^(2)),cdots,(del f)/(delx_(alpha)^(n))\frac{\partial f}{\partial x_{\alpha}{ }^{1}}, \frac{\partial f}{\partial x_{\alpha}{ }^{2}}, \cdots, \frac{\partial f}{\partial x_{\alpha}{ }^{n}}fxα1,fxα2,,fxαn
を考えることができる.したがってとくに P V α V β P V α V β P inV_(alpha)nnV_(beta)P \in V_{\alpha} \cap V_{\beta}PVαVβ のときには,私たちは点 P P PPP で局所座標 ( x α 1 , x α 2 , , x α n ) x α 1 , x α 2 , , x α n (x_(alpha)^(1),x_(alpha)^(2),cdots,x_(alpha)^(n))\left(x_{\alpha}{ }^{1}, x_{\alpha}{ }^{2}, \cdots, x_{\alpha}{ }^{n}\right)(xα1,xα2,,xαn) に関するものと, 局所座標 ( x β 1 , x β 2 , , x β n ) x β 1 , x β 2 , , x β n (x_(beta)^(1),x_(beta)^(2),cdots,x_(beta)^(n))\left(x_{\beta}{ }^{1}, x_{\beta}{ }^{2}, \cdots, x_{\beta}{ }^{n}\right)(xβ1,xβ2,,xβn) に関するものとの 2 つの偏導関数の値
(8) f x α 1 ( P ) , f x α 2 ( P ) , , f x α n ( P ) (8) f x α 1 ( P ) , f x α 2 ( P ) , , f x α n ( P ) {:(8)-(del f)/(delx_(alpha)^(1))(P)","(del f)/(delx_(alpha)^(2))(P)","cdots","(del f)/(delx_(alpha)^(n))(P):}\begin{equation*} -\frac{\partial f}{\partial x_{\alpha}{ }^{1}}(P), \frac{\partial f}{\partial x_{\alpha}{ }^{2}}(P), \cdots, \frac{\partial f}{\partial x_{\alpha}{ }^{n}}(P) \tag{8} \end{equation*}(8)fxα1(P),fxα2(P),,fxαn(P)
(9) f x β 1 ( P ) , f x β 2 ( P ) , , f x β n ( P ) (9) f x β 1 ( P ) , f x β 2 ( P ) , , f x β n ( P ) {:(9)(del f)/(delx_(beta)^(1))(P)","(del f)/(delx_(beta)^(2))(P)","cdots","(del f)/(delx_(beta)^(n))(P):}\begin{equation*} \frac{\partial f}{\partial x_{\beta}{ }^{1}}(P), \frac{\partial f}{\partial x_{\beta}{ }^{2}}(P), \cdots, \frac{\partial f}{\partial x_{\beta}{ }^{n}}(P) \tag{9} \end{equation*}(9)fxβ1(P),fxβ2(P),,fxβn(P)
をもつことになる。
このとき 8 と ( 9 ) ( 9 ) (9)(9)(9) の関係はどらなっているのだろらか. これは局所座標の変換則 x β i = x β i ( x α 1 , x α 2 , , x α n ) x β i = x β i x α 1 , x α 2 , , x α n x_(beta)^(i)=x_(beta)^(i)(x_(alpha)^(1),x_(alpha)^(2),cdots,x_(alpha)^(n))x_{\beta}{ }^{i}=x_{\beta}{ }^{i}\left(x_{\alpha}{ }^{1}, x_{\alpha}{ }^{2}, \cdots, x_{\alpha}{ }^{n}\right)xβi=xβi(xα1,xα2,,xαn) と偏微分のルールからす ぐに求められて,結果は
(10) f x β i = j = 1 n x α j x β i f x α j (10) f x β i = j = 1 n x α j x β i f x α j {:(10)(del f)/(delx_(beta)^(i))=sum_(j=1)^(n)(delx_(alpha)^(j))/(delx_(beta)^(i))(del f)/(delx_(alpha)^(j)):}\begin{equation*} \frac{\partial f}{\partial x_{\beta}{ }^{i}}=\sum_{j=1}^{n} \frac{\partial x_{\alpha}{ }^{j}}{\partial x_{\beta}{ }^{i}} \frac{\partial f}{\partial x_{\alpha}{ }^{j}} \tag{10} \end{equation*}(10)fxβi=j=1nxαjxβifxαj
となる.
すなわち, 関数 f ( P ) f ( P ) f(P)f(P)f(P) に対して, 局所座標の重なり目では, 偏微分を計算するのにどちらの座標を使らかによって(8)と(9)が現われ るが,それは(10)の関係によって結ばれている一貼り合わされて いる一のである!

1 つの転換

しかしここに注目すべき 1 つ事実が現われたのである。(10)を 微分の働きだけに注意して
(11) x β i = j = 1 n x α j x β i x α j (11) x β i = j = 1 n x α j x β i x α j {:(11)(del)/(delx_(beta)^(i))=sum_(j=1)^(n)(delx_(alpha)^(j))/(delx_(beta)^(i))(del)/(delx_(alpha)^(j)):}\begin{equation*} \frac{\partial}{\partial x_{\beta}{ }^{i}}=\sum_{j=1}^{n} \frac{\partial x_{\alpha}{ }^{j}}{\partial x_{\beta}{ }^{i}} \frac{\partial}{\partial x_{\alpha}{ }^{j}} \tag{11} \end{equation*}(11)xβi=j=1nxαjxβixαj
と書き直してみよう,そらすると ( 6 ) ( 6 ) (6)(6)(6) と見くらべてみると,ここで 記号の入れかえ
x α j e α j , x β i e β i x α j e α j , x β i e β i (del)/(delx_(alpha)^(j))longrightarrowe_(alpha)^(j),quad(del)/(delx_(beta)^(i))longrightarrowe_(beta)^(i)\frac{\partial}{\partial x_{\alpha}{ }^{j}} \longrightarrow \boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{j}, \quad \frac{\partial}{\partial x_{\beta}{ }^{i}} \longrightarrow \boldsymbol{e}_{\beta}{ }^{i}xαjeαj,xβieβi
をしてみると,(11は(6)となっていることに気づくだろら.この ことは, P V α V β P V α V β P inV_(alpha)nnV_(beta)P \in V_{\alpha} \cap V_{\beta}PVαVβ のとき, V α V α V_(alpha)V_{\alpha}Vα 上での微分の仕方と, V β V β V_(beta)V_{\beta}Vβ 上での微分の仕方の間に成り立つ関係——貼り合わせ—は, 局所座標の接 ベクトルの間に成り立つ関係と同じものになっているのである。簡単にいえば(6)と(11)で使われている“糊”は同じである.
ところが(6)と(11)で, “糊” の使われている場所は確かに違って いるのである. (6)は { e α 1 , , e α n } e α 1 , , e α n {e_(alpha)^(1),cdots,e_(alpha)^(n)}\left\{\boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{1}, \cdots, \boldsymbol{e}_{\alpha}{ }^{n}\right\}{eα1,,eαn} { e β 1 , , e β n } e β 1 , , e β n {e_(beta)^(1),cdots,e_(beta)^(n)}\left\{\boldsymbol{e}_{\beta}{ }^{1}, \cdots, \boldsymbol{e}_{\beta}{ }^{n}\right\}{eβ1,,eβn} の貼り合わせで あるが,これらのベクトルは M M MMM から R N R N R^(N)\boldsymbol{R}^{N}RN の中へ向いているベクト ルであり,いわば M M MMM の“外なる世界”に関係している。一方, の方は “微分作用素” { x α 1 , , x α n } x α 1 , , x α n {(del)/(delx_(alpha)^(1)),cdots,(del)/(delx_(alpha)^(n))}\left\{\frac{\partial}{\partial x_{\alpha}{ }^{1}}, \cdots, \frac{\partial}{\partial x_{\alpha}{ }^{n}}\right\}{xα1,,xαn} { x β 1 , , x β n } x β 1 , , x β n {(del)/(delx_(beta)^(1)),cdots,(del)/(delx_(beta)^(n))}\left\{\frac{\partial}{\partial x_{\beta}{ }^{1}}, \cdots, \frac{\partial}{\partial x_{\beta}{ }^{n}}\right\}{xβ1,,xβn} の貼り
合わせであるが,ここでは M M MMM の上だけで定義された関数の微分だ けが問題なのだから,いわば M M MMM の“内なる世界”だけに関係してい る.
ガウス, リーマンの思想を受継いで,私たちが微分幾何もトポ ロジーも同じ視野の中で見ることができるよらな場を求めるとした ら,それは R N R N R^(N)\boldsymbol{R}^{N}RN の中にあることによってその存在が確かめられるよ らなものではなく, その場のもつ性質によって自立しているような 場であることが望ましいだろう, R N R N R^(N)\boldsymbol{R}^{N}RN の中にある部分集合の中から,滑らかな局所座標系をもつものとして, 私たちは滑らかな多様体を 抽出してきたが,その中からこんどは, 内部構造 { x α 1 , , x α n } x α 1 , , x α n {(del)/(delx_(alpha)^(1)),cdots,(del)/(delx_(alpha)^(n))}\left\{\frac{\partial}{\partial x_{\alpha}{ }^{1}}, \cdots, \frac{\partial}{\partial x_{\alpha}{ }^{n}}\right\}{xα1,,xαn} { x β 1 , , x β n } x β 1 , , x β n {(del)/(delx_(beta)^(1)),cdots,(del)/(delx_(beta)^(n))}\left\{\frac{\partial}{\partial x_{\beta}{ }^{1}}, \cdots, \frac{\partial}{\partial x_{\beta}{ }^{n}}\right\}{xβ1,,xβn} を貼り合わす糊が見出されたのである.この ことは何か,それ自身ですでに十分自立している場を構成する手が かりを与えるものではないだろらか.

多様体の定義

このよらな考察の中から, 自立した 1 つ場が誕生してきた。そ れは単に幾何学的な場であったといらより, 実は現代数学の展開を 表現するよらな場となったのである。それは多様体とよばれるもの であった。
ここではいままでの話の筋にしたがいながら,ごく簡単に多様体 (正確にはコンパクトな滑らかな多様体)を導入する道順だけを記し ておこう。この抽象的な設定の背後には, R N R N R^(N)\boldsymbol{R}^{N}RN の中にある滑らかな 多様体が見え隠れしているのである。
多様体導入の手順を以下に列記しておく(細かい説明はできない ので,感じだけでも捉えていただきたい).

(I)コンパクトなハウスドルフ空間 X X X\boldsymbol{X}X

これは R N R N R^(N)\boldsymbol{R}^{N}RN の有界な閉集合を抽象化した概念である,Xは,集合 にある近さの概念を入れたものであるが, R N R N R^(N)\boldsymbol{R}^{N}RN の有界な閉集合のも つ基本的な性質はほぼもっている。

(【)局所座標系

X X XXX R n R n R^(n)\boldsymbol{R}^{n}Rn の単位円板の内部と同相な有限個の開集合 V 1 , V 2 , V 1 , V 2 , V_(1),V_(2),cdotsV_{1}, V_{2}, \cdotsV1,V2,,
X = V 1 V 2 V λ X = V 1 V 2 V λ X=V_(1)uuV_(2)uu cdots uuV_(lambda)X=V_{1} \cup V_{2} \cup \cdots \cup V_{\lambda}X=V1V2Vλ
このとき各 V α V α V_(alpha)V_{\alpha}Vα に属する点 P P PPP は局所座標
( x α 1 , x α 2 , , x α n ) x α 1 , x α 2 , , x α n (x_(alpha)^(1),x_(alpha)^(2),cdots,x_(alpha)^(n))\left(x_{\alpha}{ }^{1}, x_{\alpha}{ }^{2}, \cdots, x_{\alpha}{ }^{n}\right)(xα1,xα2,,xαn)
によって表わされている.このとき X X XXX n n nnn 次元の位相多様体とい 5.

(四) 滑らかな構造

n n nnn 次元の位相多様体 X X XXX の上で考えることにする. V α V β V α V β V_(alpha)nnV_(beta)!=O/V_{\alpha} \cap V_{\beta} \neq \varnothingVαVβ と する.前のよらに D D DDD R n R n R^(n)\boldsymbol{R}^{n}Rn の単位円板の内部とすると,局所座標 を与える 1 対 1 の連続写像
φ α : D V α φ β : D V β φ α : D V α φ β : D V β {:[varphi_(alpha):D longrightarrowV_(alpha)],[varphi_(beta):D longrightarrowV_(beta)]:}\begin{aligned} & \varphi_{\alpha}: D \longrightarrow V_{\alpha} \\ & \varphi_{\beta}: D \longrightarrow V_{\beta} \end{aligned}φα:DVαφβ:DVβ
が存在する.このとき V α V β V α V β V_(alpha)nnV_(beta)V_{\alpha} \cap V_{\beta}VαVβ に移る D D DDD の点に注目することによ つて,2つの写像 (同相写像!)
φ α 1 : V α V β φ α 1 ( V α V β ) D φ β 1 : V α V β φ β 1 ( V α V β ) D φ α 1 : V α V β φ α 1 V α V β D φ β 1 : V α V β φ β 1 V α V β D {:[varphi_(alpha)^(-1):V_(alpha)nnV_(beta)longrightarrowvarphi_(alpha)^(-1)(V_(alpha)nnV_(beta))sub D],[varphi_(beta)^(-1):V_(alpha)nnV_(beta)longrightarrowvarphi_(beta)^(-1)(V_(alpha)nnV_(beta))sub D]:}\begin{aligned} & \varphi_{\alpha}{ }^{-1}: V_{\alpha} \cap V_{\beta} \longrightarrow \varphi_{\alpha}{ }^{-1}\left(V_{\alpha} \cap V_{\beta}\right) \subset D \\ & \varphi_{\beta}{ }^{-1}: V_{\alpha} \cap V_{\beta} \longrightarrow \varphi_{\beta}{ }^{-1}\left(V_{\alpha} \cap V_{\beta}\right) \subset D \end{aligned}φα1:VαVβφα1(VαVβ)Dφβ1:VαVβφβ1(VαVβ)D
が生まれてくる. このとき同じ点 P V α V β P V α V β P inV_(alpha)nnV_(beta)P \in V_{\alpha} \cap V_{\beta}PVαVβ が, φ α 1 φ α 1 varphi_(alpha)^(-1)\varphi_{\alpha}{ }^{-1}φα1 φ β 1 φ β 1 varphi_(beta)^(-1)\varphi_{\beta}{ }^{-1}φβ1 によ って D D DDD 内のどんな違万点に移されているかを考えることによって,写像
φ β α : φ α 1 ( V α V β ) φ β 1 ( V α V β ) Ψ Ψ φ α 1 ( P ) φ β 1 ( P ) φ β α : φ α 1 V α V β φ β 1 V α V β Ψ Ψ φ α 1 ( P ) φ β 1 ( P ) {:[varphi_(beta alpha):varphi_(alpha)^(-1)(V_(alpha)nnV_(beta)) longrightarrowvarphi_(beta)^(-1)(V_(alpha)nnV_(beta))],[PsiPsi],[varphi_(alpha)^(-1)(P) longrightarrowvarphi_(beta)^(-1)(P)]:}\begin{aligned} \varphi_{\beta \alpha}: \varphi_{\alpha}{ }^{-1}\left(V_{\alpha} \cap V_{\beta}\right) & \longrightarrow \varphi_{\beta}{ }^{-1}\left(V_{\alpha} \cap V_{\beta}\right) \\ \Psi & \Psi \\ \varphi_{\alpha}{ }^{-1}(P) & \longrightarrow \varphi_{\beta}{ }^{-1}(P) \end{aligned}φβα:φα1(VαVβ)φβ1(VαVβ)ΨΨφα1(P)φβ1(P)
が得られる.
φ β α φ β α varphi_(beta alpha)\varphi_{\beta \alpha}φβα R n R n R^(n)\boldsymbol{R}^{n}Rn の開集合から開集合への写像だから, R n R n R^(n)\boldsymbol{R}^{n}Rn の座標を使っ て n n nnn 個の実数値関数として
y i = φ β α i ( x 1 , x 2 , , x n ) ( i = 1 , 2 , , n ) y i = φ β α i x 1 , x 2 , , x n ( i = 1 , 2 , , n ) y_(i)=varphi_(beta alpha)^(i)(x_(1),x_(2),cdots,x_(n))quad(i=1,2,cdots,n)y_{i}=\varphi_{\beta \alpha}{ }^{i}\left(x_{1}, x_{2}, \cdots, x_{n}\right) \quad(i=1,2, \cdots, n)yi=φβαi(x1,x2,,xn)(i=1,2,,n)
と表わされる.
私たちはこの n n nnn 個の関数 φ β α i ( i = 1 , 2 , , n ) φ β α i ( i = 1 , 2 , , n ) varphi_(beta alpha)^(i)(i=1,2,cdots,n)\varphi_{\beta \alpha}{ }^{i}(i=1,2, \cdots, n)φβαi(i=1,2,,n) C C C^(oo)C^{\infty}C-級の関数で あるといらことを要求しておくのである. この要求は簡単に φ β α φ β α varphi_(beta alpha)\varphi_{\beta \alpha}φβα C C C^(oo)C^{\infty}C-級の写像であるといってもよいし, あるいは φ β α φ β α varphi_(beta alpha)\varphi_{\beta \alpha}φβα という局所座標を貼る “糊” (糊は D R n D R n D subR^(n)D \subset \boldsymbol{R}^{n}DRn の中で調合されているが)が, C C C^(oo)C^{\infty}C-級の 糊であるといってもよいのである。
そこで次の定義をおく
定義 滑らかな構造をもつ位相多様体を滑らかな多様体,あ るいは単に多様体という。
これから多様体を M M MMM で表わすことにしよう。
(IV) C C C^(oo)\boldsymbol{C}^{\infty}C-級の関数
多様体 M M MMM 上の連続関数 f ( P ) f ( P ) f(P)f(P)f(P) が,各 V α V α V_(alpha)V_{\alpha}Vα 上で局所座標を用いて
f ( x α 1 , x α 2 , , x α n ) f x α 1 , x α 2 , , x α n f(x_(alpha)^(1),x_(alpha)^(2),cdots,x_(alpha)^(n))f\left(x_{\alpha}{ }^{1}, x_{\alpha}{ }^{2}, \cdots, x_{\alpha}{ }^{n}\right)f(xα1,xα2,,xαn)
と表わしたとき, これが n n nnn 変数の関数とみて C C C^(oo)C^{\infty}C-級のとき, f f fff M M MMM 上の C C C^(oo)C^{\infty}C-級関数,または滑らかな関数といら,局所座標の貼り 合わせの糊 φ β α φ β α varphi_(beta alpha)\varphi_{\beta \alpha}φβα C C C^(oo)C^{\infty}C-級にとっておいたから,1つの局所座標 ( x α 1 , x α 2 , , x α n ) x α 1 , x α 2 , , x α n (x_(alpha)^(1),x_(alpha)^(2),cdots,x_(alpha)^(n))\left(x_{\alpha}{ }^{1}, x_{\alpha}{ }^{2}, \cdots, x_{\alpha}{ }^{n}\right)(xα1,xα2,,xαn) で表わしたところ, ある関数が C C C^(oo)C^{\infty}C-級になってい れば,同じ点のまわりを別の局所座標で表わしてみても,やはり C C C^(oo)C^{\infty}C-級となっている。寸なわち, C C C^(oo)C^{\infty}C-級といら関数の性質は, 局所座標のとり方によらない, M M MMM に固有な性質と考えられるのである.
n n nnn 次元の多様体 M M MMM 上の 1 つつの点 P P PPP に, n n nnn 次元のベクトル空間 T P ( M ) T P ( M ) T_(P)(M)T_{P}(M)TP(M) を与えて, これが抽象的な設定の中での P P PPP におる M M MMM の接空間と考えられるようにしたい。
そのため,まず最初に各点 P P PPP に“抽象的な” n n nnn 次元ベクトル空間 T P ( M ) T P ( M ) T_(P)(M)T_{P}(M)TP(M) を対応させておく. 直観的には各点 P P PPP に抽象的なべクトル 空間 T P ( M ) T P ( M ) T_(P)(M)T_{P}(M)TP(M) を接平面のように付着させたと考えておくとよい。こ のベクトル空間の基底ベクトル(座標軸!)のとり方を,Pを表わす 局所座標のとり方に連動させることによって, 局所座標から浮かび 上がってくる P P PPP のまわりの幾何的イメージを T P ( M ) T P ( M ) T_(P)(M)T_{P}(M)TP(M) にも付与しょ 万と考えるのである。そのため P P PPP V α V α V_(alpha)V_{\alpha}Vα に含まれていて, P = ( x α 1 P = x α 1 P=(x_(alpha)^(1):}P=\left(x_{\alpha}{ }^{1}\right.P=(xα1, x α 2 , , x α n ) x α 2 , , x α n {:x_(alpha)^(2),cdots,x_(alpha)^(n))\left.x_{\alpha}{ }^{2}, \cdots, x_{\alpha}{ }^{n}\right)xα2,,xαn) と表わされているとき, T P ( M ) T P ( M ) T_(P)(M)T_{P}(M)TP(M) の基底ベクトルとして “記号”
x α 1 , x α 2 , , x α n x α 1 , x α 2 , , x α n (del)/(delx_(alpha)^(1)),(del)/(delx_(alpha)^(2)),cdots,(del)/(delx_(alpha)^(n))\frac{\partial}{\partial x_{\alpha}{ }^{1}}, \frac{\partial}{\partial x_{\alpha}{ }^{2}}, \cdots, \frac{\partial}{\partial x_{\alpha}{ }^{n}}xα1,xα2,,xαn
で表わされたものをとることにする.そうするとこのとき, n n nnn 次元 ベクトル空間 T P ( M ) T P ( M ) T_(P)(M)T_{P}(M)TP(M) に属しているべクトル ξ ξ xi\xiξ は,ただ 1 通りに
(12) ξ = ξ α 1 x α 1 + ξ α 2 x α 2 + + ξ α n x α n (12) ξ = ξ α 1 x α 1 + ξ α 2 x α 2 + + ξ α n x α n {:(12)xi=xi_(alpha)^(1)(del)/(delx_(alpha)^(1))+xi_(alpha)^(2)(del)/(delx_(alpha)^(2))+cdots+xi_(alpha)^(n)(del)/(delx_(alpha)^(n)):}\begin{equation*} \xi=\xi_{\alpha}{ }^{1} \frac{\partial}{\partial x_{\alpha}{ }^{1}}+\xi_{\alpha}{ }^{2} \frac{\partial}{\partial x_{\alpha}{ }^{2}}+\cdots+\xi_{\alpha}{ }^{n} \frac{\partial}{\partial x_{\alpha}{ }^{n}} \tag{12} \end{equation*}(12)ξ=ξα1xα1+ξα2xα2++ξαnxαn
と表わされることになる。 ξ ξ xi\xiξ は点 P P PPP における M M MMM の接ベクトルとよ ばれるものである.
もちろんこれだけでは単に記号の上だけのことであって,Mの 構造と T P ( M ) T P ( M ) T_(P)(M)T_{P}(M)TP(M) の構造は特別新しい関係を得たわけではない,Mの 構造は, 局所座標の貼り合博方の中にあるといら観点に立って, この貼り合わせ方を T P ( M ) T P ( M ) T_(P)(M)T_{P}(M)TP(M) の基底のとり方に反映させることによ り, ベクトル空間 T P ( M ) T P ( M ) T_(P)(M)T_{P}(M)TP(M) M M MMM の各点 P P PPP に “密着させる”のである.
そのためいま P V α V β P V α V β P inV_(alpha)nnV_(beta)P \in V_{\alpha} \cap V_{\beta}PVαVβ とする.このとき上の約束にしたが立 ば, V α , V β V α , V β V_(alpha),V_(beta)V_{\alpha}, V_{\beta}Vα,Vβ といら 2 つ局所座標に対応して T P ( M ) T P ( M ) T_(P)(M)T_{P}(M)TP(M) は 2 つの基底 ベクトル
(13) x α 1 , x α 2 , , x α n ( P V α と考えて ) x β 1 , x β 2 , , x β n ( P V β と考えて ) (13) x α 1 , x α 2 , , x α n P V α  と考えて  x β 1 , x β 2 , , x β n P V β  と考えて  {:(13){:[(del)/(delx_(alpha)^(1))","(del)/(delx_(alpha)^(2))","cdots","(del)/(delx_(alpha)^(n)),(P inV_(alpha)" と考えて ")],[(del)/(delx_(beta)^(1))","(del)/(delx_(beta)^(2))","cdots","(del)/(delx_(beta)^(n)),(P inV_(beta)" と考えて ")]:}:}\begin{array}{ll} \frac{\partial}{\partial x_{\alpha}{ }^{1}}, \frac{\partial}{\partial x_{\alpha}{ }^{2}}, \cdots, \frac{\partial}{\partial x_{\alpha}{ }^{n}} & \left(P \in V_{\alpha} \text { と考えて }\right) \tag{13}\\ \frac{\partial}{\partial x_{\beta}{ }^{1}}, \frac{\partial}{\partial x_{\beta}{ }^{2}}, \cdots, \frac{\partial}{\partial x_{\beta}{ }^{n}} & \left(P \in V_{\beta} \text { と考えて }\right) \end{array}(13)xα1,xα2,,xαn(PVα と考えて )xβ1,xβ2,,xβn(PVβ と考えて )
をもつ、したがってまたこの基底ベクトルの選び方にしたがって, どんな接ベクトル ξ T P ( M ) ξ T P ( M ) xi inT_(P)(M)\xi \in T_{P}(M)ξTP(M) も 2 通りの表わし方
ξ = ξ α 1 x α 1 + ξ α 2 x α 2 + + ξ α n x α n = ξ β 1 x β 1 + ξ β 2 x β 2 + + ξ β n x β n ξ = ξ α 1 x α 1 + ξ α 2 x α 2 + + ξ α n x α n = ξ β 1 x β 1 + ξ β 2 x β 2 + + ξ β n x β n {:[xi=xi_(alpha)^(1)(del)/(delx_(alpha)^(1))+xi_(alpha)^(2)(del)/(delx_(alpha)^(2))+cdots+xi_(alpha)^(n)(del)/(delx_(alpha)^(n))],[=xi_(beta)^(1)(del)/(delx_(beta)^(1))+xi_(beta)^(2)(del)/(delx_(beta)^(2))+cdots+xi_(beta)^(n)(del)/(delx_(beta)^(n))]:}\begin{aligned} \xi & =\xi_{\alpha}{ }^{1} \frac{\partial}{\partial x_{\alpha}{ }^{1}}+\xi_{\alpha}{ }^{2} \frac{\partial}{\partial x_{\alpha}{ }^{2}}+\cdots+\xi_{\alpha}{ }^{n} \frac{\partial}{\partial x_{\alpha}{ }^{n}} \\ & =\xi_{\beta}{ }^{1} \frac{\partial}{\partial x_{\beta}{ }^{1}}+\xi_{\beta}{ }^{2} \frac{\partial}{\partial x_{\beta}{ }^{2}}+\cdots+\xi_{\beta}{ }^{n} \frac{\partial}{\partial x_{\beta}{ }^{n}} \end{aligned}ξ=ξα1xα1+ξα2xα2++ξαnxαn=ξβ1xβ1+ξβ2xβ2++ξβnxβn
をもつことになる。
このとき私たちは, 基底べクトル(13)の間に基底変換の関係
(*) x β i = j = 1 n x α j x β i x α j (*) x β i = j = 1 n x α j x β i x α j {:(*)(del)/(delx_(beta)^(i))=sum_(j=1)^(n)(delx_(alpha)^(j))/(delx_(beta)^(i))(del)/(delx_(alpha)^(j)):}\begin{equation*} \frac{\partial}{\partial x_{\beta}{ }^{i}}=\sum_{j=1}^{n} \frac{\partial x_{\alpha}{ }^{j}}{\partial x_{\beta}{ }^{i}} \frac{\partial}{\partial x_{\alpha}{ }^{j}} \tag{*} \end{equation*}(*)xβi=j=1nxαjxβixαj
が成り立っていると要請するのである. この要請によって, V α V α V_(alpha)V_{\alpha}Vα 上 で基底 { x α 1 , , x α n } x α 1 , , x α n {(del)/(delx_(alpha)^(1)),cdots,(del)/(delx_(alpha)^(n))}\left\{\frac{\partial}{\partial x_{\alpha}{ }^{1}}, \cdots, \frac{\partial}{\partial x_{\alpha}{ }^{n}}\right\}{xα1,,xαn} にって具体的に表示されたべクトル空間と, V β V β V_(beta)V_{\beta}Vβ 上で基底 { x β 1 , , x β n } x β 1 , , x β n {(del)/(delx_(beta)^(1)),cdots,(del)/(delx_(beta)^(n))}\left\{\frac{\partial}{\partial x_{\beta}{ }^{1}}, \cdots, \frac{\partial}{\partial x_{\beta}{ }^{n}}\right\}{xβ1,,xβn} にって具体的に表示された ベクトル空間とが, V α V β V α V β V_(alpha)nnV_(beta)V_{\alpha} \cap V_{\beta}VαVβ 上で貼り合わされて, M M MMM 上全体をおお らような 1 つ新しい空間が得られる。このよらにして各 T P ( M ) T P ( M ) T_(P)(M)T_{P}(M)TP(M) を貼り合わせて得られる空間
を, M M MMM の接空間という.
T ( M ) = P M T P ( M ) T ( M ) = P M T P ( M ) T(M)=uu_(P in M)T_(P)(M)T(M)=\cup_{P \in M} T_{P}(M)T(M)=PMTP(M)
このよらな接ベクトルの一見, 抽象的な定義から, 接ベクトルが 多様体 M M MMM への“働き”としてどのよらにかかわっているのだろらか といらことは, 誰にとっても関心のあることである. それは(12)に よって ξ T P ( M ) ξ T P ( M ) xi inT_(P)(M)\xi \in T_{P}(M)ξTP(M) が与えられたとき, f C ( M ) f C ( M ) f inC^(oo)(M)f \in C^{\infty}(M)fC(M) に対して, f f fff の “ ξ ξ xi\xiξ-方向”からの P P PPP の微分の値が
ξ ( f ) = i = 1 n ξ α i f x α i ( P ) ξ ( f ) = i = 1 n ξ α i f x α i ( P ) xi(f)=sum_(i=1)^(n)xi_(alpha)^(i)(del f)/(delx_(alpha)^(i))(P)\xi(f)=\sum_{i=1}^{n} \xi_{\alpha}{ }^{i} \frac{\partial f}{\partial x_{\alpha}{ }^{i}}(P)ξ(f)=i=1nξαifxαi(P)
によって決められることによっている。もし P V α V β P V α V β P inV_(alpha)nnV_(beta)P \in V_{\alpha} \cap V_{\beta}PVαVβ のとき,
この右辺の表示を, ξ ξ xi\xiξ V β V β V_(beta)V_{\beta}Vβ 上の表示を用いて別に
i = 1 n ξ β i f x β i ( P ) i = 1 n ξ β i f x β i ( P ) sum_(i=1)^(n)xi_(beta)^(i)(del f)/(delx_(beta)^(i))(P)\sum_{i=1}^{n} \xi_{\beta}{ }^{i} \frac{\partial f}{\partial x_{\beta}^{i}}(P)i=1nξβifxβi(P)
と計算してみても,同じ値になっているということを保証すること が, 実は(11)を参照してみると, 要請しておいた貼り合わせの条件 (*)にほかならないことがわかる。
すなわち, 接べクトルは f C ( M ) f C ( M ) f inC^(oo)(M)f \in C^{\infty}(M)fC(M) に対して, 微分として働い
て,局所座標を通して見る限り,それはある方向からの微分の値を 与えているのである。基底べクトルとして記号 x α 1 , , x α n x α 1 , , x α n (del)/(delx_(alpha)^(1)),cdots,(del)/(delx_(alpha)^(n))\frac{\partial}{\partial x_{\alpha}{ }^{1}}, \cdots, \frac{\partial}{\partial x_{\alpha}{ }^{n}}xα1,,xαn を 用いたのは,この含みがあったからである。この接べクトルの関数 への働きを通して,多様体 M M MMM 上の幾何学的量が逆にしだいに構成 されていく,たとえは少し適切でないかもしれないが,モンジュが 曲面論を考察しているとき, R 3 R 3 R^(3)\boldsymbol{R}^{3}R3 のもつ幾何学的性質がどのように 曲面上に反映されてくるかを考えていたよらに,現代数学では多様体 M M MMM のもつ幾何学的性質を, C ( M ) C ( M ) C^(oo)(M)C^{\infty}(M)C(M) とその上に接ベクトルを通 して働く微分を通して,どのように導いていくかを考えているとも いえる。曲面論ははるかな高みへと上ったのである。

リーマン多様体

ここでリーマンの講師就任試験講演の中で述べた考えが,このよ らな多様体の立場の中で,どのよらに現代数学に取り入れられたか についてひとこと述べて抗こら,多様体 M M MMM が与えられたとき,各点 P P PPP における接空間 T P ( M ) T P ( M ) T_(P)(M)T_{P}(M)TP(M) に内積を導入して,まずここからスタ ートする.
いま各点 P P PPP に対し, 接べクトル空間 T P ( M ) T P ( M ) T_(P)(M)T_{P}(M)TP(M) に内積
( ξ , η ) P ( ξ , η ) P (xi,eta)_(P)(\xi, \eta)_{P}(ξ,η)P
が与えられているとする. 1 つ局所座標近傍 V α V α V_(alpha)V_{\alpha}Vα 上に注目するこ とにして, V α V α V_(alpha)V_{\alpha}Vα 上の各点 x = ( x α 1 , x α 2 , , x α n ) x = x α 1 , x α 2 , , x α n x=(x_(alpha)^(1),x_(alpha)^(2),cdots,x_(alpha)^(n))x=\left(x_{\alpha}{ }^{1}, x_{\alpha}{ }^{2}, \cdots, x_{\alpha}{ }^{n}\right)x=(xα1,xα2,,xαn) で与えられた 2 つ接 ベクトル ξ , η ξ , η xi,eta\xi, \etaξ,η
ξ ( x ) = ξ α 1 ( x ) x α 1 + ξ α 2 ( x ) x α 2 + + ξ α n ( x ) x α n η ( x ) = η α 1 ( x ) x α 1 + η α 2 ( x ) x α 2 + + η α n ( x ) x α n ξ ( x ) = ξ α 1 ( x ) x α 1 + ξ α 2 ( x ) x α 2 + + ξ α n ( x ) x α n η ( x ) = η α 1 ( x ) x α 1 + η α 2 ( x ) x α 2 + + η α n ( x ) x α n {:[xi(x)=xi_(alpha)^(1)(x)(del)/(delx_(alpha)^(1))+xi_(alpha)^(2)(x)(del)/(delx_(alpha)^(2))+cdots+xi_(alpha)^(n)(x)(del)/(delx_(alpha)^(n))],[eta(x)=eta_(alpha)^(1)(x)(del)/(delx_(alpha)^(1))+eta_(alpha)^(2)(x)(del)/(delx_(alpha)^(2))+cdots+eta_(alpha)^(n)(x)(del)/(delx_(alpha)^(n))]:}\begin{aligned} \xi(x) & =\xi_{\alpha}{ }^{1}(x) \frac{\partial}{\partial x_{\alpha}{ }^{1}}+\xi_{\alpha}{ }^{2}(x) \frac{\partial}{\partial x_{\alpha}{ }^{2}}+\cdots+\xi_{\alpha}{ }^{n}(x) \frac{\partial}{\partial x_{\alpha}{ }^{n}} \\ \eta(x) & =\eta_{\alpha}{ }^{1}(x) \frac{\partial}{\partial x_{\alpha}{ }^{1}}+\eta_{\alpha}{ }^{2}(x) \frac{\partial}{\partial x_{\alpha}{ }^{2}}+\cdots+\eta_{\alpha}{ }^{n}(x) \frac{\partial}{\partial x_{\alpha}{ }^{n}} \end{aligned}ξ(x)=ξα1(x)xα1+ξα2(x)xα2++ξαn(x)xαnη(x)=ηα1(x)xα1+ηα2(x)xα2++ηαn(x)xαn
と表わされ, 各係数 ξ α i ( x ) , η α i ( x ) ( i = 1 , 2 , , n ) ξ α i ( x ) , η α i ( x ) ( i = 1 , 2 , , n ) xi_(alpha)^(i)(x),eta_(alpha)^(i)(x)(i=1,2,cdots,n)\xi_{\alpha}{ }^{i}(x), \eta_{\alpha}{ }^{i}(x)(i=1,2, \cdots, n)ξαi(x),ηαi(x)(i=1,2,,n) V α V α V_(alpha)V_{\alpha}Vα C C C^(oo)C^{\infty}C-級 の関数とする. このとき各点 x V α x V α x inV_(alpha)x \in V_{\alpha}xVα における内積の値
(14) ( ξ ( x ) , η ( x ) ) x (14) ( ξ ( x ) , η ( x ) ) x {:(14)(xi(x)","eta(x))_(x):}\begin{equation*} (\xi(x), \eta(x))_{x} \tag{14} \end{equation*}(14)(ξ(x),η(x))x
V α V α V_(alpha)V_{\alpha}Vα C C C^(oo)C^{\infty}C-級の関数となっているという“滑らかさ”の条件を課
しておく,各 T P ( M ) T P ( M ) T_(P)(M)T_{P}(M)TP(M) 上で与えられた,この条件をみたす内積をリ 一マン計量といい, リーマン計量が与えられた多様体をリーマン多様体といらのである。
いまリーマン計量が与えられているとき, 基底ベクトルの内積を
( x α i , x α j ) x = g i j α ( x ) x α i , x α j x = g i j α ( x ) ((del)/(delx_(alpha)^(i)),(del)/(delx_(alpha)^(j)))_(x)=g_(ij)^(alpha)(x)\left(\frac{\partial}{\partial x_{\alpha}{ }^{i}}, \frac{\partial}{\partial x_{\alpha}{ }^{j}}\right)_{x}=g_{i j}{ }^{\alpha}(x)(xαi,xαj)x=gijα(x)
とおくことにすると,(14)は
( ξ ( x ) , η ( x ) ) x = i , j = 1 n g i j α ( x ) ξ α i η α j ( ξ ( x ) , η ( x ) ) x = i , j = 1 n g i j α ( x ) ξ α i η α j (xi(x),eta(x))_(x)=sum_(i,j=1)^(n)g_(ij)^(alpha)(x)xi_(alpha)^(i)eta_(alpha)^(j)(\xi(x), \eta(x))_{x}=\sum_{i, j=1}^{n} g_{i j}^{\alpha}(x) \xi_{\alpha}{ }^{i} \eta_{\alpha}{ }^{j}(ξ(x),η(x))x=i,j=1ngijα(x)ξαiηαj
と表わされることになる。

歴史の潮騒

こにに述べた R N R N R^(N)\boldsymbol{R}^{N}RN の中の “曲面”から離脱したまったく抽象的な 立場に立つ多様体概念の導入は, 実は数学史的にはずっと遅れて, 1936 年のホイットニーの論文『微分可能多様体』によるのである. リーマンの講演から約 80 年後のことである. 1936 年といえばヒル ベルト空間や位相群や抽象代数学が花盛りであり, 19 世紀数学は すでに遠いものとなっていた。ここにいたる歴史的な道のりは必ず しも明らかなものではないようである。
まずリーマン以後,リーマンの思想を受け継ぐ形での微分幾何学 は, リッチ,レヴィ・チヴィタ等のイタリーの幾何学者たちによっ て, 絶対微分学といら思いもかけぬ方向へと進んだ. リッチの『絶対微分学の方法』と題する論文は 1901 年に発表された。絶対微分学では局所座標の変換則で不変であるような関係式を見出すことを 主眼としており,そこではテンソルという言葉で書かれた不変式や 微分方程式が研究のテーマとなって論じられるのである。それらは 座標変換で不変な形をとっているから,得られた量はどの局所座標 をとって表現しても同じ量を表わしていることになり,したがって 多様体固有の量と考えられるものであったが,多様体の全体像を考察の対象におくということは決してなかったのである。議論はあく
まで局所的であった,混みいったテンンルを不変成分に分解するよ らな複雑な, むしろ代数的な議論屯一時期盛んであったのである。 1932 年に書かれて当時評判だったアイゼンハルトの『変換の連続群』といら本を見ても,ベクトルやテンンルの変換則をみたすもの が,考之ている対象となることは明示されているが,いまからい兑 ば,その下に広がっているはずの幾何学的な場——多様体— M M MMM についてははっきりとは言及されていないのである。
代数幾何からも,方程式で定義される点の集りとして(たとえば 円周が x 2 + y 2 1 = 0 x 2 + y 2 1 = 0 x^(2)+y^(2)-1=0x^{2}+y^{2}-1=0x2+y21=0 と表わされるよらに), 多くの多様体が研究さ れていたが,それは一般には複素数体上で考完られており,また一般に特異点をもっていたから, R n R n R^(n)\boldsymbol{R}^{n}Rn の “曲面”といら見方で捉之ら れる機会は少なかったのだろら。
トポロジーも,三角形分割といら性質ととれを用いてホモロジ 一論を展開するといら方法とに注目しながら, 高次元の多面体の概念を導入し,それを主要な研究対象としていったが,そこには微分幾何学と融和するような場所を見出すことはむずかしかったのであ る.
多様体の概念は抽象的なものであり,その抽象性によってむしろ 現代数学の中へとごく自然に広がっていったとも考えられるもので あるが,このような “抽象的な場” の広がりを数学的実在として認 めることができるよらになるためには,長い時間をかけた数学的雾囲気の醸成が必要だったのである. 1910 年代から 1920 年代にかけ て, 嵐の上らに通り抜けていった抽象数学へ向けてのダイナミック な動きが,このよらな雾囲気をつくることに貢献したのかるしれな い. 実は,ホイットニーの最初に述べた論文を読んでも,リーマン の思想は伝わってこないのである。その論文をおおらものは, 20 世紀数学がそれまでに形づくってきた,新しい大きな波であった。 なおこの多様体の概念は,リーマン計量を入れれば微分幾何の対象となるものであったが,多様体はまた “三角形分割”もできるの である。多様体の位相的な構造がトポロジーの中心課題となったの は,1950 年以降のことである,そしてその頃になって,多様体は
数学を表現し, 総括する基本的な場として, 数学者の前にはっきり と姿を現わしてきたのである。

先生との対話

山田君がまず質問した。
「抽象的な多様体に対する接空間の定義はいいまで聞いたこと のないよらな不思議な定義ですね。 大体, 多様体といらものを考え よらとすると,ぼくはどらしても 3 次元の中の曲面のようなものを 考えてしまいますが,抽象的なときには多様体 M M MMM だけがあって,外の空間など何もないのですよね。 そのときの接べクトルって何だ ろらと考えてしまいます.」
「そうですね,接べクトルも M M MMM の中から新しく創り出していかな くてはならないのです。接べクトルとは関数を微分する方向を指定 するものだといら考えに立つと, M M MMM 上の C C C^(oo)C^{\infty}C-級関数と, その関数 を局所座標によって微分するとい52つの概念から,ごく自然に接 ベクトルの考えが生まれてきます。そらすると局所座標の貼り合わ せの違いからくる微分する方向の, いわばかみ合わせの違いが,何 か抽象的な多様体の中から浮かび上がる “形”を暗示してくること になるのでしょう.」
明子さんがノートを広げて水曜日のところを見ていたが,「これ は何のことだったのかしら」と小声でいって
「曲面のときに,第 1 基本形式を
i , j = 1 2 g i j d x i d x j i , j = 1 2 g i j d x i d x j sum_(i,j=1)^(2)g_(ij)dx^(i)dx^(j)\sum_{i, j=1}^{2} g_{i j} d x^{i} d x^{j}i,j=12gijdxidxj
と書きましたが,一般のリーマン幾何の立場で見るとき,この d x i d x i dx^(i)d x^{i}dxi といら記号は,一体,何を意味していると考えるのでしょらか.」 と質問した。
M M MMM をリーマン多様体としましょう,そうすると M M MMM の各点 P P PPP に 接空間 T P ( M ) T P ( M ) T_(P)(M)T_{P}(M)TP(M) が付いています. T P ( M ) T P ( M ) T_(P)(M)T_{P}(M)TP(M) n n nnn 次元のべクトル空間 でした。第 4 週日曜日での話を思い出すと, T P ( M ) T P ( M ) T_(P)(M)T_{P}(M)TP(M) に対してその
双対空間 T P ( M ) T P ( M ) T_(P)^(**)(M)T_{P}{ }^{*}(M)TP(M) を考えることができます. T P ( M ) T P ( M ) T_(P)^(**)(M)T_{P}{ }^{*}(M)TP(M) の元という のは, T P ( M ) T P ( M ) T_(P)(M)T_{P}(M)TP(M) から R R Rへ\boldsymbol{R} へR 線形写像でした。そこで P V α P V α P inV_(alpha)P \in V_{\alpha}PVα として, T P ( M ) T P ( M ) T_(P)(M)T_{P}(M)TP(M) の基底
{ x α 1 , x α 2 , , x α n } x α 1 , x α 2 , , x α n {(del)/(delx_(alpha)^(1)),(del)/(delx_(alpha)^(2)),cdots,(del)/(delx_(alpha)^(n))}\left\{\frac{\partial}{\partial x_{\alpha}{ }^{1}}, \frac{\partial}{\partial x_{\alpha}{ }^{2}}, \cdots, \frac{\partial}{\partial x_{\alpha}{ }^{n}}\right\}{xα1,xα2,,xαn}
をとると, 対応して T P ( M ) T P ( M ) T_(P)^(**)(M)T_{P}{ }^{*}(M)TP(M) の双対基底が決まります。この双対基底を
{ d x α 1 , d x α 2 , , d x α n } d x α 1 , d x α 2 , , d x α n {dx_(alpha)^(1),dx_(alpha)^(2),cdots,dx_(alpha)^(n)}\left\{d x_{\alpha}{ }^{1}, d x_{\alpha}{ }^{2}, \cdots, d x_{\alpha}{ }^{n}\right\}{dxα1,dxα2,,dxαn}
と書くのです。そらすると,
ξ = ξ α 1 x α 1 + ξ α 2 x α 2 + + ξ α n x α n ξ = ξ α 1 x α 1 + ξ α 2 x α 2 + + ξ α n x α n xi=xi_(alpha)^(1)(del)/(delx_(alpha)^(1))+xi_(alpha)^(2)(del)/(delx_(alpha)^(2))+cdots+xi_(alpha)^(n)(del)/(delx_(alpha)^(n))\xi=\xi_{\alpha}{ }^{1} \frac{\partial}{\partial x_{\alpha}{ }^{1}}+\xi_{\alpha}{ }^{2} \frac{\partial}{\partial x_{\alpha}{ }^{2}}+\cdots+\xi_{\alpha}{ }^{n} \frac{\partial}{\partial x_{\alpha}{ }^{n}}ξ=ξα1xα1+ξα2xα2++ξαnxαn
に対して
d x α i ( ξ ) = ξ α i d x α i ( ξ ) = ξ α i dx_(alpha)^(i)(xi)=xi_(alpha)^(i)d x_{\alpha}{ }^{i}(\xi)=\xi_{\alpha}{ }^{i}dxαi(ξ)=ξαi
となります。
したがって, M M MMM 上にリーマン計量を与えるといらこと,すなわ ち T P ( M ) T P ( M ) T_(P)(M)T_{P}(M)TP(M) の接べクトル ξ , η ξ , η xi,eta\xi, \etaξ,η に内積 g i j α ξ α i η α j g i j α ξ α i η α j sumg_(ij)^(alpha)xi_(alpha)^(i)eta_(alpha)^(j)\sum g_{i j}{ }^{\alpha} \xi_{\alpha}{ }^{i} \eta_{\alpha}{ }^{j}gijαξαiηαj を与えるということ を,双対基底を使って“関数型”で書くと
g i j α d x α i ( ξ ) d x α j ( η ) g i j α d x α i ( ξ ) d x α j ( η ) sumg_(ij)^(alpha)dx_(alpha)^(i)(xi)dx_(alpha)^(j)(eta)\sum g_{i j}{ }^{\alpha} d x_{\alpha}{ }^{i}(\xi) d x_{\alpha}{ }^{j}(\eta)gijαdxαi(ξ)dxαj(η)
となるのです。このように書くと何か形式的な解釈にすぎないよう で,双対基底を表わす記号 d x d x dxd xdx の使い方が,全微分のときに現われ る同じ記号 d x d x dxd xdx とうまく合致しているのだろらかなどといらことが 問題になってきます。それらは現代数学ではすべて整備されて, そ れが逆に記号 d x d x dxd xdx の働きを強めているよらです.」
小林君が
「抽象的な多様体というのは, R N R N R^(N)\boldsymbol{R}^{N}RN の中に入っている多様体とど れだけ違らのですか.」
と質問した。
「おかしなことのよらですが,本質的には違わないといってもよ いのです. ホイットニーは n n nnn 次元の多様体 M M MMM は必ず R 2 n + 1 R 2 n + 1 R^(2n+1)\boldsymbol{R}^{2 n+1}R2n+1 の中の “曲面”として考えることができるといらことを証明したのです。 すなわち M M MMM から R 2 n + 1 R 2 n + 1 R^(2n+1)\boldsymbol{R}^{2 n+1}R2n+1 の中への 1 対 1 の滑らかなよい写像が存在
することを示したのです.
この先生の答を聞いて, 教室の中から「なあんだ」などといら声 が聞えてきた。かず子さんが皆の気持を代弁するよらに質問に立っ た。
「そうすると抽象的に多様体を定義しても, それは高次元のユー クリッド空間の中に結局は入れることができるならば,“外の空間” を見つけることができるわけですね。そんならわざわざいろいろな 概念を用意して抽象的な多様体の定義を試みなくともよかったので はないでしょらか.」
先生はじっと考えられてから, 一語, 一語言葉を探すよらな調子 で話し出された。
「いいえ,それは必ずしもそうとはい之ないのです。数学のいろ いろなところから生まれてくる多様体は,一般にはユークリッド空間の中のある “曲面” の形をとっていませんし,またそのような視点をどのよらにもったらよいかわからない状況で提示されてきます.
たとえば R n R n R^(n)\boldsymbol{R}^{n}Rn の原点を通る p p ppp 次元 ( 0 < p < n ) ( 0 < p < n ) (0 < p < n)(0<p<n)(0<p<n) の平面全体は,1つ の多様体をつくることが示されます. といってもそれをどんなふら に考えてよいかはわからないでしょら。まず少しそのことを説明し てみましょう, R n R n R^(n)\boldsymbol{R}^{n}Rn の中にある原点を通る p p ppp 次元の平面の例として,最初の p p ppp 個の座標平面
L = { ( x 1 , x 2 , , x p , 0 , 0 , , 0 ) } L = x 1 , x 2 , , x p , 0 , 0 , , 0 L={(x_(1),x_(2),cdots,x_(p),0,0,cdots,0)}L=\left\{\left(x_{1}, x_{2}, \cdots, x_{p}, 0,0, \cdots, 0\right)\right\}L={(x1,x2,,xp,0,0,,0)}
をとります。原点のまわりでこの平面を少し変動させて別の p p ppp

タでキャッチされるかといらと, L L LLL 上の座標単位ベクトル e 1 = ( 1 e 1 = ( 1 e_(1)=(1\boldsymbol{e}_{1}=(1e1=(1, 0 , , 0 ) , , e p = ( 0 , , 0 , p 1 , 0 , , 0 ) 0 , , 0 ) , , e p = 0 , , 0 , p 1 , 0 , , 0 0,cdots,0),cdots,e_(p)=(0,cdots,0,(p)/(1),0,cdots,0)0, \cdots, 0), \cdots, \boldsymbol{e}_{p}=\left(0, \cdots, 0, \frac{p}{1}, 0, \cdots, 0\right)0,,0),,ep=(0,,0,p1,0,,0) L ~ L ~ tilde(L)へ\tilde{L} へL~ 移って
e ~ 1 = ( a 11 , a 12 , , a 1 p , a 1 p + 1 , , a 1 n ) e ~ 1 = a 11 , a 12 , , a 1 p , a 1 p + 1 , , a 1 n tilde(e)_(1)=(a_(11),a_(12),cdots,a_(1p),a_(1p+1),cdots,a_(1n))\tilde{\boldsymbol{e}}_{1}=\left(a_{11}, a_{12}, \cdots, a_{1 p}, a_{1 p+1}, \cdots, a_{1 n}\right)e~1=(a11,a12,,a1p,a1p+1,,a1n)
e ~ p = ( a p 1 , a p 2 , , a p p , a p p + 1 , , a p n ) e ~ p = a p 1 , a p 2 , , a p p , a p p + 1 , , a p n tilde(e)_(p)=(a_(p1),a_(p2),cdots,a_(pp),a_(pp+1),cdots,a_(pn))\tilde{\boldsymbol{e}}_{p}=\left(a_{p 1}, a_{p 2}, \cdots, a_{p p}, a_{p p+1}, \cdots, a_{p n}\right)e~p=(ap1,ap2,,app,app+1,,apn)
となったとしたとき,L からはみ出した部分の成分
( a 1 p + 1 , , a 1 n ) , , ( a p p + 1 , , a p n ) a 1 p + 1 , , a 1 n , , a p p + 1 , , a p n (a_(1p+1),cdots,a_(1n)),cdots,quad(a_(pp+1),cdots,a_(pn))\left(a_{1 p+1}, \cdots, a_{1 n}\right), \cdots, \quad\left(a_{p p+1}, \cdots, a_{p n}\right)(a1p+1,,a1n),,(app+1,,apn)
でキャッチされます。すなわち L L LLL の近くにある p p ppp 次元平面 L ~ L ~ tilde(L)\tilde{L}L~ は,
p ( n p ) p ( n p ) p(n-p)p(n-p)p(np) 個のデータ ( a 1 p , , a 1 n , , a p p + 1 , , a p n ) a 1 p , , a 1 n , , a p p + 1 , , a p n (a_(1p),cdots,a_(1n),cdots,a_(pp+1),cdots,a_(pn))\left(a_{1 p}, \cdots, a_{1 n}, \cdots, a_{p p+1}, \cdots, a_{p n}\right)(a1p,,a1n,,app+1,,apn) で決まります. このデータを,L の近くにある平面の局所座標として採用するこ とにします。ほかの平面の近くでも同じような局所座標をとること ができ,これによって R n R n R^(n)\boldsymbol{R}^{n}Rn の原点を通る p p ppp 次元の平面全体は多様体 となることがわかり女す.この多様体をグラスマン多様体といいま す.
このグラスマン多様体を見ると, これが多様体になることを保証 するのは p p ppp 次元平面の R n R n R^(n)\boldsymbol{R}^{n}Rn の中での変化の仕方で, それはいってみ れば p p ppp 次元平面の集合の “内部事情” です。私たちが一番注目して いるのは, 1 つの平面の近くには p ( n p ) p ( n p ) p(n-p)p(n-p)p(np) 個のパラメータによる座標が入るといらことであって, p p ppp 次元平面全体の集合の全体像を曲面のように想像しているわけではありません. グラスマン多様体を 成立させているものは, p p ppp 次元平面の集りから抽象された性質です. このような幾何学的なものの集りから抽象されて取り出された性質 を受ける形で多様体の議論を展開するためには, 抽象的な多様体の 視点がどらしても必要となってくるのです. そして現代数学は, 微分幾何学やトポロジーの多くの具体例から生まれてきた多様体に, この抽象的な視点を付すことによって大きく発展したのです.」

お茶の時間

質問 ガウスーボンネの定理といらものを聞いたことがあります が,それはどんな定理なのですか。
答 閉曲面 S S SSS を考える, S S SSS は向きづけられているとしょ5.金曜日に述べたよらな位相的な立場では, S S SSS は穴の数 g g ggg で決まってい る.そこで
χ ( S ) = 2 2 g χ ( S ) = 2 2 g chi(S)=2-2g\chi(S)=2-2 gχ(S)=22g
とおいて, χ ( S ) χ ( S ) chi(S)\chi(S)χ(S) S S SSS オイラー標数という. 金曜日の話を思い出 すと, χ ( S ) χ ( S ) chi(S)\chi(S)χ(S) S S SSS を三角形分割したときの (頂点の数) - (辺の数) + (面の数)に等しい。曲面 S S SSS は水曜日,木曜日の立場で見ると曲面論の対象となり,SKは全曲率 κ κ kappa\kappaκ がある。 κ κ kappa\kappaκ S S SSS 各点で定義され
た実数値連続関数となっている. S S SSS 上では長さが測れるから(第 1 基本形式!),したがって S S SSS 上での微小な面積も測れ, S S SSS 上での連

積分すると
S κ d S = 2 π χ ( S ) S κ d S = 2 π χ ( S ) int_(S)kappa dS=2pi chi(S)\int_{S} \kappa d S=2 \pi \chi(S)SκdS=2πχ(S)
が成り立つというのが,ガウスーボンネの定理である.
この等式の左辺に登場している κ κ kappa\kappaκ は, 曲面の微小な変化の様子を,解析的に測って求められたものであるし, 右辺の χ ( S ) χ ( S ) chi(S)\chi(S)χ(S) は, 曲面全体を大づかみにして得られた位相的な量である. 左辺と右辺に現わ れる量はまったく性質を異にしている量である。ガウスーボンネの 定理によって微分幾何学とトポロジーが多様体を通して互いに結び 合ら道が見出されたのである。
日曜日
19 世紀から 20 世紀へ
この 6 週間の物語を通して,第 4 週の線形性を除けば,その基調 は主に 19 世紀までの数学においてきた。現代数学を何の準備もな く学びはじめ机,ときにはとれは荒涼とした原野に誘れれている よらな感じを抱かせることもあるだろら. 少なくとも現代数学の精緻な理論体系の彼方に,その理論を創った人間像を思い浮かべるこ とは汇とんどないといってよい。 20 世紀は, 数学の歴史としては まだ浅いのかもしれない、数学が育ち,また育ってきた柔らかな深 い土を知ってもららためには,歴史を振り返ってみるとよいと私は 考えた。19 世紀までの数学はすでに十分豊かで,私たちに語りか ける多くのものをもっている。その理解に立って現代数学を見ると, そこには現代数学の育っていく姿がはっきりと見えてくるだろら。読者はいまは 20 世紀数学へ向かわれるとよいのである.
19 世紀から 20 世紀へと移るにつれて数学の姿は大きく変わった のである. 19 世紀まで数学は日常取り扱われる量や幾何学的な図形からごく自然に抽象されてきた数学的対象の中に, 十分豊かな数学的対象を育てていた。また実数, 複素数から生まれた解析学は,眼に見える世界で生ずるさまざあな自然現象の解明を通しながら育 っていったが, 振り返ってみれば,もともと解析学の基盤は時空の 直観の中にあったといってもよかったのである.極限や関数の基礎概念はそこから生まれてきている。そのよらな背景の中にあっては,新しい抽象概念を取り出し数学の中に積極的に取り入れていこうと する強い志向は育ちにくかったといってよいだろら.現代数学にと

ってごく当り前の, 概念の意味を問らといら上らなことも, 改めて それが数学の問題になり得るものなのかどらかと自問してみると, それは決して明らかなととではないといらことに気がつくのである。幾何の問題や方程式の問題を解くときに集中する意識の中に数学の 本質が浮かび上がってくるといら上らに考えると,概念の意味など 確かにその外にある。概念といらものが数学者の間で論ぜられるよ らになったのは、コーシーなどによって解析学の基礎に対する批判
が登場し,連続性の概念や関数概念を明確にしようとする動きが高 まってきてからだろら。
その意味では 1872 年に出版されたデデキントの『連続性と無理数』といらわずか 24 頁の小冊子は,単にそこに述べられている “切断”といら考完の独創性だけではなく, 新しい独特な雾囲気を 数学に投入することになった。ここに扱われているのは実数の連続性といら概念であり,そこには数式も図形も描かれていなかったの である。
だが,数学の流れにとってもっとも決定的な意味をもち,19 世紀数学から 20 世紀数学への過渡期に深い影響と波紋を投げかけた

のは,カントルによる集合論の創造であった。カントルは, 1878 年に発表した論文の中で,“ひとつひとつの構成要素がはっきりと 識別できるものの集り”といら空漠とした裸の概念を,“集合”とし て数学の対象としょうとしたのである。もちろんこれだけの概念だ けならば,哲学か論理学の対象であったろらけれど,カントルはこ こに無限概念を重ねることにより,神秘的で深遠な数学の世界を現出させたのである。しかしカントルによって捉えられた無限は,時空の認識からくるある持続性をもつ実体としての無限ではなく, 概念の中だけで累々と構成されていく無限であった。たとえばカント ルによれば,実数は 1 つの集合を構成するが,それは実数を 1 つ 1 つ要素としてばらして単なる総体として認めるような対象と化して しまったのである。概念としてだけでみるならば,それで十分自立 しているかもしれないが, 実数が数直線から切り離され, 連続性と いら属性を捨ててしまったとき,それがどれほど数学の中で不透明 なものになるかといらことは, 『数学が生まれる物語』第 2 週で詳 しく述べた通りである.
しかしいずれにせよ, カントルによって, 数学は概念の内蔵する 働きによって,十分自立することができるといら観点を得たのであ る. 概念の外延は集合を形成し,内包は集合の上に多くの構造を与 えてくることになるだろう。無限といらこの不思議な響きを伝える 言葉さえも,集合論の中では 1 つの果てしない理論体系を構築して
いく.(集合論についてはたとえば志賀『集合への 30 講』(朝倉書店)を参照していただきたい))このカントルの提示した無限概念 と数学の構成に, 不安と危惧を感じた数学者は多かったし, 20 世紀になっても集合論に対する批判は続いたのであるが,結局のとこ ろカントルによって示された世界は, 数学者によって容認されるこ とになった。このような 19 世紀から 20 世紀へかけての数学内部の 大きな変化がどこからきたものかといらことに,私はむしろ最近は 関心をもつよらになってきた。カントルの天才といらだけではおさ まらない,何か謎めいたものがそこにあるよらな気がする。この物語に述べてきたよらな豊かな土を耕すよらな数学からみれば,カン トルの集合論は遠い彼方から侵入してきた異邦人のようなものであ ったといってもよいだろら。
ヒルベルトは 1899 年に有名な『幾何学の基礎』を著わしたが, その中でヒルベルトは抽象的におかれた点と直線から出発し, その 相互関係を厳密に公理によって規定することによって, ユークリッ ド以来の幾何学を算術的世界の中で論理的に構成することに成功し た. それと同時に数学の対象は, 集合から出発し, そこに公理体系 を与えることによってその構造を規定することにより得られるとい 万立場を鮮明なものにしたのである。ヒルベルトは“カントルのつ くった楽園から誰も追放されることはない”とカントル的数学を擁護したが,ヒルベルトの見た楽園は,集合概念を根底において公理論的に数学の対象を構築していくという,開かれた自由な思索の展開していく数学の世界であって,カントルといら天才が聞いた,果 てしない無限の系列の彼方からやってくる神秘的な謎めいた調べで はなかったと思われる。
やがて 1930 年代までを, 抽象数学とよばれる新しい波が数学を 大きく打打うようになってきた。19 世紀まで大切に育てられてき たさまざまな概念が取り出され,批判され,集合概念の上に新しい 装いをつけて登場してきたのである。この大きな波のらねりの中か ら,“近さ”といら先験的ともい完る直観を,数学的な概念として 結晶させた位相空間論や, 量的な感覚を一切捨て去って数のもつ演
算の働きだけを抽出した抽象代数学が誕生してきた。そこには群,環,体,多元環などの概念が 1 つの視野の中におさめられたのであ る。また解析学の背景に, 無限次元空間と線形性を打こらとする関数解析学が盛んとなって,ヒルベルト空間, バナッ八空間の理論が そこに展開した。
このような潮流の中にあって, 19 世紀半ばまではグラスマンや リーマンの先駆的な業績を除けばなお霧中にあった高次元の幾何学 が, 2 次元, 3 次元と同じような視点で研究されるよらになった. そこには方法の違いによって, 微分幾何学, リー群論, トポロジー などが激しく交錯したのである。
抽象数学の動きは, 数学の内部におきた学問の自立性への志向と,抽象といら高い視点を得ることによって,数学が有機体としてさら に総合的な働きをすることを目指したものであったと考えられるが,不思議なことに,ここで得られた数学は,アインシュタインの一般相対性理論や,ボアー, 八イゼンベルク,シュレディンガーなどに よって創られた量子力学が示した世界像の数学的表現に実によく適合したのである。それは大きくいえば,数学の表現も,物理的世界観も,人間の文化の流れの中にあって,同じ時間を共有しながら 1 つになって流れていくといらことを示したものかもしれない.
抽象数学によって数学が 1 つ立脚点に立ったとき, 改めて 19 世紀までの数学を見直すといら機運が 1940 年代あたりから徐々に はじまったようであるが,そこには抽象数学だけでは決しておおえ なかったよらな実に豊かな数学を育てる種子が蒔かれていたことが わかってきたのである.数学の表現形式や潮の流れは,時代ととも に変わることはあっても,数学を支えているものは変わることはな い、数学はいまもその土壌を耕しながら,未来に向けて確実に育ち 続けているのである。

むすび

20 世紀数学は, 多くの概念と方法を導入しながら急速に発展し,前世紀までには予想もできなかったよらな大きな学問の世界を構築 するにいたった。その理論全体を俯瞰するような場所を見出すこと は,専門家にとってさ完汇とんど不可能なことになってきた。数学 に関心のある人が,このよらな現代数学に近づこらとするとき,最初の障害は,次々と登場してくる概念の意味がはっきりせず,また 適用される方法の妥当性, つまり考兄る筋道の必然性がはっきりし ないといらことにある,場合によっては,問題としているテーマ自身が霧に包女れているよらにみ完るときもある。とれは現代数学が その基盤を抽象性においているからであろら。
私は以前から,現代数学の実りを支える豊かな土壤に䉤を入れ,掘り起こしてみるような仕事をしてみたいと思っていた. 現代数学 の中に繰りこまれている高度の概念や方法や考之方など, すべて長 い数学の歴史の中から培われてきたものである。数学を学ぼらとす る人たちにも歴史が育てたこの豊かな土壌を知ってもらいたいと思 った.
幸い『数学が生まれる物語』の続編を書くよらに特勧めがあった ので,この機会に私のこの考えを『数学が育っていく物語』に盛っ てみよらと思ったのである. 1 年 2 力月程度の時間をかけて, 6 冊 を書き上げてみると, 私は執筆当初思いもかけなかった 1 つの感慨 にいつしかふけるよらになっていた。とれは数学といら学問がつね に対峙し, それに向かって問いかけているのは, 歴史ではないかと いらことである. 物理学をはじめとする諸科学が,自然現象の中に 広がりと深さを求めながら, 時間の先の方向へと進んでいくのに対 し, 数学は歴史の奥へ, 奥へと入っていく. 諸々の概念や方法の可能性をひとつひとつ確かめながら, 数学は新しい問題の中に創造の 道を求めて歩んでいる。ここで確かめているのは実は数学の過ぎて きた道である。数学者はつねに同じ道を歩み続けているにすぎない。
やがて通ってきた道を振り返れば,そこにはつねに同じ形をとって 数学の育ちゆく姿が見えるだろう。この私の感慨が,本書を通して, いくらかでも読者とわかちあらことができるならば, 私としては嬉 しいことである.
なお, 岩波書店の宮内久男さんには, 『数学が生まれる物語』か ら本書にいたるまで,すべての点で大変お世話になった。ここに深 く感謝の意を述べさせていただきます.

問題の解答

月曜日

[1] x 2 a 2 + y 2 b 2 + z 2 c 2 = 1 x 2 a 2 + y 2 b 2 + z 2 c 2 = 1 (x^(2))/(a^(2))+(y^(2))/(b^(2))+(z^(2))/(c^(2))=1\frac{x^{2}}{a^{2}}+\frac{y^{2}}{b^{2}}+\frac{z^{2}}{c^{2}}=1x2a2+y2b2+z2c2=1 を確かめるとよい.
[2] x 2 a 2 y 2 b 2 = z x 2 a 2 y 2 b 2 = z (x^(2))/(a^(2))-(y^(2))/(b^(2))=z\frac{x^{2}}{a^{2}}-\frac{y^{2}}{b^{2}}=zx2a2y2b2=z が成り立つから双曲放物面である.

火曜日

[1] 原点以外では偏微分可能である. たとえば ( a , b ) ( 0 , 0 ) ( a , b ) ( 0 , 0 ) (a,b)!=(0,0)(a, b) \neq(0,0)(a,b)(0,0) のとき
f x ( a , b ) = b ( a 2 + b 2 ) 2 a 2 b ( a 2 + b 2 ) 2 = b ( b 2 a 2 ) ( a 2 + b 2 ) 2 f x ( a , b ) = b a 2 + b 2 2 a 2 b a 2 + b 2 2 = b b 2 a 2 a 2 + b 2 2 (del f)/(del x)(a,b)=(b(a^(2)+b^(2))-2a^(2)b)/((a^(2)+b^(2))^(2))=(b(b^(2)-a^(2)))/((a^(2)+b^(2))^(2))\frac{\partial f}{\partial x}(a, b)=\frac{b\left(a^{2}+b^{2}\right)-2 a^{2} b}{\left(a^{2}+b^{2}\right)^{2}}=\frac{b\left(b^{2}-a^{2}\right)}{\left(a^{2}+b^{2}\right)^{2}}fx(a,b)=b(a2+b2)2a2b(a2+b2)2=b(b2a2)(a2+b2)2
原点では f ( h , 0 ) = f ( 0 , k ) = 0 f ( h , 0 ) = f ( 0 , k ) = 0 f(h,0)=f(0,k)=0f(h, 0)=f(0, k)=0f(h,0)=f(0,k)=0 に注意すると f x ( 0 , 0 ) = lim h 0 1 h { f ( h , 0 ) f x ( 0 , 0 ) = lim h 0 1 h { f ( h , 0 ) (del f)/(del x)(0,0)=lim_(h rarr0)(1)/(h){f(h,0)-\frac{\partial f}{\partial x}(0,0)=\lim _{h \rightarrow 0} \frac{1}{h}\{f(h, 0)-fx(0,0)=limh01h{f(h,0) f ( 0 , 0 ) } = 0 , f y ( 0 , 0 ) = 0 f ( 0 , 0 ) } = 0 , f y ( 0 , 0 ) = 0 f(0,0)}=0,(del f)/(del y)(0,0)=0f(0,0)\}=0, \frac{\partial f}{\partial y}(0,0)=0f(0,0)}=0,fy(0,0)=0 となる.
[2] x 0 x 0 x!=0x \neq 0x0 では偏微分可能であって, ( a , b ) , a 0 ( a , b ) , a 0 (a,b),a!=0(a, b), a \neq 0(a,b),a0 では
f x ( a , b ) = b sin 1 a b a cos 1 a , f y ( a , b ) = a sin 1 a f x ( a , b ) = b sin 1 a b a cos 1 a , f y ( a , b ) = a sin 1 a (del f)/(del x)(a,b)=b sin((1)/(a))-(b)/(a)cos((1)/(a)),quad(del f)/(del y)(a,b)=a sin((1)/(a))\frac{\partial f}{\partial x}(a, b)=b \sin \frac{1}{a}-\frac{b}{a} \cos \frac{1}{a}, \quad \frac{\partial f}{\partial y}(a, b)=a \sin \frac{1}{a}fx(a,b)=bsin1abacos1a,fy(a,b)=asin1a
となる. また原点では f ( h , 0 ) = f ( 0 , k ) = 0 , f ( 0 , 0 ) = 0 f ( h , 0 ) = f ( 0 , k ) = 0 , f ( 0 , 0 ) = 0 f(h,0)=f(0,k)=0,f(0,0)=0f(h, 0)=f(0, k)=0, f(0,0)=0f(h,0)=f(0,k)=0,f(0,0)=0 に注意すると偏微分可能のことがわかり f x ( 0 , 0 ) = f y ( 0 , 0 ) = 0 f x ( 0 , 0 ) = f y ( 0 , 0 ) = 0 (del f)/(del x)(0,0)=(del f)/(del y)(0,0)=0\frac{\partial f}{\partial x}(0,0)=\frac{\partial f}{\partial y}(0,0)=0fx(0,0)=fy(0,0)=0 となる.
( 0 , b ) , b 0 ( 0 , b ) , b 0 (0,b),b!=0(0, b), b \neq 0(0,b),b0 では, f ( h , b ) f ( 0 , b ) h = h b sin 1 h h = b sin 1 h f ( h , b ) f ( 0 , b ) h = h b sin 1 h h = b sin 1 h (f(h,b)-f(0,b))/(h)=(hb sin((1)/(h)))/(h)=b sin((1)/(h))\frac{f(h, b)-f(0, b)}{h}=\frac{h b \sin \frac{1}{h}}{h}=b \sin \frac{1}{h}f(h,b)f(0,b)h=hbsin1hh=bsin1h h 0 h 0 h rarr0h \rightarrow 0h0 の とき収束しないから f x ( 0 , b ) f x ( 0 , b ) (del f)/(del x)(0,b)\frac{\partial f}{\partial x}(0, b)fx(0,b) は存在しない. 一方 f y ( 0 , b ) = 0 f y ( 0 , b ) = 0 (del f)/(del y)(0,b)=0\frac{\partial f}{\partial y}(0, b)=0fy(0,b)=0 である.
したがって, ( 0 , b ) , b 0 ( 0 , b ) , b 0 (0,b),b!=0(0, b), b \neq 0(0,b),b0 f x ( 0 , b ) f x ( 0 , b ) (del f)/(del x)(0,b)\frac{\partial f}{\partial x}(0, b)fx(0,b) は存在しない.
3 (6)から
F ( t ) = f ( a + t h , b + t k ) f ( a , b ) + f x ( a + t h , b + t k ) t h + f y ( a + t h , b + t k ) t k F ( t ) = f ( a + t h , b + t k ) f ( a , b ) + f x ( a + t h , b + t k ) t h + f y ( a + t h , b + t k ) t k {:[F(t)=f(a+th","b+tk)],[≑f(a","b)+f_(x)(a+th","b+tk)th+f_(y)(a+th","b+tk)tk]:}\begin{aligned} F(t) & =f(a+t h, b+t k) \\ & \doteqdot f(a, b)+f_{x}(a+t h, b+t k) t h+f_{y}(a+t h, b+t k) t k \end{aligned}F(t)=f(a+th,b+tk)f(a,b)+fx(a+th,b+tk)th+fy(a+th,b+tk)tk
となる.したがって
F ( 0 ) = lim t 0 F ( t ) F ( 0 ) t = f x ( a , b ) h + f y ( a , b ) k F ( 0 ) = lim t 0 F ( t ) F ( 0 ) t = f x ( a , b ) h + f y ( a , b ) k F^(')(0)=lim_(t rarr0)(F(t)-F(0))/(t)=f_(x)(a,b)h+f_(y)(a,b)kF^{\prime}(0)=\lim _{t \rightarrow 0} \frac{F(t)-F(0)}{t}=f_{x}(a, b) h+f_{y}(a, b) kF(0)=limt0F(t)F(0)t=fx(a,b)h+fy(a,b)k
(3)(2)の結果をもら少し一般にして
F ( t ) = f x ( a + t h , b + t k ) h + f y ( a + t h , b + t k ) k F ( t ) = f x ( a + t h , b + t k ) h + f y ( a + t h , b + t k ) k F^(')(t)=f_(x)(a+th,b+tk)h+f_(y)(a+th,b+tk)kF^{\prime}(t)=f_{x}(a+t h, b+t k) h+f_{y}(a+t h, b+t k) kF(t)=fx(a+th,b+tk)h+fy(a+th,b+tk)k
が成り立つことがわかる。この両辺を t t ttt でもら一度微分するとき,たとえ ばこの結果を f x ( a + t h , b + t k ) f x ( a + t h , b + t k ) f_(x)(a+th,b+tk)f_{x}(a+t h, b+t k)fx(a+th,b+tk) に適用すると
d d t f x ( a + t h , b + t k ) = f x x ( a + t h , b + t k ) h 2 + f x y ( a + t h , b + t k ) h k d d t f x ( a + t h , b + t k ) = f x x ( a + t h , b + t k ) h 2 + f x y ( a + t h , b + t k ) h k (d)/(dt)f_(x)(a+th,b+tk)=f_(xx)(a+th,b+tk)h^(2)+f_(xy)(a+th,b+tk)hk\frac{d}{d t} f_{x}(a+t h, b+t k)=f_{x x}(a+t h, b+t k) h^{2}+f_{x y}(a+t h, b+t k) h kddtfx(a+th,b+tk)=fxx(a+th,b+tk)h2+fxy(a+th,b+tk)hk
となる. 同様の式が f y ( a + t h , b + t k ) f y ( a + t h , b + t k ) f_(y)(a+th,b+tk)f_{y}(a+t h, b+t k)fy(a+th,b+tk) t t ttt で微分した式にも成り立つ. のことから F ( t ) F ( t ) F^('')(t)F^{\prime \prime}(t)F(t) の表示が得られる.
(4) f ( a + h , b + k ) = f ( a , b ) + h f x ( a , b ) + k f y ( a , b ) f ( a + h , b + k ) = f ( a , b ) + h f x ( a , b ) + k f y ( a , b ) f(a+h,b+k)=f(a,b)+hf_(x)(a,b)+kf_(y)(a,b)f(a+h, b+k)=f(a, b)+h f_{x}(a, b)+k f_{y}(a, b)f(a+h,b+k)=f(a,b)+hfx(a,b)+kfy(a,b)
+ 1 2 { h 2 f x x ( a + θ h , b + θ k ) + 2 h k f x y ( a + θ h , b + θ k ) + 1 2 h 2 f x x ( a + θ h , b + θ k ) + 2 h k f x y ( a + θ h , b + θ k ) +(1)/(2){h^(2)f_(xx)(a+theta h,b+theta k)+2hkf_(xy)(a+theta h,b+theta k):}+\frac{1}{2}\left\{h^{2} f_{x x}(a+\theta h, b+\theta k)+2 h k f_{x y}(a+\theta h, b+\theta k)\right.+12{h2fxx(a+θh,b+θk)+2hkfxy(a+θh,b+θk)
+ k 2 f y y ( a + θ h , b + θ k ) } + k 2 f y y ( a + θ h , b + θ k ) {:+k^(2)f_(yy)(a+theta h,b+theta k)}\left.+k^{2} f_{y y}(a+\theta h, b+\theta k)\right\}+k2fyy(a+θh,b+θk)}

水曜日

[1] E = 1 , F = 0 , G = cos 2 u E = 1 , F = 0 , G = cos 2 u E=1,quad F=0,quad G=cos^(2)uE=1, \quad F=0, \quad G=\cos ^{2} uE=1,F=0,G=cos2u
[2] e = 1 , f = 0 , g = cos 2 u e = 1 , f = 0 , g = cos 2 u e=1,quad f=0,quad g=cos^(2)ue=1, \quad f=0, \quad g=\cos ^{2} ue=1,f=0,g=cos2u
[3] E = r 2 , F = 0 , G = ( R + r cos u ) 2 E = r 2 , F = 0 , G = ( R + r cos u ) 2 E=r^(2),quad F=0,G=(R+r cos u)^(2)E=r^{2}, \quad F=0, G=(R+r \cos u)^{2}E=r2,F=0,G=(R+rcosu)2
e = r , f = 0 , g = ( R + r cos u ) cos u e = r , f = 0 , g = ( R + r cos u ) cos u e=r,quad f=0,quad g=(R+r cos u)cos ue=r, \quad f=0, \quad g=(R+r \cos u) \cos ue=r,f=0,g=(R+rcosu)cosu

木曜日

[2] e g f 2 = r ( R + r cos u ) cos u e g f 2 = r ( R + r cos u ) cos u eg-f^(2)=r(R+r cos u)cos ue g-f^{2}=r(R+r \cos u) \cos uegf2=r(R+rcosu)cosu E G F 2 = r 2 ( R + r cos u ) 2 E G F 2 = r 2 ( R + r cos u ) 2 EG-F^(2)=r^(2)(R+r cos u)^(2)E G-F^{2}=r^{2}(R+r \cos u)^{2}EGF2=r2(R+rcosu)2 と (4) からわかる.
K > 0 K > 0 K > 0K>0K>0 となるのは一番高い尾根から
一番低い尾根へ外側をまわった範囲
[3](5)でいまの場合, u = x , v = y u = x , v = y u=x,v=yu=x, v=yu=x,v=y である. E = 1 y 2 , F = 0 , G = 1 y 2 E = 1 y 2 , F = 0 , G = 1 y 2 E=(1)/(y^(2)),F=0,G=(1)/(y^(2))E=\frac{1}{y^{2}}, F=0, G=\frac{1}{y^{2}}E=1y2,F=0,G=1y2 を 用いて計算すると (5)の左辺が 4 y 8 K 4 y 8 K (4)/(y^(8))K\frac{4}{y^{8}} K4y8K, 右辺が 4 y 8 4 y 8 -(4)/(y^(8))-\frac{4}{y^{8}}4y8 となり, これから K K KKK = 1 = 1 =-1=-1=1 が導かれる。

金曜日

[1] 図は, クラインの壼をつくるときの長方形の真中を走る帯を 1 つ のメービウスの帯とし, 上下 2 つの帯を貼り合わせて, も5 1 つのメービ ウスの帯を取り出したものとなっている.
[2]これは図から明らかだろら。
[3] 問題 [2]から射影平面は,メービウスの帯に円板を貼ったものに なっている,2つの射影平面をもってきて,この円板部分を切りとって貼 り合わせ連結和をつくると,これは 2 このメービウスの帯を貼り合わせた ものになっている. 問題 [1]によりそれはクラインの壼である.

索 引

ヒルベルト 59 , 108 , 172 ヒルベルト空間 173 v 曲線 60 フーリェ 84 フェルマー 21 フォン・コッセン 59  ヒルベルト  59 , 108 , 172  ヒルベルト空間  173 v  曲線  60  フーリェ  84  フェルマー  21  フォン・コッセン  59 {:[" ヒルベルト ",59","108","172],[" ヒルベルト空間 ",173],[v" 曲線 ",60],[" フーリェ ",84],[" フェルマー ",21],[" フォン・コッセン ",59]:}\begin{array}{lr} \text { ヒルベルト } & 59,108,172 \\ \text { ヒルベルト空間 } & 173 \\ v \text { 曲線 } & 60 \\ \text { フーリェ } & 84 \\ \text { フェルマー } & 21 \\ \text { フォン・コッセン } & 59 \end{array} ヒルベルト 59,108,172 ヒルベルト空間 173v 曲線 60 フーリェ 84 フェルマー 21 フォン・コッセン 59
複素曲面 11
負の定曲率曲面 94
フルネ 76
フルネ-セレーの公式 56
フンボルト 100
閉曲面 122
平均曲率 79
平行線 93
平面の方程式 34
ヘーゲル 104
ベルトラン 76
ベルヌーイ 21 , 22 , 46 , 48 21 , 22 , 46 , 48 21,22,46,4821,22,46,4821,22,46,48
ヘルバルト 101
ベルリン大学 100
偏導関数 31,153
偏微分 31
偏微分可能 31
ボアー 173
ポアンカレ 132 , 135 , 142 132 , 135 , 142 132,135,142132,135,142132,135,142
ホイットニー161,164
ホイヘンス 21,48
法曲率 69
法截面 66
法線方向のベクトル 37
放物的点 73 73 quad73\quad 7373
ホモロジー 132
ホモロジー類 136
ボリヤイ 95
ポンスレー 76

ま 行

ミンコフスキー
ムーニェ 76 , 79 76 , 79 quad76,79\quad 76,7976,79
ムーニエの定理向き 126
向きづ可能 127
向きづけ可能でない 127
向きづけ可能な曲面 129
向きづけ不可能な曲面 130
無限171
メービウスの帯 137
メルカトール 22
メルカトールの投影法 22
モンジュ 48 , 75 , 76 , 84 , 142 48 , 75 , 76 , 84 , 142 48,75,76,84,14248,75,76,84,14248,75,76,84,142
や行
ヤコビ 100
u u uuu 曲線 60
ユークリッド幾何学 48 , 85 , 98 48 , 85 , 98 48,85,9848,85,9848,85,98
ら 行
ライプニッッ 21 , 48 , 130 21 , 48 , 130 21,48,13021,48,13021,48,130
ラグランジュ 84
ラプラス 84
リ一群論 173
リーマン 85 , 95 , 98 , 99 , 102 , 103 85 , 95 , 98 , 99 , 102 , 103 85,95,98,99,102,10385,95,98,99,102,10385,95,98,99,102,103,
104,142
リーマン計量 161
リーマン多様体 161
リーマン予想 103
リスティング 101,102
リッチ 99,161
リューヴィユ 76
稜 112
領域 30
量子力学 173
レヴィ・チヴィタ 99,161
連結和 128
連続 30
ロドリグ 76
ロバチェフスキー 95

わ 行

ワイエルシュトラス 102,103
1994 年 9 月 5 日 第 1 刷発行
2000 年 6 月 26 日 第 6 刷発行
著 者 志賀浩告
発行者 大塚信一
発行所株式会社 岩波書店
〒101-8002 東京都千代田区一ツ橋 2-5-5
電話 案内 03-5210-4000 http://www. iwanami.co.jp/
印刷・法令印刷 カバー印刷・NPC 製本・中永製本
(C) Koji Shiga 1994
ISBN4-00-007916-6 Printed in Japan
R R R\mathbb{R}R 《日本複写権センター委託出版物〉本書の無断複写は, 著作権法上での例外を除き,禁じられています。本書からの複写は,日本複写権センター(03-3401-2382)の許諾を得て下さい。

数学が育っていく物語

(全 6 冊)
志賀浩二 著
微積分, 線形代数, 関数論, 方程式, フーリエ解析, 多様体などのテーマ を高校 2 年 3 年生くらいの数学の知識でわかるよらにやさしく語ります.数学が苦手な人でも「なるほど」と納得して理解できます。数学が得意な 人はさらに数学への意欲がわいてきます. 読み進むらちに心の中に数学が 大きく育っていきます.
第 1 週極限の深み一数列と級数
月曜 極限と連続性/火曜収束/水曜 級数/木曜 絶対収束と条件収束金曜 べキ級数/土曜 べキ級数の表わす関数/日曜 オイラー数学の光第 2 週 解析性一実数から複素数へ
月曜平均値の定理/火曜 テイラーの定理/水曜 複素数/木曜正則関数/金曜 コーシーの定理/土曜 解析性/日曜 二, 三の話題
第 3 週 積分の世界——様収束とフーリェ級数
月曜積分の定義 / / //// 火曜積分の 1 つの働きと一様収束 / / //// 水曜 関数列の微分・積分と完備性/木曜 三角多項式/金曜 フーリエ級数/土曜 積分的世界/日曜 一様分布
第 4 週 線形性—有限次元から無限次元へ
月曜 平面のベクトルからベクトル空間へ/火曜 ベクトル空間と線形写像 /水曜 内積/木曜 複素ベクトル空間/金曜ヒルベルト空間/土曜七 ルベルト空間の線形作用素/日曜双対性
第 5 週 方程式一解ける鎖、解けない鎖
月曜 解と保数の関係 / 火曜 3 次方程式と 4 次方程式 / / //// 水曜 既約性と可約性/木曜 5 次方程式の代数的解法の不可能性 /金曜 置換群と方程式/土曜 ガロア群/日曜群というもの
第 6 週 曲 面一硬い面, 柔ら汃面
月曜 曲面を見る視点 / / //// 火曜 2 変数の関数と曲線の曲率 / / //// 水曜 第 1 基本形式と第 2 基本形式/木曜 ガウスからリーマンへ/金曜 三角形を貼る/土曜多様な姿を与える場/日曜 19 世紀から 20 世紀へ